EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められてい…
山口製作所 アモルファス箔のモータコアの量産に挑む【特集:自動車金型の未来】
特殊な型内積層技術を開発
電動車を始め次世代車で採用が増えるモータ。脱炭素の観点からも、その効率化は欠かせない。その一つとして注目を集めるのが、磁気特性の高いアモルファス箔を採用したモータコア。金型からプレスまで一貫して手掛ける山口製作所は、高い金型技術を武器にアモルファス箔モータコアの量産に挑んでいる。
同社は山口貴史社長の父である秀夫氏が1968年に創業。当初はプレス加工のみだったが、山口社長の判断で2000年代から金型をゼロから内製化。現在は順送プレス金型技術を強みに、産業機器やロボットなどのプレス部品のほか、自動車関連部品も手掛ける。

技術開発に注力する契機となったのは、リチウムイオンバッテリー関連の部品開発に取り組んだ12年の「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)」。事業化までたどり着かなかったが、その知見を活かし、19年に「高性能アモルファス箔積層モータコアのプレスせん断加工量産技術」で採択され、日本工業大学や長岡技術科学大学、新潟県工業技術総合研究所(工技総研)らと共同で開発をスタートした。
そもそも、アモルファス箔の良さは知られていたが、硬さと脆さから、「プレスでの量産は難しい」とされてきた素材。「硬さはビッカース硬さで900程度。理論上、金型には3倍の2700程度が必要」(山口社長)だという。しかも極小クリアランスが必要となるため、当初は目標値を5μmとした。しかし、その精度では「3000枚程度のプレスが限界で、実用化には程遠いレベルだった」という。

ブレークスルーの一つとなったのが測定技術だ。「金型の精度は出ていると思っていたが、工技総研の高度な測定機で計測すると安定していないことが分かった」。そこで、測定室に6ヵ所の温度計を設置し、±0・5℃以内で計測するようにした。こうした工夫を重ねた結果、約2μmの精度の金型を製作し、15万枚の打ち抜きに成功したケースもあるという。
こうしたせん断加工を支えるのは金型技術だ。モータコアでは形状よりも精度が追求されることを考慮し、「4工程の順送型だが、1つのステージごとの精度を高めて、金型を組み合わせる『単発型連結式』」とした。

また、特殊な型内接着も開発(特許出願済み)。非常に薄く接着剤を塗布できる機構で、従来の含浸接着では70%程度だった占積率を96%に高めることに成功した。接着剤が4%程度しか含まれないため、高密度化でき、モータ効率が10%向上し、温度も9・3℃低減できるなどの効果が得られたという。
一方で課題はコスト。「現状では電磁鋼板より数倍高い」(山口社長)。これを下げるために、取り組むのが、複数枚のアモルファス箔を重ねて打ち抜くクラッド化だ。アモルファス箔の特長は25μmという薄さで、同じ高さのモータコアを作るには多くの枚数が必要になる。「高さを40㎜と想定すると、電磁鋼板の板厚200μm程度なので、200枚で済む。アモルファス箔は1600枚になる。これをクラッド化することでコスト削減につなげる」(山口社長)。
まだコスト面から採用には至っていないが、自動車だけでなく、産業機器で採用が期待されるアモルファス箔モータコア。今後はモータ試験なども必要なことから「モータメーカーと共同で進めていく」と協業で開発を加速させる考えだ。
会社概要
- 本社:新潟県小千谷市片貝町10245—1
- 電話:0258・84・2308
- 代表者:代表取締役山口貴史氏
- 設立:1968年
- 従業員:28人
- 事業内容:プレス加工・組立・金型製作・部品加工など。
金型新聞 2024年1月10日
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