金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

03

新聞購読のお申込み

ユニオン精機 直彫り化でリードタイム短縮、進化し続ける企業目指す【Innovation〜革新に挑む〜vol.6】

ダイカスト金型を中心としたアルミニウム鋳造用金型専業メーカーのユニオン精機(兵庫県加古川市、079・425・0765)。型締力1000t以上の大物金型を得意とし、二輪・四輪車や汎用エンジンなどのアルミニウム鋳造部品に対応する。短納期化が進む中、5軸マシニングセンタ(MC)を導入し、金型加工の直彫り化によるリードタイム短縮に挑む同社を取材した。

1000t以上の大物金型を得意とする

外販ビジネス拡大に注力

同社は1975年に川崎重工業の100%出資により設立された。81年に現在の加古川工場内に移転。2021年には川崎重工業が二輪車やオフロード四輪車および汎用エンジンなどを手掛ける「モータサイクル&エンジン事業」を分社化したことでカワサキモータースの子会社となった。

現在手掛けるのは、ダイカスト金型が8~9割を占める。その他、LP(低圧鋳造)金型やGD(重力鋳造)金型も製造する。対応するサイズは型締力350~2250tと幅広く、特に1000t以上の大物金型を得意としている。

5軸MCを2台保有する

内製型では二輪車や汎用エンジンのクランクケース、ヘッドシリンダーなどの金型、外販型では四輪車向けを中心にコンバータハウジングなどの大物部品から、トランスミッションなどに使用される精密部品まで幅広い金型を手掛ける。最近ではバッテリーケースなどの電気自動車(EV)関連部品も増えているという。

特に近年は外販に注力しており、得意とする大物金型を中心に新規開拓を進めている。「内製ビジネスはグループの発展とともに伸びていくが、当社として成長していくためには外販ビジネスの拡大が欠かせない」(山本正信社長)。30年には外販ビジネスの売上高を現状の1.5倍に引き上げる目標を掲げている。

強みは高い金型完成度と納期対応力

同社の強みは高い金型完成度。納品後の金型トラブルが少なく、顧客からの評価も高いという。「当社では『一発合格』を目指している。特に更新型では高い合格率を誇り、ある顧客では80%を超えている」(山本社長)。

この強みを支えるのが、生産技術力だ。長年に渡り蓄積されたデータや、熟練技術者の経験やノウハウをもとに、想定される不具合を事前に予測し、手戻りの少ない金型づくりを実現している。「縮みなど全体の傾向をみながら、過去のデータや経験をもとに公差幅の偏りなどを調整する。新規であっても過去の類似型を参考に金型設計を行っている」(技術部の松下健一部長)。

MOLDINOからはCAMや治具などの技術サポートを受ける

もう一つの強みが納期対応力。金型に対する短納期の要求は年々高まっており、「2250tの金型では、これまで4ヶ月ほどの納期だったが、現在は3ヶ月を切るようになっている」(松下部長)。同社ではこうした要望に応えるため、金型加工のリードタイム短縮に取り組んでいる。

直彫り化に取り組む

特に注力するのが、直(じか)彫り化。「切削加工は放電加工に比べ、加工時間が短く、電極を製作する必要がない。直彫り化を進めることでリードタイムの大幅な短縮につながる」(松下部長)。10年ほど前から放電加工から切削加工への工法置換に取り組んでいる。

この直彫り化を支えるのがMOLDINOの工具だ。幅3㎜、深さ40㎜の油溝加工では、深彫り加工用エンドミル「エポックターボミル」を使用し、放電加工から切削加工への置き換えを実現。放電加工とそれに伴う電極加工を減らすことができ、リードタイムが大幅に短縮したという。現在、さらなる深彫りにも挑戦しており、MOLDINOの特殊工具を用いて、深さ45㎜の溝加工に取り組んでいる。

MOLDINOの工具が並ぶ
高能率深彫り加工用3枚刃ボールエンドミル「EMBPE」(MOLDINO)

穴あけ加工でもMOLDINOの工具を用いる。押出ピン穴の加工では、「超硬OHノンステップボーラー」を使用し、ワイヤ放電加工で30分かかっていた加工を数分に短縮。また、焼き入れ後の加工では、MOLDINOの高硬度鋼加工に適した「THコーティングシリーズ」を施した工具を活用している。

「形状によって放電加工が必要なものもあるが、なるべく切削加工で完結させるように取り組みを進めている」(山本社長)。以前に比べ、放電加工は大きく減少し、これまで外注していた電極製作は全て内製で賄えるようになったという。

5軸加工でさらなる効率化

20年には5軸MCを導入。割出5軸によって段取り工程を削減し、休日夜間稼働を実現している。23年には2台目を導入し、さらなる生産性の向上に取り組む。「汎用エンジンの金型では加工にかかるリードタイムを45日から30日に短縮することを目指している」(松下部長)。

MOLDINOからは工具だけでなく、工具の使い方や加工プログラムの作成方法などの技術的なサポートの提供も受けている。5軸MC導入時にも機械の選定から治具、CAMの作り込みまでトータルでの加工アドバイスを受けた。「加工課題の相談ができ、助かっている」(松下部長)。

今後は同時5軸加工にも取り組む考え。5軸加工で大幅な加工能率の向上が期待できるMOLDINOの異形工具シリーズ「GALLEA(ガレア)」の導入も検討する。また、焼き入れ前の加工の高能率化やさらなるリードタイム短縮に向けた取り組みも進めていく。「『技術革新』をテーマに、今後も進化し続ける金型専業メーカーでありたい」(山本社長)。

コンバータハウジング
左から松下部長、山本社長

会社概要

  • 本社: 兵庫県加古川市平岡町山之上170
  • 電話:079・425・0765
  • 代表者:山本正信社長
  • 創業:1975年
  • 従業員: 75人
  • 事業内容:アルミニウム鋳造用金型の設計、製作、補修、販売など

金型新聞 2024年2月10日

関連記事

この人に聞く2015 <br>型技術協会 会長 田岡 秀樹氏

この人に聞く2015
型技術協会 会長 田岡 秀樹氏

出会い生み出せる場に 来年30周年、記念事業 全社参加の展示会  金型技術者、経営者らが集まる型技術協会は来年30周年を迎える。来年9月には、大田区産業プラザPiOで記念イベントを開く予定だ。「全会員参加で出会いの場を創…

I‐PEX 小西常務が社長にI‐PEX

I‐PEX(京都市伏見区、075・611・7155)は3月28日付けで小西玲仁常務が社長に就任した。土山隆治社長は退任した。 小西玲仁氏は1971年生まれ、京都市出身。96年第一精工(現I‐PEX)に入社。2018年執行…

大垣精工 代表取締役専務 松尾  幸雄氏「新しいことに挑戦することが技術の向上につながる」

経験による予測が不可欠若い人は好奇心旺盛であれ新しいことに挑戦して 日本の金型はますます難易度が高くなる一方、若手が基礎を学び、簡単なことから経験し、成長していく土壌が失われつつあります。だからこそ、過去の経験や技術を伝…

イワタツール トグロンハードドリルの挑戦<br>焼入れ鋼に穴があく

イワタツール トグロンハードドリルの挑戦
焼入れ鋼に穴があく

金型製作工程を短縮 設備強化で需要に対応  イワタツール(名古屋市守山区、岩田昌尚社長)が2010年に発売したトグロンハードドリルは焼入れ鋼用穴加工ドリルとして、ここ数年需要が急増し供給が追いついていない状況だ。同社の岩…

ワークス ガラス両面MLA金型を開発

マイクロボール工具で加工 レンズ金型を手掛けるワークス(福岡県遠賀町、093-291-1778)はガラス製両面マイクロレンズアレイ(MLA)の金型を開発した。独自の微細なナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)工具による加工技術…

トピックス

AD

FARO スキャンしたらすぐに結果まで:工数低減を実現

金型のメンテナンス、修復、複製に3次元測定アームを活用 製品を製造するために欠かせない金型ですが、そのメンテナンスには多くの課題が存在します。金型は使用するうちに摩耗し、時... 続きを読む

関連サイト