金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

24

新聞購読のお申込み

Ring 分野や地域超えて拡大【金型の底力】

金型技術を原動力に

Ringは、金属の板をプレスし樹脂を一体化するインサート成形品や、複数の部品からなる組立製品を手掛ける。生産拠点も国内・海外とグローバルに展開している。事業拡大のコアとなっているのが金型技術だ。時代の変化に合わせて培った金型技術を生かし、新たな領域に挑戦し続けている。

手掛ける部品(完成品や半製品)の分野は幅広い。電子、医療、車載、家電、防災などに関連する部品。独自のノウハウで車載部品技術を医療部品に展開、その技術を防災部品などに応用し、分野を広げてきた。

昨年リニューアルした熊本工場

販売するのはインサート部品や組立部品にとどまらない。金属フープ材料とセンサー用素子を金型にセットしプラスチック材料を充填して三種一体の複合成形品を生産できる装置など、ユーザーが自社工場で用いる設備も手掛ける。

それらの部品や生産設備は、本社や熊本をはじめ深圳、掲揚、カンボジア、フィリピンの計6拠点で生産する。グループで地域や分野を超えて総合的な提案ができるのが強みだ。大浦直人常務は、「国内外の多様な顧客のニーズに応え、事業を展開してきた」と話す。

さまざまな分野の部品を手掛けている

事業方針に基づき2016年には社名を康永精密から「Ring」に改称した。昨年には小学校の跡地を購入し、熊本工場をリニューアル。今年は深圳工場を韶関に移転し拡張する計画。「多面展開には今後も力を入れていく」(大浦常務)。

事業の多角化やグローバルな供給網の原動力となっているのが金型だ。創業(1989年)時はスイッチ・板バネなどのプレス金型を手掛けていたが、その後は精密微細コネクタも手掛けるようになった。2006年にはプレス・プラスチック部品の成形加工やインサート成形加工を開始。当時、インサートで世界最小サイズのタクティールスイッチを製作するなど、金型や加工技術を年々進化させていった。

大量生産の金型を手掛けるようになり、プレス機にセットした金型の位置をダイヤルで調整できる仕組みや保全しやすい構造など、独自の改良を重ねていく。そうした使い手の視線に立った工夫が金型の技術を向上させ、部品事業の飛躍へとつながった。

本社工場での金型づくり作業

10年ほど前から取り組んでいるのが、海外工場でも本社と同じ品質の金型を作れるようにすること。金型の材料や設計、加工プログラムなどをマニュアル化。そうすることで高性能の金型を現地で製作できるようになり、輸送時間やコストも大幅に削減できた。

今後は事業継承を円滑にするため、「マニュアル化」をベースに「金型のシステム化」に取り組んでいく。「誰もが加工できるシステムを作り、かつ1人がマルチスキルを持つ多能化を目指したい」(大浦常務)。

創業時の年商は3000万円だったが、この35年で25億円(23年8月期、国内のみ)に拡大。来期は30億円を目指す。達成するため次に注力していくのが商品開発。大浦常務は、「商品開発のノウハウを蓄え、将来は自社商品を手掛けるメーカーになりたい」と意気込む。

大浦 直人常務

会社の自己評価シート

 「チーム力」「チャレンジ精神」「変化に対応する力」「未来に投資する力」に最高得点と高評価。同社は国内と海外の拠点を生かし、グローバルサプライチェーンの仕組みを構築している。また、ニーズの変化に対応しながら事業を拡大させてきた。今後も多面展開に注力していく。

会社概要

  • 本社: 大阪府八尾市南久宝寺1—26
  • 電話:072・990・1305
  • 代表者: 籾山典保社長
  • 創立: 1989年
  • 従業員: 1500人(国内:100人、海外:1400人)
  • 事業内容: 金属プレス金型及びプラスチック成形金型の設計~販売・加工、インサート成形加工、自動・省力化設備の設計~販売など

金型新聞 2024年3月10日

関連記事

ニチダイ トヨタと鍛造DXで協力

塑性加工見える化へ 冷間鍛造金型などを手掛けるニチダイは昨年、トヨタ自動車と同社が開発しているセンシング技術「鍛造DX(鍛造加工のリアルタイム統合可視化技術)」の実用化に向けて協力することで合意。鍛造加工におけるデータを…

広州丸順 中国金型メーカーと提携

受注拡大、相互補完を目指す 丸順の連結子会社・広州丸順汽車配件が中国四川省の金型メーカー成都普什汽車摸具と中国市場における金型及び自動車部品に関する戦略的業務提携契約を締結する。 市場拡大が続く中国自動車市場において、金…

アイカタマッチング 金型マッチングサービスを開始

アイカタマッチング(愛知県名古屋市、052・310・1419)は今年1月、金型に特化した受発注サイト「相型MATCHING(アイカタマッチング)」のサービスを開始した。金型メーカーの受注の平準化をサポートし、繁忙期と閑散…

牧野フライス製作所 大型加工機のレトロフィットを強化

大型機中心に年20台 牧野フライス製作所は、大型加工機を中心にレトロフィットやオーバーホール事業を強化する。年間で最大20台程度対応できる体制を整え、今年度内には同事業の売上高を3~5億円を目指す。 子会社の牧野技術サー…

大垣精工 松尾氏が社長に就任

プレス金型などを手掛ける大垣精工(岐阜県大垣市、0584-89-5811)は新しい役員体制を発表し、松尾幸雄氏が代表取締役社長に就任した。上田勝弘氏は代表権のない取締役会長に就いた。松尾氏の略歴は次の通り。 1953年生…

トピックス

AD

FARO スキャンしたらすぐに結果まで:工数低減を実現

金型のメンテナンス、修復、複製に3次元測定アームを活用 製品を製造するために欠かせない金型ですが、そのメンテナンスには多くの課題が存在します。金型は使用するうちに摩耗し、時... 続きを読む

関連サイト