金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MARCH

17

新聞購読のお申込み

日本精機 AM造形部品の品質を保証【特集:尖った技術を使いこなせ】

Ⅹ線CT解析ソフトを活用

採用が増えている金属AMによる金型の入れ子部品。ただ、明確な品質保証データがないことが採用への大きな壁となることは多い。造形後のワークからだけでは内部の巣の有無や、密度などの数値データを把握するのが難しいためだ。

立上げから3年半で700個以上のAM入れ子の納入実績を持つ日本精機はHexagonのX線CTデータ解析ソフト「VGSTUDIO MAX」を活用し、客観的データに基いたワークの品質を保証している。

造形の内部構造の品質もデータで明らかにできる

同ソフトはX線CTのワーク解析で使われてきた技術。成形後の鋳物などをX線CTスキャンで撮像し、巣の有無、形状、密度などを解析する。

日本精機はこの技術をAM部品の品質保証に転用した。具体的には、造形中にリアルタイムで、高精度カメラで撮像した画像データを蓄積し、ワークをモデル化。そのモデルを基に巣や形状、密度などを計測する。それらのデータを品質保証として顧客に提出している。

日本精機が造形に成功した400㎜超の大型ワーク

その精度について、松原雅人常務は「解析したデータと実際のワークを検査したところ、差異はほぼゼロだった」という。また、「(現状、保証データを出している企業はないので)安心して使ってもらえる。割れが発生した際にそのデータをもとに顧客と品質に関する議論を進めている」と信頼性向上にも役立てている。

同社がAM造形に参入したのは4年近く前。当初から、AM入れ子を採用してもらうには、品質保証は絶対に欠かせない要素の一つだったという。「材料や部品はミルシートなどのデータが求められているのに、『AM入れ子のデータはありません』では採用が進むわけがない」(松原常務)。

現在はVGSTUDIO MAXを活用し、AM入れ子の品質を保証している同社だが、次に狙うのが品質保証の規格化だ。2025年度には岐阜大学らと共同で、AMに関するプロジェクトをスタートさせる計画で、そこでは品質保証に関する部会も設置する予定だ。

「現在はあくまで当社の規格。外部機関と連携することで、その規格をISOなどのように一般化させていく。そうすることで、AM入れ子をもっと当たり前に採用してもらえるようにしたい」(松原常務)。

会社概要

  • 本社:愛知県名古屋市守山区中志段味2799
  • 電話:052・736・0611
  • 代表者:辻村正稔社長
  • 創業:1920年
  • 従業員数:62人
  • 事業内容:ダイカスト金型の設計製作、金属AM部品製造など

金型新聞 2025年2月10日

関連記事

価格の引き上げ急務 業界を挙げた取引環境是正へ【特集:どうする値上げ】

金型の製造コストが上昇している。金型の母材として多く使われる工具鋼や、各種金型部品などが相次いで値上げされたためだ。加えて、工場稼働に必要な電気料金も依然、上昇傾向にある。金型メーカー各社は、取引先への価格の引き上げ交渉…

熟練の技生かし金型の修正を減らす方法【変わるトヨタの型づくり】

PART2:匠の技をデジタルに帰す 金型の修正ゼロへ 匠がデジタル技術を駆使すれば金型の修正を減らせないか—。モビリティツーリング部は、そんな取り組みにチャレンジしている。熟練の技を生かし、デジタルの金型モデルでトライと…

三井化学、共和工業 M&Aで事業展開にシナジー【特集:連携・M&Aで乗り越える】

部品開発や共同研究 2014年に共和工業が三井化学グループに入ってから9年。グループ内で共同開発した部品が自動車メーカーに採用されたり、共同研究を進めたり、協業による相乗効果を高めている。近年は住宅設備部品開発でも手を組…

【鍛造金型特集】鍛造型、好調を持続<br>その背景や今後は

【鍛造金型特集】鍛造型、好調を持続
その背景や今後は

自動車生産台数の増加 EV化への対応も必要  鍛造金型が好調を持続している。経済産業省の機械統計によると、2016年の鍛造金型の生産金額は307億円とリーマンショック前の200億円を大幅に上回る。数量では減少傾向にあるこ…

ダイジェット工業 スプリングキャンペーン2022

4月28日まで インサート購入で本体サービス ダイジェット工業(大阪市平野区、06-6791-6781)は「スプリングキャンペーン2022」を実施している。対象製品のインサートを規定個数購入したユーザーに適用本体を1台サ…

トピックス

関連サイト