DXの本質は利益を生み出すことにある。以降では、DXによって「売上げを上げて利益を生み出す」方法と「コストを下げて利益を生み出す」企業のそれぞれの取り組みを取材した。 CAEの活用、データ作成の効率化 自動車用プレス金型…
キヤノンモールド 誰でも簡単に見積もりできる仕組み作り 【特集:営業ってどうする?】
AI機能搭載の図面検索システムを導入
精密プラスチック金型を手掛けるキヤノンモールドは、キヤノン生産技術部門と共同で開発したAI機能搭載の「類似図面検索システム」を2022年に導入。これを活用し、誰でも簡単に見積もり算出できる仕組み作りを進めている。
営業担当は見積もりを依頼された際、顧客からもらった製品図を同システムにアップロード。独自のアルゴリズム(計算手法)を活用することで、過去に手掛けた類似図面を瞬時に出力できる。図面に紐づいた材料費や工数、原価などの情報を基に、経験の浅い営業担当者でも素早く、精度の高い見積もりが可能だ。

同社はこれまで1万種類以上の金型を手掛けており、類似の図面を探すのは一苦労。「ベテラン社員でも図面検索に45分位かかるケースがあった。システム導入後は、最短90秒で欲しい図面を出力できるようになり、見積もりにかかる時間を大きく削減できた」(営業統括センター竹江聡所長)。
これに加え、自動で出力された類似図面に対し合否判定を実施。AIが学習を重ねることで、検索精度を向上していく。また、見積もり件数がデータとして残るため、これを基に自社の景況感を正確に分析することもできる。

間接業務削減し営業に専念
取り組みの狙いは見積もりなどの間接業務を削減し、営業にかける時間を増やすことだ。「本来の営業の仕事は顧客の悩みを聞き、課題解決に導く提案をすることだと思う。間接業務の仕事を効率化し、顧客との接点をもっと増やさなければならない」(竹江所長)。
事業を継続する上で必要な情報を残すことも目的の一つ。「昔の図面情報は、ベテラン社員の頭の中に残っている。しかし、このような社員がいなくなれば、過去に見積もりした金型の情報などが分からなくなる。事業継続するために必要なデータを会社として残さなければならないと考えた」(竹江所長)。

システムを導入してから、日が浅いこともあり、改善点も少なくない。「業種や型種、キーワードなどさまざまな検索方法があるため、使いこなすにはテクニックが必要だ。このシステムに慣れていない人は使いづらいという意見もある」(竹江所長)。
同社では、勉強会を定期的に開催することで、システムの活用を定着させていく考えだ。「普及させるには、若手営業担当が率先して使いこなす必要がある。将来的には、システムを使う必要性が低いベテラン社員の利用率も上げたい」(竹江所長)。
今後について竹江所長は「同システムは現状2Dの図面のみ対応可能。今年中には、3Dの図面に対応したシステムを追加し、使い勝手を向上させていく」と話した。
会社概要
- 本社:茨城県笠間市柏井812-2
- 代表者:斎藤憲久社長
- 設立:1972年
- 従業員:499人
- 事業内容:精密プラスチック金型の設計・製作。
金型新聞 2024年5月10日
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