金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MARCH

17

新聞購読のお申込み

【検証】変わる金型基金 新たな船出3
年金有期化で安定運用

 前号では、日本金型工業厚生年金基金(上田勝弘理事長、以下金型基金)の現行制度の「定額加算」と「高い予定利率」の2つの課題とその解決策を紹介した。本号では、3つ目で最大の課題でもある「終身年金」の課題と、新制度ではどのように乗り越えていくのかをみていく。

【検証】変わる金型基金 新たな船出 解散後、新制度に移行
【検証】変わる金型基金 新たな船出2 3つの大きな課題解決へ

制度移行で課題解決へ

 第一回目でも触れたように、金型年金は厚生年金基金の運用を一部代行してきた。こうした関係から、金型基金も死亡するまで支払い続ける「終身年金」を取らざるを得なかった。新たな制度では、給付期限がある「有期年金化」に変更する計画だ。

 なぜ有期年金とする必要があるのか。最大の理由が長寿命化だ。2014年の日本の男性平均寿命は80.5歳で、基金発足時の69.18歳より10年以上も長くなっている。死亡時まで払い続ける終身年金だと、当然ながら長寿命化が進むほど給付額は増え続ける。

 実際に17年3月時点での金型基金の平均受給期間18年9カ月。それに対して、現在は年金原資を15年で分割支払いしている。つまり、足りなくなる給付額は掛金の増加や、運用益を高めるなどして、補填する必要がある。このように終身制度を維持するとなると、財務上の負担が増すことから、「企業年金では有期が主流」(荒木健太郎常務理事)だという。

 つまり、制度移行に伴い、有期年金化することで、基金の財務負担を減らすのが狙いだ。その代わり、終身というメリットはなくなるものの、事業者の負担も現行制度と変わらず運用できるわけだ。ただ、新制度では受給者の経済状況や要望に合わせ、有期の年金支給期間を5、10、15、20年の4つから選べるようにする予定だ。

 2回にわたり「定額加算」、「高い予定利率」、「終身年金」の3つの課題と新制度移行による解決策をみてきたが、そもそもいったん解散し制度を移行するスキームを取るのはなぜなのか。その最大の理由は、代行返上だけして制度をそのまま引き継げば制約も多く、こうした大胆な施策や制度設計が描きづらいからだ。

 次号以降では、基金を退職金化するなどの経営上の具体的なメリットや運用方法などを紹介する。

金型新聞 平成30年(2018年)3月10日号

関連記事

【特集】どうする、金型人材の確保と育成

目次PART1:日本工業大学専門職大学院専任教授 小田恭市氏インタビューPART2:人材確保編PART3:人材確保編PART4:金型経営者に10の質問PART5:あの指導が成長につながったPART6:記者の目 PART1…

金型業界でも浸透しつつある金属AM 大型化や新材料の登場目立つ【特集:2022年金型加工技術5大ニュース】

金型づくりの世界では、自動化やAM、脱炭素向けなどの最新技術が数多く登場し続けている。その進化は止まることがなく、4年ぶりに開催されたJIMTOF2022でも多数の最新技術が披露され、注目を集めた。今年最後となる本特集で…

金型取引改善分科会会長 渡辺隆範氏に聞く 金型業界で足並みそろえ、値上げを実現【特集:どうする値上げ】

業界の弱体化は顧客にマイナス ユーザーと金型メーカーはどちらかが欠けても成り立たない「イコールパートナー」だと訴えてきました。我々の事業を安定させるためにも、値上げは粘り強く要求していくべきで、そのためには足並みをそろえ…

田岡秀樹氏

【プレス型特集】
本田技研工業 田岡 秀樹氏に聞く
プレス型メーカーの目指すべき方向性

自分の強み生かす道を 本田技研工業 完成車新機種推進部 主任技師 田岡 秀樹氏に聞く 高級車か、低価格車か、2極化も 金型なくして新車開発ならず 自動運転、ライドシェア、電気自動車(EV)の進化―。自動車業界では急激な変…

【特集】ダイカスト金型<br>アルミ使用量増加 構造部品など採用進む

【特集】ダイカスト金型
アルミ使用量増加 構造部品など採用進む

 北米のアルミニウム協会などの調査によると、自動車の1台当たりのアルミ使用量は軽量化のために増えていくという。プレスや押し出しもあり、アルミ=ダイカストと限らないが、アルミの動向はダイカスト型にとって影響は少なくない。で…

トピックス

関連サイト