金型メーカーから技術を発信 粉末やレーザーなど、多くの要素を最適に制御しなければいけないため、金属3Dプリンタによる金型づくりは簡単ではありません。また、何でも作れる魔法の杖でもありません。それでも参入したのは、切削加工…
顧客目線で課題に応じた提案 金子善昭氏(MOLDINO社長)【この人に聞く】
今年4月、切削工具メーカーのMOLDINO(モルディノ)の社長に就任した金子善昭氏。親会社の三菱マテリアルで国内の営業企画や米国のマーケティング担当を務めた他、戦略部長や営業本部長を歴任した。金型加工に適した工具を多くそろえる同社ではどんな取り組みに注力するのか。今後、金型産業に対してどんな製品やソリューションを提供していくのか。同氏に聞いた。

1963年生まれ、東京都出身。86年明治大学卒業。92年三菱マテリアル入社、2005年三菱マテリアルツールズ営業企画部長、10年米国三菱マテリアルマーケティングディレクター、15年三菱マテリアル加工事業カンパニー戦略部長、18年同営業本部長、24年MOLDINO社長に就任し、現在に至る。
ユーザーとの接点増やす
国内の金型産業の課題をどうみているか。
労働人口減少による人手不足や技術承継の問題、激化する価格競争による収益性の低下といった課題がある。また、取引環境の改善も収益性を確保する上で非常に重要な課題と認識している。
こうした課題に対して、取り組むことは。
今後の金型産業に求められるのは、いかに自動化やデジタライズ化させ、合理的に生産していくか。実現には工程全体を考えた改善が必要となるが、ユーザー単独で取り組むのは難しい。当社は15年ほど前から加工費を半減させる「PRODUCTION50」というコンセプトを提案している。工具だけでなく、CAMなども含めた工法提案を行い、コスト低減や生産性の向上に貢献できる。
具体的な製品やソリューションは。
昨年発売した高能率側面切削用エンドミル「ER5HS‐PN」は既存の等高線加工ではなく、負荷制御ツールパスなどと呼ばれるCAMの機能を使って工具の刃長全体で加工する。工具単体ではなく、工法も含めて提案している一例だ。当社はこうした提案をお客さま目線でそれぞれの課題に応じて提供する。例えるなら、市販薬を販売するドラッグストアではなく、患者の症状に合わせて薬を処方する町医者。しっかりと診断し、症状に応じた治療を提供できるのが強みだ。
注力する取り組みは。
エンドユーザーとの接点を増やす。展示会に積極的に出展する他、デジタルマーケティングも強化する。また、当社の技術員をお客さまの現場に派遣し、より踏み込んだ技術提案を提供していく。現場で得られた情報は開発にフィードバックし、新しい製品や提案につなげる。
注力する開発テーマは。
一つは精密化。モータ、バッテリーなどの小型精密部品向け金型の加工に対応する工具開発に注力する。もう一つは大型化。ギガキャストに代表される一体化部品などによって大物加工のニーズは増えるとみている。深い加工に対応する工具などの開発を進める。
どんな企業にしていきたいか。
当社は社名とブランド名が同じ。企業の価値を高めることがすなわちブランドの価値を高めることになる。働く人たちの意識が高ければ、品質の高い商品を生み出すことが可能になる。それを実現するために人材育成や社内制度の整備などに取り組み、今後も金型産業の課題解決に貢献できる企業を目指す。
金型新聞 2024年10月10日
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