金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

02

新聞購読のお申込み

顧客目線で課題に応じた提案 金子善昭氏(MOLDINO社長)【この人に聞く】

今年4月、切削工具メーカーのMOLDINO(モルディノ)の社長に就任した金子善昭氏。親会社の三菱マテリアルで国内の営業企画や米国のマーケティング担当を務めた他、戦略部長や営業本部長を歴任した。金型加工に適した工具を多くそろえる同社ではどんな取り組みに注力するのか。今後、金型産業に対してどんな製品やソリューションを提供していくのか。同氏に聞いた。

MOLDINO社長 金子善昭(かねこ・よしあき)氏
1963年生まれ、東京都出身。86年明治大学卒業。92年三菱マテリアル入社、2005年三菱マテリアルツールズ営業企画部長、10年米国三菱マテリアルマーケティングディレクター、15年三菱マテリアル加工事業カンパニー戦略部長、18年同営業本部長、24年MOLDINO社長に就任し、現在に至る。

ユーザーとの接点増やす

国内の金型産業の課題をどうみているか。

労働人口減少による人手不足や技術承継の問題、激化する価格競争による収益性の低下といった課題がある。また、取引環境の改善も収益性を確保する上で非常に重要な課題と認識している。

こうした課題に対して、取り組むことは。

今後の金型産業に求められるのは、いかに自動化やデジタライズ化させ、合理的に生産していくか。実現には工程全体を考えた改善が必要となるが、ユーザー単独で取り組むのは難しい。当社は15年ほど前から加工費を半減させる「PRODUCTION50」というコンセプトを提案している。工具だけでなく、CAMなども含めた工法提案を行い、コスト低減や生産性の向上に貢献できる。

具体的な製品やソリューションは。

昨年発売した高能率側面切削用エンドミル「ER5HS‐PN」は既存の等高線加工ではなく、負荷制御ツールパスなどと呼ばれるCAMの機能を使って工具の刃長全体で加工する。工具単体ではなく、工法も含めて提案している一例だ。当社はこうした提案をお客さま目線でそれぞれの課題に応じて提供する。例えるなら、市販薬を販売するドラッグストアではなく、患者の症状に合わせて薬を処方する町医者。しっかりと診断し、症状に応じた治療を提供できるのが強みだ。

注力する取り組みは。

エンドユーザーとの接点を増やす。展示会に積極的に出展する他、デジタルマーケティングも強化する。また、当社の技術員をお客さまの現場に派遣し、より踏み込んだ技術提案を提供していく。現場で得られた情報は開発にフィードバックし、新しい製品や提案につなげる。

注力する開発テーマは。

一つは精密化。モータ、バッテリーなどの小型精密部品向け金型の加工に対応する工具開発に注力する。もう一つは大型化。ギガキャストに代表される一体化部品などによって大物加工のニーズは増えるとみている。深い加工に対応する工具などの開発を進める。

どんな企業にしていきたいか。

当社は社名とブランド名が同じ。企業の価値を高めることがすなわちブランドの価値を高めることになる。働く人たちの意識が高ければ、品質の高い商品を生み出すことが可能になる。それを実現するために人材育成や社内制度の整備などに取り組み、今後も金型産業の課題解決に貢献できる企業を目指す。

金型新聞 2024年10月10日

関連記事

大型設備導入で生産体制強化 永井製作所が目指す新規開拓【金型の底力】

弱電部品やライフサイエンス部品、自動車部品など幅広い業種のプレス用金型を手掛ける永井製作所。ここ数年、積極的な設備投資を進め、生産体制の強化に取り組んでいる。昨年には事業再構築補助金を活用し、約1億円をかけてマシニングセ…

金型磨きロボット開発<br>近畿大学・理工学部 原田 孝教授

金型磨きロボット開発
近畿大学・理工学部 原田 孝教授

パラレルで力制御、高速・高精度  金型を自動で磨くロボットはかねてから望まれ、機械メーカーや研究機関が開発に挑んできた。近畿大学理工学部の原田孝教授もそのひとり。昨年、パラレルリンクやDDモータにより微妙な力加減を緻密に…

【鳥瞰蟻瞰】三条市立大学学長・アハメド シャハリアル氏 「創造性豊かなテクノロジスト」の育成を

技術とその価値を理解し市場を創る人を育成企業と共に未来考える場に 三条市立大学は、4月に開学した、技術とマネジメントに特化した一学部一学科で「創造性豊かなテクノロジスト」の育成を目的としています。その定義は、技術が生み出…

この人に聞く2015 <br>型技術協会 会長 田岡 秀樹氏

この人に聞く2015
型技術協会 会長 田岡 秀樹氏

出会い生み出せる場に 来年30周年、記念事業 全社参加の展示会  金型技術者、経営者らが集まる型技術協会は来年30周年を迎える。来年9月には、大田区産業プラザPiOで記念イベントを開く予定だ。「全会員参加で出会いの場を創…

金型はワクワクする仕事 山中雅仁氏(日本金型工業会会長)【この人に聞く】

今年6月の日本金型工業会の総会で、3期6年会長を務めた小出悟氏(小出製作所社長)に代わり、新たに会長に就任した山中雅仁氏(ヤマナカゴーキン社長)。「金型づくりはもっとワクワクできる魅力的な仕事のはず。ワクワクするために儲…

トピックス

関連サイト