天性の細やかさ数値で語る力が必要 経済産業省の工業統計によると、2018年の日本の金型生産額は1兆4752億円。生産量こそ中国に抜かれて久しいが、新素材の登場や部品の複合化、微細化が進み、依然として日本の高度な金型技術…
三菱日立ツール 増田 照彦 社長に聞く
新ブランド「MOLDINO」の狙いとは
この人に聞く2017
『金型命』で社員一丸
今年5月、三菱日立ツールが新ブランド「MOLDINO(モルディノ)」を発表した。英語で金型を意味する「MOLD&DIE」と、革新を意味する「INNOVATION」から名付けた。同社は、2015年に三菱マテリアルのグループ会社となって以来、「金型命」というキーワードを掲げ、金型加工に特化した製品を次々と開発してきた。増田照彦社長に新ブランドの狙いや思い、今後の展開などを聞いた。―新ブランドの狙いは。
「三菱マテリアルとの特長の違いを明確にすることが最大の狙い。今後も独立した存在であり続けるために、金型分野に特化した製品開発や加工提案に力を注ぎ、ニーズの一歩先を行く加工イノベーションを提供していくという決意を込めた」。
―ロゴマークの配色の意味は。
「個人的には青は『水』、赤は『炎』で、『淡』という字を表すと考えている。淡々と新製品を出し続ける、淡々と顧客に貢献し続けていく。こうした企業を目指したい」。
―『一歩先を行く』とは。
「2年前に打ち出した『Hi‐Pre2』という加工コンセプトがその一つ。基礎加工・中仕上工程から高精度に加工し、最終的な品質の向上や金型製作時間の短縮を提案するというものだが、今後は切削工程だけでなく、磨きや調整など前後左右工程までを考えた加工提案ができるようにしたい。目指すのは、『金型加工の相談窓口』になることだ」。
―そのためには。
「現在、全営業担当者を再教育中だ。マシニングセンタ十数台が設備された野洲工場で、工具選定や条件設定、加工手順などを全て自分たちで行い、実際に金型を加工し、技術的な知識を身に付けさせている」。
―なぜ金型なのか。
「全世界で出荷される切削工具のうち金型加工向けは約10%と言われ、市場規模はそれほど大きくはない。ただ、金型はあらゆる製造業の根幹にあり、そこで使われる切削工具には、最上級の精度や寿命が求められる。こうした高度な要求に応えられるのが当社の強みであり、技術力の向上にも繋がると考えている」。
―ブランドを定着させていくためには。
「社外に向けて発信していくことに加え、社員の意識も重要。新ブランド策定に合わせて、『8Promise』という8つの行動規範が書かれたカードを全社員に持たせた。一つ一つの行動、思考がブランドと合致しているか、常に自問自答しながら取り組めるように、このカードを社員の『寄って立つような存在』にし、『ものに心ありてまして人』を浸透させていく」。
―今後の展開は。
「今年も新製品15アイテムを発売するが、全て金型向けだ。また、過去最大の設備投資を行い、生産や開発能力の強化も予定している。今後も『金型命』をキーワードに、金型業界とともに発展していく」。
金型新聞 平成29年(2017年)8月10日号
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