生産効率向上し、需要増に対応 耐摩耗工具メーカーとして国内トップシェアを誇る冨士ダイス。超硬合金製のダイスやロール、製缶用金型、ガラスレンズ成形用金型など耐摩耗工具に特化した事業を展開し、来年には創業70年を迎える。「…
J‐MAX 山﨑英次社長に聞く 電動化サプライヤーへの道【特集:プレス加工の未来】
自動車の電動化(EV化)に伴い、ものづくりも大きな変革期を迎えている。従来のエンジン車には搭載されなかった電動化部品の需要が高まり、新規需要の取り込みが部品メーカー各社の大きな課題となっている。その中、ハイテン材加工の車体骨格プレス部品を得意とするJ-MAX(岐阜県大垣市)は中期経営計画を見直した。電動化サプライヤーへの転換を目指し、バッテリーやモーター関連部品の技術開発の取り組みを一段と強化している。今後の方向性を山﨑英次社長に聞いた。

中国で市場開拓を強化
直近の状況は。
当社の拠点は日本、タイ、中国にあり、特に中国は著しく電動化が進んでいる。当社も電動化市場の獲得を目指し、先行投資を行ったことで、中国CATLとの取引も始まり、2020年から量産を開始した。一早く電動化に取り組んだことで取引量も増えている。
どのような部品を。
EV車用バッテリーケース(バッテリーモジュールを収納するためのケース)やバッテリーの膨張抑制や衝突保護の役割を持つ拘束体、電池の熱を制御する冷却装置などだ。拘束体は高強度が求められる部品。培ってきた超ハイテン技術を活かし、成形した部品で電池セルを挟み込み、熱膨張を抑える仕組みになっている。バッテリーケースも従来設備では難しく、中国でプレス機など設備投資を実行した。今後は冷却装置やモータコア関連部品の開発も注力する。
金型のニーズは。
中国の電池メーカーは開発スピードが速く、型開発において短納期化が大きな課題だ。従来のボディ部品は1~2年かけ試作・設変を繰り返し、仕上げていくものだが、電池関連は受注から3カ月で量産されるため、従来の考えでは対応できない。大型化など顧客要求も高まっており、対応能力を高めていきたい。
電動化の市場性は。
EV車はエンジン車に比べ値段が高く、インフラや充電時間も課題だが、中国ではPHEV車がEV車並みに伸びており、FCEV車の開発にも力を入れ始めた。この流れは日本含めグローバルで進展する可能性がある。中国市場で電動化サプライヤーとしての領域拡大と需要を獲得できれば、日本・アジアほか世界の電動車向け部品の需要を取り込めるチャンスが生まれると考えている。
今後の取り組みは。
中国で培った電動化に関する技術を日本へ移植し、需要の獲得を図る。そのために事業構造改革を進めている。電動化が加速する中国のエンジン車向け事業は縮小するかもしれないが、少ない売上でも利益を出せる体制に変え、国内工場も工場間輸送を極力廃し、利益体質強化など再編計画を練っているところだ。引き続き、エンジン車向け事業は維持しつつ、電動化領域の拡大と構造改革を2本柱に据え注力する。
日本のモノづくり企業に求められることは。
中国の金型技術やデジタル化は急速に進化している。匠の技と呼ばれる熟練技能も僅差になっており、ライバルは日系企業ではなく中国企業と言える。その競争下で勝っていくには日系同士の競争ではなく共創が必要。自動車メーカーもそうした動きが顕著であり、日系企業の連携、協業が求められている時代だ。
金型新聞 2024年10月10日
関連記事
4月19〜22日、東京ビッグサイト青海展示棟で開催された国内最大の金型加工技術展「インターモールド2019」。注目を集めたのは、自動化や3Dプリンティング、IoTやAIなどより進化した次世代の技術だ。かつては夢物語だっ…
順送り金型やプレス加工を手掛ける伊藤製作所は本社近くにテクニカルセンタを設立し、金型部門を集約することで、本社工場などにプレス機械を増設し、需要が高まっているプレス部品の増産体制を整える。さらに、CAEや3D形状測定機、…
EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められてい…
機上計測で戻りない加工 自動車のエアコンの吹き出し口の「レジスター」や、ミリ波レーダーを透過できるエンブレムなどのプラスチック金型を手掛ける谷ダイ・モールド。2023年に機械加工専用の第2工場を稼働させた。狙いは「工場が…