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オーテック AI活用し、製造現場を改革【特集:デジタル活用術】

自動車のエンジン部品や排気系部品などの製造を手掛けるオーテック。6~12ミリの厚板を切削レスで完成品に近い形へ仕上げる高い冷間鍛造技術を持ち、金型も内製化している。同社は2021年からデジタル技術の活用に注力。IoTセンサーを活用しデジタルデータを蓄積、スマートフォンのアプリによる情報共有など、製造現場のデジタル化を進めていった。近年では、AIを積極的に活用。設備保全業務の技能伝承を推進するオリジナルAIツール「DENSHO AI」を開発し、外販も始めている。

設備保全をAIがサポート

同ツールは、AIチャット機能を搭載しており、タブレット端末やスマートフォンなどで使用できるアプリ。保全する設備に問題が発生した際、過去に記録した情報を基に、AIが原因解明の参考となる事例を提示する。

例えば、「バン!という変な音がして、機械が止まってしまったが、過去に似た事例がないか」とチャットで質問すると、過去発生した類似の設備トラブルを教えてくれる。さらに、「類似の設備トラブルが発生した際の原因や解決策を詳しく教えて」と質問すれば、当時発生した事象の詳細を知ることもできる。

チャットで質問すると、AIが言葉の意味を解釈。過去の記録から検索し、適切な情報を提示してくれる

質問の仕方がアバウトであっても、答えを出せるのが同ツールの特長だ。異音がしたという文言からAIが意味を解釈し、音に関する過去の類似事象を自律的に探し、提示できる。「キーワード検索するツールの場合、文言が一致していなければ検索結果に出力されない。経験が浅い人では、時間をかけても解決策を見つけられない可能性がある。AIツールはアバウトな聞き方で、解決策に近い候補案やヒントを出してくれるため、誰でも使いやすい」(小川大佑 専務取締役)。

同ツールを活用することで、設備保全に関する技能伝承が進むだけでなく、トラブル対応にかかる時間も大きく短縮されたという。「以前は機械が止まった際、マニュアルを1から読む必要があり、労力が大きかった。機械を停止する時間も短くなり、機会損失が減った」(小川専務)。

データの品質が成功のカギ

ツールを最大限活用する上で、重要となるのはデータの品質。AIは蓄積した記録を基に回答するため、インプットとなるデータが不十分では、期待した効果は得られない。「例えば、問題が発生後、解決したという結果だけを記録しても使えるデータにならない。問題が発生した原因や解決策まで記録することで、AIを最大限活用できる」(小川専務)。

蓄積するデータの形式も大切だ。「記録するデータの項目(発生日時、対象設備、原因、解決策など)を設定し、誰が記録しても同じような形式になるように工夫した。自由記入欄の場合、人によっては、蓄積したい情報を入力しないケースが出てきてしまう」(小川専務)。

IoTセンサーを活用し、出来高などをリアルタイムで把握する

また、使い勝手の良いツールにすることで、データの蓄積が順調に進んでいる。「デジタル化する前は、現場で書いた紙の情報をExcelに転記するなど、現場の手間が大きかった。今はデジタルデータで統一されており、入力する手間も減った。定着させるには、現場が使いやすいツールにすることが必要だ」(小川専務)。

これに加え、同社では、昔から設備の稼働状況などの記録を残す習慣が身に付いていた点も大きかったという。「会社として記録を残す習慣があることが、デジタル化を実現する前提条件になる。土壌がなければ、ツールを導入してもうまく進まない」(小川専務)。

データを蓄積するには、紙などのアナログ情報をデジタルデータへ変換できるかどうかも重要なポイントとなる。同社は光学式文字読み取り装置(OCR)技術を活用し、紙の帳票からデジタルデータを作成している。しかし、作業当初はOCRによる読み取り精度が上がらず、試行錯誤を重ねたという。「数字の判別や個人ごとの筆跡の癖などがネックとなり、当初は読み取り精度が40%程度だった。作業者の筆跡をAIに学習させるなどの工夫により、80~90%まで精度が向上した。これにより、アナログ情報のデータベース化が進んだ」(小川広佑 経営企画課課長)。

動画を短時間で作れるAIツール

さらに同社は、動画による製造手順書やマニュアルを短時間で作れるAIツールの製作も進めている。動画を作る場合、編集ソフトで場面ごとにコマ割りし、必要な字幕を自分でつけるなど、非常に手間がかかる。しかし、同ツールは必要最小限の労力で、作業手順書やマニュアルの動画を作ることができる。

使い方は簡単だ。作業者に固定カメラなどを取り付け、手順書を作りたい対象作業を撮影。撮影した動画データをツールにアップロードし、素材の設定などを行うだけ。後はAIが動画の内容を分析し、作業上必要な内容について字幕を自動で付与してくれる。小川課長は「作業場の安全上の注意点や、レイアウトを変更したら生産性が上がるといった改善点も指摘してくれる」と話す。

同ツールはジャンルを問わず、加工や組み付け、段取りなどの多様な作業に対応可能。今後、製造業全般をターゲットとし、外販する予定だ。技能伝承が課題となる金型業界にも活用が期待される。

金型のような一品一様な製品を製造する場合、同じ手順は何度も使われない。動画を製作する手間に対し、効果が限定的となるため、動画製作に取り組むハードルが高い。しかし、同ツールを活用し、動画による手順書を簡単に作ることができれば、技能伝承に加え、技術の習得スピードを上げることにも繋がるかもしれない。

製造現場の社員が生成AIを活用し、生産実績トラッカーを製作

同社がデジタル化を推進する背景は、自動車業界を取り巻く環境の大きな変化だ。「新型コロナウイルスの流行から始まり、半導体不足やEV(電気自動車)シフトなどにより、先行きが見通しづらくなった。既存の仕事が減少した場合に備えるため、デジタル化を推進し、競争力を向上させる必要があると考えた」(小川専務)。

デジタル化の推進により、労働生産性は約20%上昇。紙の使用量は約70%削減し、アナログからデジタルへの移行が大きく進んだ。また、数値化できるもの以外の成果も大きいという。「デジタル事業をきっかけに、顧客との接点が増えた。本業の引き合いにもつながり、良い相乗効果が出ている。最先端の技術を活用することで、今まで採用できなかった人材にもリーチできるようになった」(小川専務)。

今後の展望について小川専務は「外販する自社サービスのラインアップを増やすなど、デジタル事業を形にしたい。また、人材育成にも注力する。生成AIを活用し、現場改善ツールを自分で作る社員が出てきている。このようなAIを活用し、自立的に業務を設計・改善できる人材を増やしていく」と話した。

会社概要

  • 本社:愛知県小牧市大字大草5419‐10
  • 電話:0568・78・5211
  • 代表者:小川正夫社長 
  • 創業:1959年
  • 従業員:80人
  • 事業内容:自動車用部品や精密機器部品の製造、デジタルトランスフォーメーション(DX)支援など。

金型しんぶん2026年2月10日号

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