金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

09

新聞購読のお申込み

この人に聞く
パンチ工業 森久保 哲司 社長

ものづくりへの回帰

昨年11月、パンチ工業(東京都品川区、03-6893-8007)の社長に就任した。「ものづくりへの回帰」を掲げ、商品開発や加工技術のレベルアップなどに取り組み、今まで以上にユーザーの要求に応えていく考え。「当社は世の中に無いものを開発して成長してきた。この精神を受け継ぎ、これからもチャレンジを続けていきたい」と話す森久保哲司社長に注力する取り組みや今後の方向性などを聞いた。

 1977年生まれ、東京都出身。2002年明治大学政治経済学部卒業後、03年パンチ工業入社、15年パンチ・インダストリー・マレーシア代表取締役、18年パンチ工業取締役、19年代表取締役副社長執行役員、同年現職。

加工技術より高度に

どんな会社を目指すか。

 「ものづくりへの回帰」を目指す。当社は1982年に当時加工が難しいとされていたハイス鋼を活用したエジェクタピンの開発を進め、当社独自の規格で標準化。そして世界で初めて量産化に成功し、金型部品の寿命を飛躍的に向上させるなど、今まで世の中に無いものを開発して成長してきた。この精神を受け継ぎ、これからもチャンレジを続けていくことに変わりは無い。

 一方で、今は加工機の性能が向上し、設備を導入すれば、ある程度の技術やノウハウはカバーできるようになっている。こうした状況に危機感を抱いており、改めてものづくりの力を高めていきたいと考えている。

具体的には。

 材料や表面処理などの技術には設備の力だけではカバーできない部分がまだまだ多いとみている。お客様のニーズを捉え、材種やコーティングの種類など標準品のレパートリーを増やして差別化を図っていきたい。

製造面ではどうか。

 サブミクロン台の加工精度や複雑な3次元形状など、より高度な加工技術が要求される分野にチャレンジしていく。例えば、医療や飲料向けの金型部品などだ。そのために現在、生産体制の再編を進めている。加工公差100分の1ほどの比較的簡単な標準品の生産は2016年に立ち上げたベトナム工場に移管し、日本や中国工場は特注品や新規分野の加工に特化させている。今後は製造技術のレベルアップを図り、お客様が求める品質に応えていく。

その他の取り組みは。

 自動化・省人化にも注力している。昨年、北上工場(岩手県北上市)に協働ロボットを導入し、自分達でプログラムを組む事に挑戦した。自社で様々な使い方を試し、知識や経験、ノウハウを蓄積させている。人手不足への懸念や生産性向上の期待から取り組み始めており、将来的には夜間自動運転を目指す。

デジタルエンジニアリング事業はどうか。

 図面の無い部品をデータ化し製造するというのが目的だったが、今後は新しい展開も検討している。例えば、金型を現物ではなくデータで保管することで金型保管の負担を減らすことができないかなど。現在はどんなニーズがあるか情報収集をしている段階だ。将来的には事業規模を大きく拡大させていきたい。

欧米市場開拓に力

海外展開は。

 欧米市場の開拓に力を入れる。現在の海外比率は約60%で中国や東南アジアが中心。一方、欧米は日本より大きな市場であるにも関わらず、上手く開拓できていなかった。そこで昨年、欧米戦略室を設立し欧米市場への営業を強化している。効果的に営業活動し、売上を伸ばしていく。今後も世界中に安心した製品を届け、選ばれる企業であり続けたい。

金型しんぶん 2020年1月10日

関連記事

【鳥瞰蟻瞰】スワニー 社長・橋爪良博氏 一気通貫の体制で生産性向上

分業せずに生産性向上一人で開発から製造まで育成には失敗できる環境が大事 大企業に限らず日本の製造業の多くが分業でものづくりを行っています。複数の人員が役割を分担して行う分業という仕組みは、効率良く生産するための有効な手段…

自動車メーカーに聞く ギガキャストに取り組む理由 トヨタ自動車門野英彦氏【特集:ギガキャストの現在地】

トヨタ自動車は昨年、2026年に投入を予定している次世代EVの生産工場にギガキャストを取り入れると発表した。従来数十点の板金部品で作っていたものをアルミダイカストで一体成形することで、部品点数を大幅に削減し、生産工程を半…

ジヤトコエンジニアリング<br>永倉 均社長に聞く CVT技術を磨く

ジヤトコエンジニアリング
永倉 均社長に聞く CVT技術を磨く

この人に聞く 2018 電気自動車(EV)の登場で部品点数が減少したり、エンジンがなくなったりするのではないかといった金型への影響を危惧する声は絶えない。オートマチックトランスミッション(AT)や無段変速機(CVT)など…

明星金属工業 上田幸司社長に聞く CO2削減に取り組む理由【特集:カーボンニュートラルに向けたはじめの一歩】

自動車のプレス金型を手掛ける明星金属工業は、工場のエア効率化や照明のLED化などにより16年間でCO2排出量を18・5%削減した。カーボンニュートラルへの取り組みを推進する上田幸司社長は「CO2削減に取り組むことで無駄な…

【この人に聞く】ケイパブル 河原洋逸社長 海外取引、営業を支援

 CAPABLE(ケイパブル、京都市南区)はこのほど、金型の受発注プラットフォーム「CAMPUS(キャンパス)」を立ち上げた。金型メーカーはキャンパスに設備情報などを登録し、ケイパブルが受注した仕事をキャンパス内の最適な…

トピックス

関連サイト