金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

02

新聞購読のお申込み

【新春特別インタビュー④】ツバメックス代表取締役・多田羅 晋由氏「緩やかな連携が進む、経営者は思考の変革を」

もっと広義な意味に 緩やかな連携が進む 経営者は思考の変革を 〜M&A・企業連携〜

 1959年生まれ、大阪府出身。82年サンスター技研に入社、2005年同社代表取締役、19年2月ツバメックス代表取締役に就任し、現在に至る。サンスターグループでは、数件のM&Aを手掛けた。また、オランダでMBA(経営学修士)を取得したほか、シンガポールやスイスに駐在するなど、豊富な海外経験も持つ。

 金型メーカーを取り巻く事業環境の変化は年々激しさを増しています。そうした中でも企業価値を向上させ、持続的な成長を目指していくためには他社との連携、統合、協業が重要になると考えています。ツバメックスも2019年にサンスターグループの傘下に入りました。

 サンスターグループでは、ハミガキやハブラシだけでなく、接着材やオートバイのディスクブレーキ、スプロケットギアなども生産しています。これまでこうした製品の金型は全てグループ外からの調達でした。金型技術を取り込むことで設計力やコスト競争力の向上が期待できる。そう考え、M&Aを実施しました。

 ツバメックスとしても、これまで無かったサンスターグループの仕事が受注でき、まだ2年ほどですが、すでにシナジーは生まれています。今後は両社の技術を融合し、システムやユニットでの受注、ツバメックス独自の製品なども開発していくつもりです。

 一方で、今後のM&Aは、直訳の「合併と買収」ではなく、「緩やかな連携」といった、もっと広義な意味になると考えています。必ずしも資本の提携ではない連携や統合、協業が新しいM&Aの形になるとみています。

 この「緩やかな連携」には、大きく3つのテーマがあります。一つが、「シェアリング・ファシリティ=施設(設備)の共有」。金型メーカーはどこも受注の山谷があります。互いの設備を共有し、遊休設備を有効に活用できれば、受注の平準化につながるはずです。また、数千万円~数億円という高額な設備を全て自前で保有するのは負担が大きい。共有することで、こうした負担も軽減させることができます。

 もう一つが、「コネクテッド・ファクトリー=工場の連携」。金型メーカー同士の“水平型統合”によって規模の拡大を図るのも一つですし、我々のように川下企業と川上企業が連携する“垂直統合型”もその一つです。こうした連携によって、お互いの悩みが解決でき、システムやモジュールといった一つのソリューションで提供することもできるようになります。

 そして最後が、「ダイナミック・ケイパビリティ=企業変革力の強化」です。現在、あらゆる産業でIoTやクラウドなどのICT(情報通信技術)を活用した「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の必要性が叫ばれています。金型業界もこうした技術を活用し、地域連携を進めることで、市場の変化に対応する力を付けることが可能です。

 ツバメックスでは、地元の金型メーカー数社と連携を進めています。クラウド上に3次元設計データを上げ、仕事のやり取りを行う仕組みを構築しています。

 こうしたテーマを進めていくには、人財の強化が不可欠です。従業員のレベルアップもそうですが、経営者自身も考え方を変えないといけません。今まで以上に視野を広げ、視点を高く持つことが今後の金型メーカーの経営者には求められるのではないでしょうか。

金型新聞 2021年1月10日

関連記事

「顧客の課題をもっと聞きたい 専門部署を設立」牧野フライス製作所社長・宮崎正太郎氏【この人に聞く】

牧野フライス製作所は今年4月、6年ぶりに社長交代を発表した。6月に新社長に就いた宮崎正太郎氏は、就任後わずか3か月で増産体制の強化や開発テーマの絞り込みなどを相次いで発表。さらに、顧客の課題を聞くための部署を新設するなど…

「計測、CAD/CAM、CAE技術生かし、DX化を推進」Hexagon先端技術開発室・立石源治室長【この人に聞く】

Hexagon(東京都千代田、03-6275-0870)は、計測やCAE、CAD/CAM技術を生かして製造プロセスのDX化を推進する「Smart Manufacturing(スマートマニュファクチャリング)ソリューション…

【この人に聞く】三菱電機産業メカトロニクス事業部事業部長・清水則之氏「生産性高めるサービスを提供する」

 高精度、高性能な放電加工機で金型産業に貢献してきた三菱電機(東京都千代田区、03-3218-2111)。近年は、機械だけでなく、遠隔地からのメンテナンスサービスやAI技術の活用など金型づくりの高度化に対応するサービスや…

日本製鉄 江尻室長に聞く 自動車用鋼板のトレンドや加工技術【特集:プレス加工最前線】

自動車業界の脱炭素化や、安全性向上に欠かせない高強度鋼板による軽量化。近年では980Mpa超のウルトラハイテン(超高張力鋼板)や、2・0GPa級のホットスタンプ材など高強度化が加速している。こうした鋼板の進化で、金型づく…

特集〜世界の需要どう取り込む〜
金型のサムライ世界で挑む –アジア–

 新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…

トピックス

関連サイト