サイベックコーポレーション 顧問 平林 健吾氏 1944年生まれ、長野県出身。工作機械メーカー、プレス部品メーカーを経て、73年に信友工業(現サイベックコーポレーション)を設立。2009年顧問。18年旭日単光章を受賞。…
【鳥瞰蟻瞰】牧野フライス製作所プロジェクト営業部スペシャリスト・山本英彦氏「日本メーカーの力が持続可能な社会の実現には必要」

大事なのは、自信を持つこと
日本メーカーの力が
持続可能な社会の実現には必要
1983年に牧野フライス製作所に入社してから、海外畑を歩んできました。キャリア当初は、アメリカ向け立形マシニングセンタや放電加工機の営業支援を担当し、90年代前半と2000年代前半の2度にわたって、アメリカ現地法人に駐在しました。現在は、これまでの海外経験を生かし、国内営業のサポートを行っています。
金型については、アメリカ時代に理解を深めました。当時、実務担当として、日系ユーザーを訪問していたのですが、そこでは単に機械の販売やメンテナンスだけでなく、外注先の紹介や資材調達のサポートなども求められました。
こうした要求に応えるために、現地メーカーとの関係を深め、独自のネットワークを構築していきました。現地メーカーとの交流を通じ、産業構造から金型の作り方や考え方、前後工程の重要性、使われる素材や工具などを学ぶことができました。
そこで気付いたのは、日米間では金型における考え方に大きな違いがあるということです。そもそも使われる素材や工具が違うため、作り方や考え方が異なるのは当然なのですが、アメリカを始め欧米の人たちは、「金型=量産のツール」という考えを日本以上に強く持っていると感じました。
それは、日本では金型単独で事業を形成している企業が多いのに対し、欧米では金型と量産がセットになっている場合が多いことが背景にあると考えています。量産まで考慮できるからこそ、「金型を使って生まれたものに価値がある」という考え方で、金型も合理的かつ効率的に製造できるのだと思います。
ただ、だからといって日本の金型が劣っているかというと決してそうではありません。むしろ、ばらつきの少ない高品質な金型を製造できる日本の技術力は世界でも特に優位性が高いと考えています。
現在、世界各国で取り組みが進む「SDGs(持続可能な開発目標)」。その中でも「環境負荷の低減」が大きなテーマとなっています。環境配慮のキーワードの一つに「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」という考え方がありますが、特に「リデュース(減らす)」は、日本の強みが発揮できる分野だと思います。
ばらつきが少なければ、それだけ無駄を減らすことができますし、日本の製造業に根付く「改善」という文化は、まさに無駄を減らす活動です。こうした日本メーカーが本来持っている強みを活かし、営業活動ができれば、今後も新たな需要を掘り起こしていけるのではないでしょうか。
最近では、欧米など日本以外で営業を展開している日本の金型メーカーも増えてきました。それは、日本の金型が世界中でまだまだ需要があるということの表れです。だからこそ、日本の金型メーカーには、まず自社の良さや強みを認識し、自信を持ってもらいたいと思います。当社としては、今後も金型メーカーのパートナーとして最大限のサポートを提供していくつもりです。
金型新聞 2021年6月10日
関連記事
熱間鍛造の一貫生産 社員と共に成長へ 「挑戦は常に行っているが、挑戦すると失敗もある。それを皆で共有し、次へ進むことが重要だ」と話すのはサムテックの阪口直樹専務。熱間鍛造事業を主力に、型設計・製作、鍛造ライン(羽曳野工場…
選ばれる企業になるために経営者の美意識によって顧客の感性に訴求する 当社は1986年に創業したカーボン素材などの高精度加工を得意とする従業員13人の会社です。主に半導体の製造工程で使用されるカーボン製治具などを手掛けてお…
鋼に命を吹き込む技術 『鋼に命を吹き込む』を合言葉に、プレス金型やプラスチック金型、ダイカスト金型ほか、半導体向け金型など幅広い型種の長寿命化に貢献する技術集団がリヒト精光(京都市南区、075-692-1122)だ。同社…
木質流動成形でSDGsに貢献 技術で差別化を図る 「木質流動を世の中に広め、木材が樹脂やアルミに変わる新たな材料として注目され、持続可能な社会作りに貢献したい」と話すのはチヨダ工業の早瀬一明社長。SDGsやカーボンニュー…


