金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

25

新聞購読のお申込み

【鳥瞰蟻瞰】三条市立大学学長・アハメド シャハリアル氏 「創造性豊かなテクノロジスト」の育成を

技術とその価値を理解し
市場を創る人を育成
企業と共に未来考える場に

三条市立大学は、4月に開学した、技術とマネジメントに特化した一学部一学科で「創造性豊かなテクノロジスト」の育成を目的としています。その定義は、技術が生み出す価値を理解し、新たな市場を創り出すことができる人材です。そうしたイノベーションを起こしてこれからの高度なモノづくりをリードする人材を育成するとともに、地域の企業と一緒になって、持続的な成長を考えることが我々の役割だと考えています。

本学は、前市長の國定勇人氏と市の総合計画を議論する中から生まれました。三条市はものづくり技術の集積地として広く知られていますが、他地域と同様に技術者の育成や人材流出が課題でした。これは本当に根深い問題です。

これを解決するには、これまでと同じ教育で単に技術者を育成するだけでは困難です。特に今の日本の教育システムでは難しい。というのも、日本の大学は特定分野を追究する研究者の育成がメインであり、地域が求める人材を育成できていなかったからです。時間はかかりますが、地域の中小企業に必要な人材を育てることこそが、地域の持続的な成長につながるのではないでしょうか。

では中小企業に必要な人材はどんな人なのか。金型を例に考えましょう、金型の本質的な機能は量産のための道具で、金型メーカーが求めるのは、型をうまく早く精度よく作ることができる技術者です。

しかし、それだけでは不十分です。金型技術を使って生み出される価値は何か、市場はどこにあるのかと考える人材も重要です。まさにそれが「創造性豊かなテクノロジスト」なのです。その育成のために、技術だけでなく、ものづくりへの考え方、学び続けることの大切さなどを教えることが重要だと考えています。また、職人が持つ技術を数値化し、技能伝承につなげることなども「創造性豊かなテクノロジスト」の役割でしょう。

日本の中小企業には、残念ながらこうした人材が少なかった。なぜなら、これまで、言われたものを作るだけでよい時代が長かったからです。しかし、今後は、技術を理解し、未来を見通せる人材が中小企業にも必要になります。採用や人材育成にも関係してくるからです。

一般的に大企業が就職先として人気がある理由の一つは、安定や安心という未来が見えているからです。中小企業であっても、今作っている部品が将来も必要なのか。この事業はサスティナブルか。こうした未来を提示できなければ、優秀な人材は入ってきませんし、育ちません。

「創造性豊かなテクノロジスト」の育成だけでなく、大学自身も同じような存在でありたいと思っています。例えば、金型メーカーさんに集まって頂き、みなさんの声を聞いたり、議論をしたり。その声をもとに研究開発の支援や、サスティナブルな成長を一緒に考えたいと思います。先が見通しづらい時代ですが、トンネルの先のかすかな光を示せる存在になりたいですね。

金型新聞 2021年7月10日

関連記事

パンチ工業 大連工場 研究開発部 呂 国健さん(26) 〜ひと〜

5軸MCで原寸大のシャトルを作った  原寸大のバドミントンシャトルをアルミ合金で作り上げた。羽の厚みは0.6㎜と薄く、細い。そんな加工難度の高い形状を、5軸マシニングセンタ(MC)を駆使して加工した。その高い技術力と柔ら…

日本の金型変わる経営環境 未来の扉どう開く<br>セントラルファインツール 三宅 和彦 社長に聞く

日本の金型変わる経営環境 未来の扉どう開く
セントラルファインツール 三宅 和彦 社長に聞く

研究開発が新たな道  リーマン・ショック以降需要が回復しているものの、これがいつまで続くのか。自動車の電気化やインターネットの技術革新が産業構造にどんな影響を及ぼすのか。それが、日本の金型メーカーの多くの経営者が抱く未来…

木谷電器 木谷健一郎社長に聞く 要望ヒントに金型開発

端子や太陽光発電関連機器を手掛ける木谷電器(大阪府枚方市、072・855・1492)は、取引先の要望をヒントに新たなプレス金型の研究開発に取り組む。時代のニーズに応えるプレス技術を開発し、未来を拓く新しい事業に発展させた…

この人に聞く
ツバメックス 山村福雄 社長

サンスターグループ傘下に  プレスやプラスチック金型を手掛けるツバメックス(新潟県新潟市、025-375-4945)は今年2月、オートバイ用部品などを手掛けるサンスター技研(大阪府高槻市、072・681・0351)に全株…

【金型の底力】美濃工業 金型の内製化に着手

コストダウン、納期短縮図る 自動車用アルミダイカスト部品メーカーの美濃工業(岐阜県中津川市、0573-66-1025)は2021年3月、埼玉県熊谷市に「熊谷金型センター」を設立し、金型製造を開始した。20年10月には静岡…

トピックス

関連サイト