5軸MCで原寸大のシャトルを作った 原寸大のバドミントンシャトルをアルミ合金で作り上げた。羽の厚みは0.6㎜と薄く、細い。そんな加工難度の高い形状を、5軸マシニングセンタ(MC)を駆使して加工した。その高い技術力と柔ら…
AI活用や形状認識による設計支援 塩田聖一氏(C&Gシステムズ 社長)【この人に聞く】
金型向けのCAD/CAMから生産管理システムまでを手掛けるC&Gシステムズ。2021年に「研究開発部門」を設けるなどソフトウェアの開発体制を強化している。そこではAI(人工知能)の活用や、形状認識による設計支援などの研究を進めている。こうしたデジタル技術について「人の能力を最大限に引き出す『思考支援ツール』として開発し、近く様々な製品に実装させる」と話す、塩田聖一社長に研究開発の方向性や今後の取り組みなどを聞いた。
![](https://kanagata-shimbun.com/wp/wp-content/uploads/2023/07/6a8c0347e8f266647cd039a742228473-scaled-e1691560013954-1024x945.jpg)
1982年コンピュータエンジニアリング(現C&Gシステムズ)入社。93年同社取締役、2007年C&Gシステムズ取締役、12年3月社長、福岡県出身65歳。
研究開発体制を強化し、「思考支援」ツール開発
21年に「研究開発部門」を立ち上げました。
北九州市内に設置し、専任の若手技術者を中心に5名体制でスタートした。現在はスペースを拡張し、九州工業大学と共同研究するなど開発を加速している。特長はこれまでの製品開発とは全くの別部隊としていること。AIの活用や形状認識機能の強化などをテーマに研究を進めている。
その狙いは。
AIを始めデジタル技術を活用して、技術者が設計を考えたり、決定したりするための「思考支援ツール」を提供するのが狙いだ。CAD/CAMは本来、職人の技術支援や継承ツールだったはず。しかし、CAD/CAMに長けた人が「職人化」することで、ノウハウが属人化している。それはスキルの差だけでなく、金型をどう作るかという「思考プロセス」が職人によって異なるからだ。職人に蓄積されたノウハウや思考プロセスなどの属人的資産を、デジタルで企業資産に置き換えることが最大の目的だ。
具体的には。
ほんの一例だが、ある技術者が初めての金型を設計する場合。他の技術者が作った類似形状だけでなく、思考プロセスまでを踏まえ「こうすればいいのでは」というサジェスションするイメージが近い。それを選ぶか、違う設計や加工を選択するかは技術者次第。こうした機能を提供するには、形状認識技術の高度化やAIの活用が欠かせない。
職人は不要になるか。
デジタル技術が進んでも、職人の技能は重要で代わりは効かない。AIに学習させるためのノウハウは職人でなければ作れないからだ。例えば、小物で精密な加工が要求されるプロセスの100事例と、大物で高効率な加工が重視される100事例では、AIのアウトプットは全く異なる。要求される品質の加工を安定的にできる企業は強い。そのノウハウを個人ではなく企業資産にしていくことが重要だ。
製品への実装は。
まずは、AIによる類似形状検索を実装する。その後、プレス金型のレイアウト設計や加工の工程設計を支援するAI開発を進める。「思考支援」という考え方は一製品にとどまらない。数年内には、生産管理などあらゆる製品に適応させたい。
金型新聞 2023年7月10日
関連記事
大事なのは、自信を持つこと日本メーカーの力が持続可能な社会の実現には必要 1983年に牧野フライス製作所に入社してから、海外畑を歩んできました。キャリア当初は、アメリカ向け立形マシニングセンタや放電加工機の営業支援を担当…
新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…
若者の興味を引け 金型はものづくりの喜びがある広く知られる業界へ 若手を育てることは、金型メーカーにとって技術の伝承はもちろん、業界の活性化という点でも大切なことです。量産のものづくりがある限り、マザーツールである金型…
「30年間お客様とものづくりを改善し続けられる存在でありたい」—。そう話すのは一昨年に新日本工機の社長に就任した中西章氏。ライフサイクルの長い大型機械が強みなだけに、「長期間にわたって、顧客のものづくりをサポートするのは…