微細成形ラボを設立 量産化までの支援サービスを提供 自動車や医療などの精密プラスチック射出成形用金型を手掛ける米山金型製作所は今年9月、微細成形技術が提供可能な「微細成形ラボ」を設立する。既存設備よりも大型の射出成形機を…
【鳥瞰蟻瞰】ワークス代表取締役・三重野 計滋氏 時代が求める金型づくり
日本の技術力は世界一
魅力のある金型を創り
連携し海外に売り込もう
国内の需要が縮小し、海外との競争はますます厳しくなり、自動車の電動化が産業構造をも変えかねない状況の中、日本の金型に未来はあるのだろうか。このような悲観論を耳にすることがあります。しかし、私はそう思いません。
日本の金型は今なお世界ナンバーワンの技術力があると思っています。まだまだ世界が注目し、その存在感はとても強い。その技術力を生かせば悲観するどころかもっと新たな市場を切り拓いていける大きなチャンスがあると思っています。
例えば、当社が手掛けるガラスレンズの金型。成形するガラスレンズの最小直径は0.1㎜。金型は超硬合金製で、当社独自の超精密加工技術でミクロン以下の加工精度に仕上げられる。
このガラスレンズ金型の技術は今も日本が世界をリードしている。中国や台湾の世界的な大手通信機器メーカーなどからたびたびこの金型を作って欲しいという依頼が舞い込んできます。
海外に行くと「世界が見る日本」はもっとよくわかります。シンガポールの展示会に金型や電子部品関連の微細精密加工製品を出品したとき、現地やアジア、欧米の技術者から我々の想像以上に精密金型の加工技術に興味を示してくれました。
海外の人たちの日本の金型に対するイメージは「微細・精密の技術で別格」。その実力に憧れ、学びたいと思っている。海外の人たちは向上心や好奇心が旺盛です。その品質を認めると次々に商談が始まりました。
日本はそうした微細・精密などの強みを生かし魅力のある金型を作るべきです。しかし多くの金型メーカーは強みを持ちながら、それを生かす金型を作れていない現状があります。それは価格や納期など「発注者の要求に応える金型」を作ることを第一義としてきたからではないでしょうか。
金型は大量生産の母と呼ばれ、日本の高度経済成長の原動力でした。自動車や家電製品などの技術の進歩を後押しし、大量生産を可能にしたことで日本を豊かにしました。
しかし大手企業の多くは金型メーカーに対しさらに安価に製造することを求め始める。金型メーカーはそれに応えることを是としてきました。
金型が持つ普遍的な魅力と機能は現在も変わりません。変えなければいけないのは金型製造そのものです。形を作るだけを求める金型なら安価に作れる海外企業で製造すればよいと思います。
時代が求める魅力的な形や製品を作る金型づくりこそが我々が求めていく金型です。魅力のある金型。それは社会の未来を創る金型。これからの新しいニーズには、車の電動化や5G、遠隔医療などがあります。日本が得意な技術をもってすれば創れるはずです。
そして、これからさらに大切なことは、企業間の連携と海外市場の開拓ではないでしょうか。
日本の金型メーカーの多くは中小企業。それぞれ得意な技術を持っているけれど守備範囲は狭い。しかし連携することで今までになかった付加価値の高い様々な金型を作れる可能性があります。
このような精密、微細加工企業の連携を推進模索する新団体として2018年、国内の微細加工企業が集まり微細加工工業会が発足されました。
魅力のある金型は、国内だけでなく海外からも求められます。きっと新たな市場が開拓できるはずです。
金型新聞 2021年8月10日
関連記事
金型製作工程を短縮 設備強化で需要に対応 イワタツール(名古屋市守山区、岩田昌尚社長)が2010年に発売したトグロンハードドリルは焼入れ鋼用穴加工ドリルとして、ここ数年需要が急増し供給が追いついていない状況だ。同社の岩…
いかにトライ数を減らすか ―アルミ材用金型に取り組んだきっかけは。 「1988年にホンダのNSXに関わったのがきっかけ。オールアルミボディを採用した自動車で、当社では一部の金型を手掛け、量産はほぼ全てのアルミ部品の生産…
リーマン後に加工メーカーを立ち上げた 「日本一の賃加工屋を目指す」。リーマンショック後の2009年、世界的な不況の真っただ中に部品加工メーカーから独立。ダイセットやモールドベースなどを手掛ける明工精機を設立した。金融機…
ギア部品など高難度な加工にも対応 プレス用金型メーカーのサイベックコーポレーションは金属成形加工シミュレーションを活用し、設計や見積もりにかかる時間の短縮を実現した。EV関連など高難度部品への対応を進めている。 同社は冷…