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【インタビュー】京セラ 執行役員 機械工具事業本部長・長島 千里氏「微細加工市場に参入 」

大手切削工具メーカーの京セラは9月、高硬度材加工用(微細加工)のソリッドボールエンドミル「2KMB」を発売し、微細加工市場に参入した。これまで旋削チップなどを強みとしていた同社が焼入れ鋼など高硬度材を使用する微細加工市場でどのような狙いや強み、今後の展望を持っているのかを機械工具事業本部長の長島千里氏に聞いた。

耐摩耗性などに強み

サンプル品を提供中

参入した背景は。

これまで旋削加工の精密工具に注力してきたが、今後、EV車や5Gなど多様な分野で精密金型が求められ、微細加工市場が広がると思っている。そこには当社の独自技術を活かせると判断した。

独自の技術とは。

微細加工のユーザーが工具に求める重要な要素は長寿命と面粗さ(光沢面)。そのニーズに応えるため、独自のコーティング技術と刃先形状を開発した。

その特長は。

微細加工は長時間加工になるため、耐摩耗性と耐チッピング性を両立させなければならない。新PVDコーティング『MEGACOAT HARD EX』は超硬母材に2層構造のコーティングを施し、上層は衝撃性に優れた高靭性結晶層を作り、下層には高温摩耗進行を抑制する特殊積層構造層を持たせることで、長寿命かつ耐チッピング性に優れた工具に仕上がった。

刃先形状では。

削っているのか削っていないのか目視では分からないほど繊細なのが微細加工の世界。その世界で工具が滑らずに安定加工を実現できるのはS字を描いた独自の切れ刃形状だ。

この2つの要素が組み合わさることで、プリハードン鋼や焼入れ鋼など70HRCまでの幅広い高硬度材領域を1材種でカバーでき、荒~仕上げまで対応する。

工具の拡販戦略は。

新規参入のため、まずは工具性能を実感してもらいたい。

お試しキャンペーンとしてサンプル品の提供(HP上で公開中)を始めた。使ってもらい、金型メーカーのニーズを聞くことで密な関係性を構築したい。

ユーザーの反応は。

プラスチック型やレンズ型、鍛造型など幅広い分野でサンプル依頼が来ており、これまでのテスト評価は上々のようだ。精密金型の需要は今後も伸びると予測しており、工具形状やコーティングなど他社と一味違った工具でユーザーの生産性向上に貢献したい。

今後の展望は。

ドリルやエンドミルなどソリッド工具のレパートリー拡充を図っていく。来春にはラジアスエンドミルも発売する予定で、様々な工具をラインアップし、金型加工を1社で賄えるように強化する。

また、脱炭素化に向けた省エネルギー加工の実現を図る。高能率な工具はもちろん、削る前のシミュレーションなどDXにも取り組んでいる。『切削工具×カーボンニュートラル』をテーマに、ユーザーの脱炭素化を後押ししたい。

金型新聞 2021年12月10日

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