鋼に命を吹き込む技術 『鋼に命を吹き込む』を合言葉に、プレス金型やプラスチック金型、ダイカスト金型ほか、半導体向け金型など幅広い型種の長寿命化に貢献する技術集団がリヒト精光(京都市南区、075-692-1122)だ。同社…
日本金型工業会 学術顧問
横田 悦二郎 氏(日本工業大学客員教授)
〜鳥瞰蟻瞰〜

コロナを好機にするには営業など中間層の変革を
ICTの活用が絶対条件
ICTの活用が絶対条件
コロナで金型業界は難しい状況にありますが、大変だと騒いだり、パラダイムシフトを心配したりしても何も生まれません。むしろ、やり方次第では、ピンチをチャンスに変えることができるのではないかと考えています。それには冷静になって、変わるもの、変わらないものを考える必要があります。
まず、変わらないものは何でしょうか。コロナでも、金型を「作る」部分は変わりません。新技術が登場し、作り方は変化しますが、本質的に鉄を削って任意の形を「作る」ことは不変です。また、自動車や家電メーカーが製品を作ることも変わらないので、量産の道具として金型を必要とする構造は変わらないでしょう。
一方、変わるのは何でしょうか。人と人の接触が最も多い、金型づくりでは中間層にあたる営業や受注のあり方だと思います。すでにユーザーが訪問制限をかける中、リモートワークが浸透し、コミュニケーションの方法は変化しています。リモートが便利だと分かれば利用が増える可能性が高い。しかし、対応次第では金型メーカーにとってチャンスになるのではないかと思います。
まず、リモートワークが広がれば営業のための事務所を持つ必要がなくなる。リモートで対応できることが増えれば、訪問回数が減り、営業コストが減らせます。マンパワーに限りがある金型メーカーは助かるはずです。
もう一つはユーザーとの関係性です。つながることが常態化すれば、打ち合わせに技術者も加わりやすくなり、顧客との距離は近くなる可能性が高い。技術者同士が直接やり取りしたり、金型図面を見ながら「ああでもない」、「こうして欲しい」とリアルタイムで話をしたりできるかもしれない。伝言ゲームが多い金型づくりでは、技術者同士が会話できるメリットが大きいのは誰もが分かるはずです。
一方で、気を付けなければならないこともあります。距離や時間の障壁がなくなるので、ユーザーとの物理的な距離は強みではなくなります。簡単につながれるので、生産途中の報告が求められたり、納期が短くなったりするかもしれない。
いずれにしても、こうした変化に対応するには「ICT技術の活用」が絶対条件になります。ホームページのようなものではなく、リアルタイムで納期や生産プロセスなどの情報を発信したり、常に技術相談に応じたりできる、ウェブ上の営業所のような仕組みを構築することが必要になるかもしれません。
コロナは金型メーカーに変化を迫りますが、やり方次第でチャンスになりえます。ただ、これまでの延長線上で考えていてはダメです。従来型の金型経営は終焉を迎えたと思ったほうがいい。今までの常識を捨てるのではなく、いったん横に置いて考える必要があると思います。
金型新聞 2020年6月4日
関連記事
CAPABLE(ケイパブル、京都市南区)はこのほど、金型の受発注プラットフォーム「CAMPUS(キャンパス)」を立ち上げた。金型メーカーはキャンパスに設備情報などを登録し、ケイパブルが受注した仕事をキャンパス内の最適な…
金型向けのCAD/CAMから生産管理システムまでを手掛けるC&Gシステムズ。2021年に「研究開発部門」を設けるなどソフトウェアの開発体制を強化している。そこではAI(人工知能)の活用や、形状認識による設計支援な…
コネクタメーカーを始め、全国の金型ユーザーから補修の依頼が舞い込む。50μmという微細な肉盛り溶接ができるからだ。あまりに微細なため、溶加棒も自社製というこだわりを持つ。 また微細溶接だけではなく、ダイカスト金型等のボリ…
ステンレスを主体にアルミ、チタンなどの金属の溶接加工を手掛ける岩倉溶接工業所(静岡県島田市、0547・37・4585)は今年8月から、金型溶接の受託加工事業と金型溶接・仕上げの技術支援事業を開始した。金型補修における人手…