高品質な鏡面磨き ミサト技研はプラスチック金型やダイカスト金型、機械部品などの鏡面磨きを手掛けている。「納期に遅れず、顧客が希望する品質に応えることができる」(牧野聖司社長)と強調するように、熟練した技術と知見による高品…
O2 代表取締役社長CEO ・松本 晋一氏 「疎連携」で個社を成長
IBUKI を売却
大企業の足りないパーツに
成長を加速し100億円企業へ

7年前に買収したプラスチック金型メーカーのIBUKIを昨年、自動車部品メーカーのしげる工業に売却しました。売上利益ともに過去最高の予測、中国企業と基本契約した、成形数に応じてロイヤリティを頂く金型のサブスクリプション(定額課金型)ビジネスも概ね合意に至っています。それでも売却を選んだのは、IBUKIの今後の成長を考え抜いた結果です。
私の夢は地方に100億円規模の企業を多く作って、日本経済の活性化につなげることです。その一つの挑戦がIBUKIでした。7年間で売上高は倍以上の10億円強になりましたが、このままコンサルティングを手掛けるO2傘下で100億円を目指すのは時間が掛かりすぎることも明らかでした。
そこでO2が親会社でなくても、成長できるシナリオを考えました。真っ先に出た案が量産を視野に入れた新しいビジネスです。ただ、金型メーカーが量産参入時に課題となるのは、設備力(資本)と安定した受注量の確保です。その両方をカバーするには大手企業の支援が必要になります。
加えて、売却を検討する際に重視したのは、売却先企業の戦略的なパートナーになりえるかどうかです。もっと言えば、売却先の企業にとって自社がその足りないパーツを埋めることができる存在になれるかどうか。部品メーカーには成形技術を重視するタイプと、金型技術が重要とする二通りがあると思います。後者の企業にとっては、金型技術は必要不可欠ですし、手に入れた金型企業は単なる金型部門にとどまらず、成長のためのエンジンになりえます。
そうした考えを検討した結果、IBUKIをしげる工業に売却することになりました。しげる工業はIBUKIを傘下にしたことで、国内回帰や内製強化、IBUKIに成形事業の一部を移管することを検討するなど、戦略的パートナーとして成長戦略を描いています。IBUKIとしても、それらの仕事を請け負えれば、O2の傘下でいるよりも早く、100億円企業に近づけます。
特定の部品メーカーの傘下になると、その企業の「色」が付き、他社と取引しづらくなるというマイナスもあります。それも検討しました。しげる工業はSUBARUの仕事が多いですが、独立系ですし、許容範囲のマイナスだと判断しました。それ以上にIBUKIの社員が今後の展開次第で成形技術を学べることのメリットのほうが大きいと考えました。また、しげる工業からは正田敦郎社長が代表権のある取締役に就くほか、役員が1人派遣されますが、社名変更も中東秀喜社長の交代もありませんし、独立を担保してくれています。
一方、O2とIBUKIは、資本関係はなくなりますが、業務提携先として「『疎』連携」の形で協力していきます。「疎」というのは寄り添うのではなく、離れていても、個々で成長する力を持った上での連携という意味です。
こう考えたのは自身への反省もあるからです。これまでIBUKIやAI企業のLIGHTzなど「ワンO2」として「『蜜』連携」を進めてきました。この関係には良い面もあったのですが、「グループが成長すれば個社の成長が小さくてもいいや」という甘えがあったことも否めません。これではダメで、個社がそれぞれ成長しなければ、全体の成長もあり得ません。
だからこそIBUKIとは疎連携を維持しつつ、O2も改めて単独で成長を加速させる考えです。これまでのコンサル事業やDX支援などを強化し、2024年に上場を目指したいと考えています。
金型新聞 2022年3月10日
関連記事
経験による予測が不可欠若い人は好奇心旺盛であれ新しいことに挑戦して 日本の金型はますます難易度が高くなる一方、若手が基礎を学び、簡単なことから経験し、成長していく土壌が失われつつあります。だからこそ、過去の経験や技術を伝…
「金型作りは上手くいかないことがある。そんな時は、トイレの個室で考える。そうすると良いアイデアが浮かぶ瞬間が訪れる」と、アイデアが浮かぶ時や場所を見つけるのも技術者の役目と話す大野和夫さん(68歳)。金型製作歴40年以上…
事業を継続するために常識にとらわれず挑戦するそれが競争力の原動力に 変わり者とか常識外れとよく言われます。世の中であまり知られてない頃に5軸加工機を購入したり、たびたびCAD/CAMや工作機械の機種を変えたり。どうも周り…
素形材産業の人手不足は、業界共通の課題です。製造業全体の平均から見ても、求人倍率が高い傾向にあります。中途採用や外国人労働者に頼り、人手を確保している企業が多い。 しかし、人手を確保できれば誰でも良いわけではありません。…