金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

23

新聞購読のお申込み

O2 代表取締役社長CEO ・松本 晋一氏 「疎連携」で個社を成長

IBUKI を売却
大企業の足りないパーツに
成長を加速し100億円企業へ

7年前に買収したプラスチック金型メーカーのIBUKIを昨年、自動車部品メーカーのしげる工業に売却しました。売上利益ともに過去最高の予測、中国企業と基本契約した、成形数に応じてロイヤリティを頂く金型のサブスクリプション(定額課金型)ビジネスも概ね合意に至っています。それでも売却を選んだのは、IBUKIの今後の成長を考え抜いた結果です。

私の夢は地方に100億円規模の企業を多く作って、日本経済の活性化につなげることです。その一つの挑戦がIBUKIでした。7年間で売上高は倍以上の10億円強になりましたが、このままコンサルティングを手掛けるO2傘下で100億円を目指すのは時間が掛かりすぎることも明らかでした。

そこでO2が親会社でなくても、成長できるシナリオを考えました。真っ先に出た案が量産を視野に入れた新しいビジネスです。ただ、金型メーカーが量産参入時に課題となるのは、設備力(資本)と安定した受注量の確保です。その両方をカバーするには大手企業の支援が必要になります。

加えて、売却を検討する際に重視したのは、売却先企業の戦略的なパートナーになりえるかどうかです。もっと言えば、売却先の企業にとって自社がその足りないパーツを埋めることができる存在になれるかどうか。部品メーカーには成形技術を重視するタイプと、金型技術が重要とする二通りがあると思います。後者の企業にとっては、金型技術は必要不可欠ですし、手に入れた金型企業は単なる金型部門にとどまらず、成長のためのエンジンになりえます。

そうした考えを検討した結果、IBUKIをしげる工業に売却することになりました。しげる工業はIBUKIを傘下にしたことで、国内回帰や内製強化、IBUKIに成形事業の一部を移管することを検討するなど、戦略的パートナーとして成長戦略を描いています。IBUKIとしても、それらの仕事を請け負えれば、O2の傘下でいるよりも早く、100億円企業に近づけます。

特定の部品メーカーの傘下になると、その企業の「色」が付き、他社と取引しづらくなるというマイナスもあります。それも検討しました。しげる工業はSUBARUの仕事が多いですが、独立系ですし、許容範囲のマイナスだと判断しました。それ以上にIBUKIの社員が今後の展開次第で成形技術を学べることのメリットのほうが大きいと考えました。また、しげる工業からは正田敦郎社長が代表権のある取締役に就くほか、役員が1人派遣されますが、社名変更も中東秀喜社長の交代もありませんし、独立を担保してくれています。

一方、O2とIBUKIは、資本関係はなくなりますが、業務提携先として「『疎』連携」の形で協力していきます。「疎」というのは寄り添うのではなく、離れていても、個々で成長する力を持った上での連携という意味です。

こう考えたのは自身への反省もあるからです。これまでIBUKIやAI企業のLIGHTzなど「ワンO2」として「『蜜』連携」を進めてきました。この関係には良い面もあったのですが、「グループが成長すれば個社の成長が小さくてもいいや」という甘えがあったことも否めません。これではダメで、個社がそれぞれ成長しなければ、全体の成長もあり得ません。

だからこそIBUKIとは疎連携を維持しつつ、O2も改めて単独で成長を加速させる考えです。これまでのコンサル事業やDX支援などを強化し、2024年に上場を目指したいと考えています。

金型新聞 2022年3月10日

関連記事

シミズプレス 金型工場を新設し高精度化と外販の強化【金型の底力】

プレス加工メーカーのシミズプレス(群馬県倉賀野市、027-320-2880)は今年10月、金型工場を新設した。これまでプレス量産工場内にあった金型加工設備を移設。金型加工の高精度化を図り、モータコア用金型など新規分野の開…

【ひと】ヤマシタワークス・福田 真弓さん 薬剤の金型を加工するママさんNC担当者

二人の子供を持つママさんNC加工担当者。入社のきっかけは、よくあるパート募集。応募したのは勤務時間が10時から15時までと働きたい時間に合致していたから。ただ、通常のパートと違ったのが、募集の職種が「NC加工」だったこと…

【鳥瞰蟻瞰】ニットー ・藤澤秀行社長 一般の人に広く知ってもらうこと必要

自社の強みを発信 広く知ってもらうことが、会社の成長につながる 「自動車や電機メーカーなどの企業(法人)がお客さんなのだから、自分たちの仕事を一般の人に知ってもらう必要はない」。私もこの会社に入社した当時はそう思っていま…

新たな金型産業ビジョンを
日本金型工業会 小出悟会長

ウェブを最大限活用  令和2年の総会がウェブ会議システムになるとは想像もしていませんでしたが、コロナ禍(新型コロナウイルス感染拡大が招いた危機的、災厄的な状況)の総会であることを正会員並び賛助会員の皆様にはご理解を頂き、…

ケイ・エス・エム 金型技術生かし、医療やロボに参入【金型の底力】

徹底して顧客の声を聞く 高温の射出成形用金型を得意とするケイ・エス・エムは医療機器分野への参入やロボット販売など事業の多角化を進めている。新事業の立ち上げで苦労する企業が多い中、成功しているのは「金型技術をコアにものづく…

トピックス

関連サイト