金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

21

新聞購読のお申込み

GFマシニングソリューションズ AM技術を活用したタイヤ金型製造技術

自動車のタイヤはリブやサイプ(溝)などの形状パターンによって、性能が変化すると言われる。性能を向上させるために、より複雑なデザインのトレッド(表面)が増加する一方で、金型製造にかかるコストの削減、リードタイムの短縮が課題となっている。GFマシニングソリューションズ(以下GFMS)の付加製造(AM)技術を活用した工法は、こうした課題を解決できるという。その詳細を解説する。

製造コストの増加が課題

GFMSの金属AM機や5軸MCなど

これまでタイヤ金型の製造は、切削加工や放電加工などによって行われてきた。しかし、リブやサイプ、ブロック(塊)などトレッドのデザインが複雑化するにつれ、切削加工では不可能な形状だったり、膨大な数の電極が必要になったり、製造にかかるコストやリードタイムが増加。デザインを実現するのが難しくなっていた。

その代表的な例の一つが295/75 R22.5の小型トラック用タイヤだ。この金型は通常、9つのセグメント(各セグメント寸法320mm×160mm×80mm)で構成されている。セグメント内のリブ部材は幅0.4mmと狭く、根元は半径0.9mm、加えてタイヤ表面に対し10度の角度で傾斜しているため、各リブとシリンダーを一致した角度で加工する必要がある。その製造には複雑かつ高度な加工技術が求められる。

従来の工法では金型全体で7680個以上の小さなキャビティを細長い工具で加工しなければならず、これらに切削加工だけでも400時間を要していた。また、放電加工ではセグメントごとに128個以上、金型全体で2500個以上の電極が必要となり、放電時間は1280時間以上。さらに、その電極製作と加工後の測定にも時間がかかっていた。加えて、走行時の騒音や転がり抵抗を抑えるために、金型全体の誤差は0.1㎜以下に抑えなければならなかった。

AM融合したハイブリッド工法

「DMP Flex 350」でインサート部分を造形
端部にクランプシリンダも造形
5軸MCで加工したベース部分に金属AMで造形したインサートを組み込む

これに対し、GFMSは切削加工や放電加工といった従来の加工技術にAM技術を組み合わせたハイブリッド工法を開発。この工法によって、高度かつ複雑なトレッドデザインの実現が可能になるだけでなく、これまでの課題だった製造コストと時間を大幅に削減することもできるようになった。

このハイブリッド工法では、まず5軸マシニングセンタ(MC)「MILL P 500U」(GFMS製)を使用し、金型のベースとなる部分(AMで造形したリブ・サイプ部分を挿入するための溝など)を加工する。リブ・サイプ部分(以下インサート)は金属AM製造システム「DMP Flex 350」(GFMS製)で造形。材料にはマルエージング鋼相当の金属パウダーを使用する。

インサートの端部には、M6の取り付け穴を設けたクランプシリンダも合わせて造形。これは造形後の切削工程で正確に段取りを行うために必要なもので、切削加工時に切り取られる。

造形したインサートは、ワイヤ放電加工機「CUT AM 500」(GFMS製)によってプレートと切り離され、3軸MC「MILL S 400」(GFMS製)に搬送。側面のはめ込みや下面の曲面を加工し、ベースに固定するためのM5ねじを加工する。その後、ベースにインサートを組み込み、セグメント全体にサンドブラストを施すことで、金型表面を均一化する。

6カ月を6週間に短縮

インサートの造形は1層当たり30~60μmで行い、325分ほどで完了する。また、ベース部分の加工は90分、プレートとの切り離しに使うワイヤ放電加工は22分、切削加工はインサート一個当たり12分ほどで仕上げる。

この一連の製造プロセスによって、従来工法で6カ月ほどかかっていた製造リードタイムを6週間ほどに短縮。また、製造コストに加え、加工の消費エネルギーも60%以上削減することができる。

コストとエネルギー削減に寄与

新しいパワートレーンから最大限のメリットを得るためには、タイヤ製造を含む様々な面で新しい考え方や加工が必要となる。AMと機械加工を組み合わせたGFMSの革新的なハイブリッド製造プロセスもその一つ。トレッドデザインの制限をなくし、リードタイムの短縮と材料除去の必要性を減らすことによって、製造コストとエネルギー消費の削減につなげることができる。

GFマシニングソリューションズ

  • ビジネス開発部 M事業部長 小林 貞人氏
  • 東京都品川区東品川4-13-14グラスキューブ品川11F
  • TEL:03-5769-5010

記者の目

AM技術を実用化するために最も考慮すべきは製造コストだ。いくら従来工法で不可能な形状を作り出すことができたとしても、採算が合わなければ意味がない。AM技術をどう取り入れるか。そのアイデアが金型づくりをさらに進化させる。

金型新聞 2022年3月10日

関連記事

【特集:技能レス5大テーマ】3.研削加工

誰でも高精度な研削 金型づくりで欠かせない研削加工。仕上げに近い工程のため、熟練技能を必要とする領域は多い。しかし近年、長年培った経験やノウハウを持っていなくても高精度の研削加工ができる機械や装置などが登場している。人手…

ミスミ 金型用冷却継手に10個入りパックを発売

ミスミグループ本社(東京都文京区、03-5805-7050)はこのほど、金型冷却用継手の10個入りパックを発売した。通常標準単価に比べ、1本当たり最大25~30%のコストダウンが可能。1本当たりの単価は120円(税別)か…

三菱マテリアル 高硬度鋼加工用エンドミルに小径サイズを追加

三菱マテリアル(東京都千代田区、03-5252-5200)はこのほど、高硬度鋼加工用エンドミルシリーズの2枚刃ロングネックボールエンドミル「VFR2XLB」にボール半径(RE)0.3㎜以下の小径サイズを追加し、発売した。…

研削盤3機種を発表 長島精工 

研削盤3機種を発表 長島精工 

省スペース設計・自動化も対応  研削盤メーカーである長島精工(京都府宇治市、0774・45・3611)は先日開かれたJIMTOF2018で新製品の精密小型ネジ研削盤2機種(内径ネジ及び外径ネジ)と、超精密高効率円筒研削盤…

ダイジェット工業 高能率に肩削りできる刃先交換式カッタを発売

SIC‐EVO ダイジェット工業(大阪市平野区、06-6791-6781)は、片面2コーナーの三次元インサート使用により、切削抵抗を低減し切りくず排出性にも優れた肩削り加工用刃先交換式カッタ「SIC‐EVO(SSV形)」…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト