従業員が満足して働ける、働きやすい魅力的な職場を作ることで、多様な人材が企業に集まってくる。そうして集まった人材は、長く会社にいて力になってくれる。そんな考え方から独自の社内制度を設け、活用する企業は多い。では、金型メー…
フジイ金型が「6稼4勤」制度を導入したワケ
6稼4勤のシフト制勤務

「正規の労働時間を減らしたことで多能工化が進み、効率性が高まったことでコストの削減にもつながっている」と話すのはフジイ金型の藤井寛達社長。同社は月~金という従来の働き方をやめ、6稼4勤のシフト制を導入し、時間あたりの生産性を高める現場作りを行っている。
現場の多能工化を促進
導入したきっかけは「順調だった金型受注も新型コロナウイルスで受注が減り、一時帰休する状況になったが、すぐに回復すると思っていた。通常時の生産性を維持するために、新しい働き方が必要だと考えた」。
そこで取り入れたのが稼働日を週6日に設定し、勤務日数を4~5勤とする6稼4勤のシフト制だ。従来の月曜日から金曜日までの稼働を、月曜日~土曜日までの稼働に変更。給料は従来のまま、1日勤務日数が少ない月19日とし、年間休日も137日に増やした。
やらざるを得ない環境作った

シフト制導入により、現場では機械オペーレータなど担当者が不在となる場合があるため、全員が多能工化を求められる。「やらざるを得ない環境を作った」ことで、多能工化を図る仕組みを構築。「能力のある人材をさらに伸ばすきっかけにもなった」とし、働く時間が減ったことで、時間あたりの効率性を意識した働き方になり、自然と報告書やレポートの簡素化といった工夫が生まれた。
もちろん、働き方が大きく変化したことで戸惑う社員もいる。「今までのリズムを崩したくないと、最初は抵抗感もあったが、休みが増えた分、時間あたりの給与は増えている。導入から1年以上が経ち、今では不満もほとんどなくなり、労働時間が減った分、固定費も下がった。生産性を高めれば、さらにコスト削減になる」。
併せて導入したのが新人事考課制度「ハッピースパイラル みんなで幸福のらせん階段を上っていきましょう」だ。多くの企業は直属の上司(工場長など)による評価だが、人によって評価基準も異なる。それを平等な評価基準に設定し、チャレンジ目標を作り達成率を評価する形に変えた。「みんなが成長するためには公平公正な評価基準が必要」とし、社員たちに自ら考え行動する人材に育ってほしいと願う。「次は有給休暇の取得推奨など社員が長く、幸せに働ける会社にしたい」。
納期で勝負したい 〜藤井寛達社長に聞く〜

当社はダイカスト金型専業メーカーで最大800tまでの鋳造機に対応しています。ダイカスト金型市場は1100億円、うち外販金型は800億円ほどと想定しています。今後、HVやEV車など軽量化ニーズが続けば、ダイカスト金型にはチャンスが溢れており、シェアを伸ばすためにやれることはたくさんあります。
モノづくりで追求することは「品質・価格・納期」の3つで、この中のどこを伸ばし、特化していくかです。当社では「納期で勝負する」、超短納期金型を目指します。短納期化を進めれば、自然と金型製作に関わるコスト低減にもつながると思います。短納期化を図るには時間を意識した働き方が必要で、そのために働き方改革があり、無駄で不効率な作業の削減、作業の標準化や部品の規格化(設計の簡素化)などを進めています。進捗状況を見える化する生産管理システムも導入し、DX化を強化しました。
年内に新工場が立ち上がる予定です。金型の生産能力を高め、さらに多くの金型を受注できるように努めていきます。
会社概要
- 本 社:愛知県丹羽郡扶桑町大字南山名字名護根106
- 電 話:0587-93-1101
- 代 表 者:藤井寛達社長
- 創 業:1976年
- 従業員数:85人
- 事業内容:ダイカスト用金型の設計製造
金型新聞 2022年4月10日
関連記事
目次PART1:日本工業大学専門職大学院専任教授 小田恭市氏インタビューPART2:人材確保編PART3:人材確保編PART4:金型経営者に10の質問PART5:あの指導が成長につながったPART6:記者の目 PART1…
AIで自動作成 金型の加工プログラム作成は、熟練技能者の経験や知識に依存するケースが多い。金型づくりにおける長年の経験に基づくノウハウが必要とされる。しかしそれをAI(人工知能)で効率化し、経験の浅い技術者が経験者並みの…
シミュレーション、AIで効率化 デジタル変革(DX)の実現は近年の金型製造現場における最大の関心事の一つ。労働人口が減少する中で生産性を向上させるためには、人工知能(AI)やシミュレーションなどのデジタル技術を活用するこ…
高張力鋼板(ハイテン材)の増加や、自動車の電動化で必要となるプレス部品の精密化などにより、プレス金型は高度化している。金型はプレス機の精度や剛性に倣ってしまうため、これまで以上に金型とプレス機の両方の知見が重要になってい…