金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

21

新聞購読のお申込み

熟練の技生かし金型の修正を減らす方法【変わるトヨタの型づくり】

PART2:匠の技をデジタルに帰す

金型の修正ゼロへ

新プロセス
従来プロセス

匠がデジタル技術を駆使すれば金型の修正を減らせないか—。モビリティツーリング部は、そんな取り組みにチャレンジしている。熟練の技を生かし、デジタルの金型モデルでトライと修正を重ね、品質を作り込む。解析精度を高めることでリアルの金型修正を減らしている。

金型の匠がパソコンに向かい、金型モデルを作製する。使っているのは3次元モデリングソフト「フリーフォーム」。手に持つペン型ツールの先端で実際にモデルに触れているかのような感覚を得ながら、金型モデルのデジタルデータを作製していく。

金型モデルを作製したら、そのモデルを使ってプレス加工のCAE解析をする。プレス加工で発生するシワや歪み。解析でそうした不具合が出たら、モデルデータの形状を作り直す。解析と作り直しを重ね、デジタルの金型モデルの品質を高めていく。

この取り組みの目的は、リアルの金型の修正回数の低減だ。モビリティツーリング部が手掛けるのは、自動車のボディなど外装部品のプレス金型。外装部品はデザイン性の高い曲面や起伏があり、その形状を絞りや抜き、曲げで実現するのが難しい。

蓄積した技術はあるが、金型は毎回、一品一様のためその答えをすぐに導き出せない。そのため長年の経験で培った匠のノウハウや知識によって解決策を探っていく。それでもトライと修正は約3回以上、必要だった。

この取り組みはデジタル上で、これら一連のプロセスを金型製作に着手する前にするというもの。2020年取り組み始めてまだ1年半だが、目に見えてその成果が出ている。修正回数は3回以上から1回に。この取り組みは今年後半に発売する自動車のサイドメンバーアウターの金型づくりで実施したという。

本来は修正の低減が狙いだが、そのほかにも効果が出ている。デジタル上で金型モデルを作製するため、自由な発想を盛り込みやすく、リアルの溶接肉盛り作業も不要になった。またそれらの作業をデジタルで『視える化』できたため匠の技能の伝承にも役立っている。

モビリティツーリング部がここ数年、目標の一つにしているのが「金型製作時間をいかに早くするか」。この取り組みは、その一環。とはいえ今なお道半ばだ。リアルとデジタルのストロークの状態の違いや、シワの出方が一致しなかったり、金型製作過程でプレス不具合の原因をつくる場合もあるなど課題が残る。荒井清志課長は、「課題を乗り越え、やり直しゼロを目指す」と話す。

ただ、デジタルツールは一つの手段であり、それを使いこなす技能や知識を高めることが重要という。その根底にあるのはプレス成形、そして金型の本質をいかに理解しているか。根源的な技術力はこれからも磨き続けていく。

金型新聞 2022年6月9日

関連記事

デジタルとアナログ融合し、型づくりの構想力鍛える 八光技研【特集:シミュレーションの使い方再発見!!】

技術者育成、生産性向上に貢献 開発試作プレス部品の金型、プレス、レーザー加工まで一貫して手掛ける八光技研。アナログとデジタルを融合させる解析ソフトの活用術で、育成や大幅な生産性向上に役立てている。 同社はレーザー加工技術…

【特集】日本の金型業界に必要な4つの課題 -事業承継-

PART3 狭山金型製作所 社長・大場治氏に聞く「事業承継」 60歳で「引退宣言」経営以外にやりたいことを「朝活」で考え方を伝える 55歳の時に60歳で社長を退くと社内外に「引退宣言」をしました。今59歳なので、あと1年…

金型取引改善分科会会長 渡辺隆範氏に聞く 金型業界で足並みそろえ、値上げを実現【特集:どうする値上げ】

業界の弱体化は顧客にマイナス ユーザーと金型メーカーはどちらかが欠けても成り立たない「イコールパートナー」だと訴えてきました。我々の事業を安定させるためにも、値上げは粘り強く要求していくべきで、そのためには足並みをそろえ…

かいわ 自社で商品生み出す道に

培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…

関東製作所 渡邉社長インタビュー 【特集:営業ってどうする?】

デジタルマーケティングで見込客を獲得 近年は国内の金型市場が縮小しており、いかに新規開拓を行うかが大きな課題となっており、効率良く営業活動を展開するための仕組みやシステムの構築も求められる。年間の新規引き合い件数500件…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト