日本の技術力は世界一魅力のある金型を創り連携し海外に売り込もう 国内の需要が縮小し、海外との競争はますます厳しくなり、自動車の電動化が産業構造をも変えかねない状況の中、日本の金型に未来はあるのだろうか。このような悲観論…
電動車で変わるプレス機械のニーズ 高精度、大型化が加速する[プレス加工技術最前線]
高張力鋼板(ハイテン材)の増加や、自動車の電動化で必要となるプレス部品の精密化などにより、プレス金型は高度化している。金型はプレス機の精度や剛性に倣ってしまうため、これまで以上に金型とプレス機の両方の知見が重要になっている。「金型とプレス機はユーザーのニーズに対応しながら共に進化してきた」と話す、日本鍛圧機械工業会の北野司代表理事会長(アイダエンジニアリング常務執行役員)にプレス機械の市場性や最新技術の動向を聞いた。
日本鍛圧機械工業会・北野司代表理事会長に聞く プレス機械の技術動向
きたの・つかさ
同志社大学商学部卒業後、1989年アイダエンジニアリング入社。以降ずっと営業畑を歩む。2012年に執行役員、17年から20年まで中国上海に赴任。21年に常務執行役員。同年から日鍛工の代表理事会長に就任。62歳、京都府出身。
プレス機械の市場やユーザー先を教えて下さい。
21年度の当工業会の受注額は3483億円で、プレス系機械では21年度の受注額は1433億円でした。この数字には国内生産だけで、海外の生産分は含まれていません。ユーザー別でみると、約6割が自動車向けです。プレス機械だけだとその比率はもっと高い。金型業界とも近い数字じゃないでしょうか。
自動車比率が高いと電動化の影響も大きい。その変化をどう見ますか。
これも金型と同じかもしれませんが、電動化で需要は変化しています。足元では、電動車に不可欠なモータコア、電池関連での需要が大きく伸びています。
そうした部品で求められるプレス技術は。
モータコアでは、電磁鋼鈑の板厚が0.25㎜~0.3㎜と薄く精密になっているので、高いプレス精度が求められます。また、ハイブリッド車では、積層高さが約80㎜~100㎜程度ですが、電動車では、倍の高さになると言われ、今以上に枚数が必要になります。
そのため、高速プレスとしては多列取りの要求もあり、ワイドエリア化、大型化、かつ高精度が求められています。
電池はどうでしょうか。
電池ケースに代表されるアルミの絞りやアルミ部品が増えています。電池ケースでは国内企業は角形電池が多く、海外のEVメーカーは丸形電池が多いのが特徴です。軽量化のために絞りの厚みは薄くなる一方、液漏れなどへの安全性が求められます。つまり、ここでも高精密、高精度なプレス技術が必要になります。
ほかトレンドは。
軽量化への対応は永遠ともいえる課題でしょう。超ハイテン材の増加で、冷間プレスでは3500tといったサイズも必要になっています。一方で、ホットプレスなどへの対応も求められています。
脱炭素への対応は。
もちろん重要なニーズです。成形能力が小さいプレス機で加工する方が効率は良く、環境負荷は小さい。ただ、それらを実現するには様々なデータが必要です。当工業会では機内での素材の挙動のセンシングや、新素材への対応など、基礎的な部分を大学と共同研究しています。
また、お客様と共同開発した製品の生産技術を表彰する「MF技術大賞」を設けています。業界を発展させていくことはこうした協調的な活動は重要だと思っています。
金型メーカーに要望はありますか。
ユーザーの「こんな部品を作りたい」というニーズに対し、金型メーカーが金型を工夫する。そして我々が、その金型を最大限生かすことができる機械を作る。こうした関係でこれまでも成長してきました。だから、今後も金型メーカーも協力しながら、マーケットインの発想で共に成長していきたいですね。
金型新聞 2022年8月10日
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