脱炭素社会に向けた取り組みがものづくりで加速し、金型業界でもその動きが広がりつつある。先手を打つ金型メーカーの対応には大きくは2つの方向性がある。一つは、太陽光パネルの設置や設備の省エネ化などによる自社の生産活動でCO2…
海外で28年間工場長を務める明和製作所の常務 「工場長の役割は成果(利益)を出すこと」【特集:工場長の条件】
時には経営者、時には教え諭す教育者—。工場長には多様な役割が必要だ。こうしたマルチタスクをこなすために、どのようなことを意識しながら、責務を果たしているのか。現役工場長に、工場長としての哲学を聞いた。
役割は成果を出すこと
明和製作所 常務 佐藤 友治氏

さとう・ともはる
1981年明和製作所入社。97年の立ち上げから2010年までタイ工場を担当。11年からは中国工場の立ち上げと運営を担う。1963年生まれ、三重県出身。
やって見せると技術者はついてくる
タイと中国の工場の立ち上げに携わり、累計で28年間海外の工場をみてきました。その経験から言えるのは「工場長の役割は成果(利益)を出すこと」に尽きます。そして、人材育成の方法としては「やって見せること」が重要だと思います。
私がダイカスト金型を手掛ける明和製作所に入社したのは1981年。まだ社長を含め3人しかいなかった時代で、金型づくりの工程は全て経験しました。その後、94年から海外を見ることになるのですが、この時の経験は本当に活きています。
どんなことでも「やって見せる」ことができたからです。例えば、30歳で初めて海外赴任したタイ。言葉の壁はありましたが、加工は何でも「やって見せる」ことができた。すると「この人は仕事ができるんだ」と思ってもらえる。こうした敬意を持ってもらえれば技術者はついてきてくれます。
日本人だから、タイ人だから、中国人だからと考えるのではなく、フラットな目線も重要だと思います。国が違うのだから、習慣や考え方は違って当たり前。難しく考えず、同じ食事を食べて、一緒に仕事すればいい。
一方で、譲れないことを持つことも重要です。私の場合は技術ですね。技術でズルをしたり、手を抜いたりすると徹底して叱りました。やって見せたり、叱ったりするのは、国内外関係なく大切ではないでしょうか。
こうしたマネジメントが重要なのは全て「成果を出す」ためです。工場長の仕事はこれに尽きます。極論プロセスより重要だと思います。
なぜ、成果を出すことが重要なのか。まず、従業員は給与の向上や労働環境の改善といった成果がないと付いてきてくれません。経営者にとっても成果は重要です。5年後を考えるのは経営者の仕事ですが、それを可能にするには日々の利益が欠かせません。それを生み出し続け、経営をサポートするのが工場長の仕事だと思います。
私には好きな言葉があります。サッカー選手のメッシが言った「努力するから報われるのでなく、報われるまで努力する」というものです。「やって見せる」ことは大切です。しかし、それだけでダメで、「報われるまで努力し成果を出す」覚悟が工場長には必要だと思います。あきらめてしまう工場長に部下は付いてきませんから。
金型新聞 2022年10月10日
関連記事
切削は高速、研削は高効率 超硬合金を金型材料として使う動きが広がりつつある。これまでは長寿命化などのメリットはあるが、加工しづらいことがボトルネックとなり、一部の金型でしか利用されていなかった。しかし近年、切削加工がで…
日本の価値はどこにある 量産支える金型や知見 松岡 先ほど松野さんが安く作ると話されましたが、私は金型を安くしたくないですね。金型は本来高くなきゃいけないのに、どんどん下がっています。持続的に経営をしていくためにも、値段…
鍛造は大きく熱間と冷間に分かれるが、重量ベースでは圧倒的に熱間が多い。成形品が比較的大きいことも理由の一つだ。一方で、金型はコストや納期の問題から圧倒的に内製率が高いという。自らも熱間鍛造部品を手掛ける、日本鍛造協会の…
人手不足が叫ばれる昨今において、現場における新人教育を効率化し、技能伝承を推進させるデジタルサービスが数多く登場している。技能伝承のみならず教育プロセスの省人化・DX化に貢献し、現場全体の生産性も向上させる各社の製品を紹…