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カメラ内蔵金型による±5μm位置決めプレス サンコー技研【金型テクノラボ】
電子回路を組み込んだフィルム基板やICカードなどの精密打ち抜きで、大きな課題となるのが板材の位置決め。しかしプレス加工を手掛けるサンコー技研は、金型に内蔵したカメラとロボットにより±5μmの精度で位置決めしてプレス加工する技術を確立した。その特長や開発の背景について解説する。
ガイドピン・穴による位置決めは100μmが限界
当社が現在、主に手掛けているのは、鉄道など交通ICカードの基板や、パワー半導体用放熱基板など電子基板の打ち抜き。これらは電子回路パターンが印刷された板材をプレスで打ち抜く。そのため回路パターンを傷つけないように回路パターンと金型の加工位置を正確に位置決めしないといけない。
これまでその位置決めは、金型のガイドピンとガイド穴で調整していた。ただそのクリアランス精度による位置決めは100μmが限界だった。しかし社会におけるデジタル技術活用の広がりを背景に電子基板の高精度化は絶え間なく進む。高精度化のニーズに、従来の方法では実現できなくなっていた。
カメラ内蔵金型+撮像+ロボットで5μmに
新たに確立した位置決め技術は金型に内蔵したCCDカメラと多関節ロボットにより精度±5μmを実現するもの。①ロボットが板材を保持し金型に設置、②CCDカメラで回路パターンを撮像し板材の位置を確認、③その情報をもとに正しい位置とのズレを演算処理しロボットが位置を修整、④それを数回重ね±5μmの位置に置き打ち抜く。
この技術の開発でカギとなったのが、CCDカメラでの撮像と、ロボットの位置決め動作プログラムの改良だった。
CCDカメラでの撮像はこれまで、ロボットで板材を保持しその下側から1台のカメラで回路パターンを撮像し位置決めしていた。しかしこの方法では位置決め精度が上がらないため、カメラを下型の2カ所に取り付け、2台のカメラで撮像することで位置決め精度を高めた。
ロボットもこれまで多軸で動作し位置決めしていた。しかしロボットの繰り返し位置決め精度は±20μmで、多軸の動作はギヤのバックラッシの影響で位置決め精度にばらつきが出る。そこで動作を1軸方向に変え、そのための制御プログラムを独自に作成。それによって±5μmの精度を実現した。
ICカードの全自動打ち抜きの技術を発展
この位置決め技術のもととなるのは交通ICカードの全自動打ち抜き装置。当社は1976年に打ち抜きを得意とするプレスメーカーとして創業。創業期は銘板、90年代はフィルム基板、2000年代はテレビの液晶シート、2010年代からは交通ICカードの打ち抜きを手掛けてきた。
そのICカードの打ち抜きで海外とのコスト競争に対抗するため開発したのが全自動打ち抜き装置だった。同じ東大阪で『新たな技術開発に挑戦し未来を切り拓く』という志を持つロボット、金型、カメラ画像処理メーカーと2009年、『ロボットとカメラで位置決めする技術』を開発。それによりこの20年間、ICカードを1億枚超不良ゼロで加工している。
±5μmの精度生かしエンコーダースケールの打ち抜き
しかし基板や電子部品は、電子機器の高性能化に伴い、求められる精度はより一層高くなる。打ち抜き加工は基板の回路パターンの図柄に狙い合わせてプレスするため『位置決め精度』がとりわけ重要。そこで従来装置(±100μm)の20倍以上の位置決め精度±5μmの次世代機の開発をスタートした。
現在この技術は、サーボモーターの回転角度を検出する金属製エンコーダースケールの量産に採用。目盛りが刻まれた円形プレートのど真ん中を高精度(同心度・同軸度)に打ち抜き加工をしている。
また、この領域の打ち抜き制度は近い将来、プレス加工業界で必ず求められることになると確信している。新たな分野の技術開発への挑戦をこれからも続け、当社でしか実現できないものづくりによって社会に貢献していきたい。
サンコー技研
- 代表者:田中 敬氏社長
- 住所:大阪府東大阪市玉串町東3-5-38
- TEL:072-964-3204
金型新聞 2022年11月10日
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