当社は創業から50年間、冷間圧造金型一本で事業を続けてきました。しかし、10年後も同じように事業を続けていられるかというと、そうは考えていません。今ある仕事は相当減っていると思います。感覚的な予測になりますが、だいたい3…
新たなバイオ樹脂を開発、金型と素形材をつなげ新しい価値を創出する 茄子川仁氏(事業革新パートナーズ社長)【鳥瞰蟻瞰】

金型業界に特化した調査やコンサルティングを手掛けてきましたが、2018年にバイオ樹脂の一つである「ヘミセルロース」の開発や成形に乗り出しました。社名にある「革新」的なことを実現するには、コンサルティングだけでは限界があると感じていたからです。
私は商社やコンサルタントを経て、09年に当社を創業しました。コンサル時代には大手の製造業の改善活動をサポートしてきました。その時痛感したのは、金型はものづくりの肝であり、重要なパーツだということです。
それが根底にあったからこそ、独立を考えた時に、行動的に経営をサポートする存在であること、そして誰もしていない分野で勝負しようと考え、金型に絞りました。色んな人から「難しいからやめておけ」と止められましたが(苦笑)。
まず金型業界に感じたのが、リーマンショック後で仕事が消失している時だったからかもしれませんが「魚がいる池で釣り糸を垂らしていない」ということでした。そこで、日本金型工業会に相談に行き、(魚がいる)海外に目を向けてはどうかと提案し、「JAPANブランド」の構築をお手伝いさせて頂きました。
その際に、若手部会の「天青会」の全社を訪問させて頂いたのは勉強になりました。たった一人で海外の展示会で、日本の金型をPRするために着物をまとい、練り歩いたのも良い思い出です。
そうした関係から、工業会の国際委員に就き、FADMA(アジア金型協会)やISTMA(国際金型協会)に携わりました。その後、縁があって、鋳造や鍛造、プレスなど素形材団体の調査やサポートをさせて頂きました。結果的に素形材と金型を自由に行き来できるのが当社の強みではと考えるようになりました。
その強みを生かして、何か革新的なことをできないかー。創業以来、サービスやコンサルティングだけでは、革新的なことを実現するのは難しいと感じていました。そこで目を付けたのが、金型と素形材につながりのあるバイオ樹脂の開発です。
縁あって、バイオ樹脂に明るい技術者が採用でき「ヘミセルロース」の開発に乗り出しました。ヘミセルロースは植物中に約2割存在する多糖類の総称で、膨大な資源量がありながら、活用例が非常に少ない素材です。この素材を活用できれば「イノベーションが起こせる」と思いました。当初、金型や成形メーカーになることも考えましたが、簡単ではないし、当社なりのやり方があるのではないかと考えました。
ビジネスモデルはこうです。ヘミセルロースで製品を作りたいメーカーがあれば共同開発契約を結びます。素材だけの提供もありますが、当社が窓口となって、金型や成形メーカーに仕事を発注します。そうすれば、素材、金型、成形を掛け合わせることができる当社の強みを活かせます。
また、このビジネスを進める上で、意識していることがあります。まず、価格だけを要求してくるお客様はお断りすること。私は「金型理論」と呼んでいるのですが、高価な金型も製品1個当たりに換算すると非常に安い。ヘミセルロースも高い素材ですが、高い価値を生み出せれば決して高くないし、流した汗の安売りをする必要はありません。
もう一つが、仕事の依頼先は日本メーカーであること、そして、利益を確保できる価格でお願いすることです。今後、米中対立などを受けて、政治経済の面でも、国内でものづくりのインフラを残すことが、より重要になってくると思います。バイオ樹脂を通して、少しでも金型発注量を増やす機会を生み出していきます。
金型新聞 2022年12月10日
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