金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

05

新聞購読のお申込み

リーダーの条件[part1] 経営のカリスマが心掛けていること

サイベックコーポレーション 顧問 平林 健吾氏

 1944年生まれ、長野県出身。工作機械メーカー、プレス部品メーカーを経て、73年に信友工業(現サイベックコーポレーション)を設立。2009年顧問。18年旭日単光章を受賞。冷間鍛造順送工法を国内で初めて開発。メーカーと共同で設備の開発にも取り組み、リンクモーションプレス機などを開発した。座右の銘は「不撓不屈」、好きな言葉は「先見術」。

 リーダーは、全てを分かっていないといけません。自分ができないこと、分からないことは、社員に指示することはできないですからね。新しいものをどんどん取り入れ、自分で動かして、使えるということを社員に見せていく。こういうことが、リーダーには必要です。

 私も29歳で独立し、現在の会社を立ち上げましたが、金型製作は一から学びました。当時まだ出始めだったワイヤカット放電加工機を県から融資を受けて約2000万円かけて導入し、金型づくりに挑みました。当時のワイヤカットには自動結線機能がなかったので、機械の横で寝泊まりしながら、休みなく機械を動かし続けたことを記憶しています。また、CAD/CAMも一から学び、自分で試行錯誤しながら覚えていきました。

 現在、当社はメーカーと共同開発したプレス機や高精度マシニングセンタなど最新鋭の設備を導入し、金型づくりも高度化していますが、原点はここにあります。金型づくりに一から取り組み、原理原則を理解したからこそ、新しい機械や技術を取り入れることができているのだと思います。

 今はデジタル化の時代です。IoTやAIといった次世代技術を活用し、これまで我々が培ってきたノウハウをいかにデジタル化するかが、今後の金型づくりのカギになると考えています。

 これらの新しい技術がどういう仕組みで、どのように自社に取り入れることができるのか。これからのリーダーには、こうした知識を身に付け、理解することが求められると思います。そして、そこで得た知識やノウハウを自身の中に留めるのではなく、社員に伝えていくことも大事です。そうすることで、会社全体のレベルアップにつながります。

 ものづくりはこれから大きく変化します。リーダーは、この変化を敏感にとらえ、先を読んで対応していかなければなりません。それには、常に新しい情報を手に入れることが重要です。国の動きを把握することはその一つ。国の方針と異なった方向に進んでしまえば、補助金などの支援策を活用することができず、新たな設備投資も難しくなります。また、業界団体や大学、研究機関など外部の方と積極的に交流することも大事です。会社の中に閉じこもっていては、新しい情報も入ってきませんからね。

 今の金型メーカーの経営者の多くは2代目や3代目で、設備や人もある程度揃っているという状況にあると思います。こうした中で一番大事になってくるのは、「ミッション(使命)」です。自分の会社の「ミッション」は何なのか、進むべき方向は。リーダーは、こうしたことを常に頭に置いた上で対応する必要があると思っています。

 世界的に脱ガソリン車の動きが広がり、金型産業への影響が懸念されていますが、一つ言えるのは、金型は量産する上では無くてはならない技術で、今後も決して無くなることはないということ。ただし、作り方は変わっていくはずです。新しい素材が登場したり、機械がより高度化したり。先入観にとらわれず、柔軟な発想で新しい技術や新しい分野に挑戦し、変化に対応できるリーダーこそ、これからの時代に必要なのだと思います。

金型新聞 2021年2月10日

関連記事

日本発条がササヤマと資本提携する理由【ササヤマ challenge!Next50】

自動車のシートなどを手掛ける日本発条は2015年、ササヤマと資本提携した。日本発条にとって技術連携のパートナーであるササヤマはどんな存在なのか。魅力、期待すること、今後取り組みたいことは。シート生産部の岡井広行氏と安田雅…

新しい価値の金型を
キヤノンモールド 斎藤憲久社長に聞く

 キヤノンモールドが発足したのが2007年。前身のイガリモールドとキヤノンの金型部門で伝承されてきた技能や最新技術など互いの得意分野の融合を図ってきた。「新しい価値を生み出す金型メーカーを目指したい」と語る、昨年4月に同…

平岡工業 精密部品加工・調達代行【特集:金型メーカーのコト売り戦略】

調達の効率化サポート 自動車のウェザーストリップのゴム金型や切断折曲機などを手掛ける平岡工業のもう一つの事業が、精密部品加工・調達代行サービスだ。金型や切断折曲機で培った技術や協力企業とのネットワークを活かし様々なニーズ…

久野金属工業 金型・プレス・組立一貫生産【金型の底力】

プレス業界の活性化に ハイテン材など高張力鋼板や難加工材のプレス金型及びプレス加工を手掛ける久野金属工業は、次世代車向けのプレス部品の製造を強化するため、約30億円を投じ、愛知県豊明市に新工場を建設。金型からプレス加工、…

特集 : 金型づくりを変える6大テーマ
関連技術編

注目技術7選!! 放電加工機を遠隔保守三菱電機  iQ Care Remote4U(アイキューケアリモートフォーユー)  IoT技術を活用して、放電加工機の様々な情報を収集・蓄積し、遠隔地からリアルタイムで確認・診断する…

関連サイト