金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

07

新聞購読のお申込み

【金型テクノラボ】安田工業 Labonosによる試作樹脂型の自動造形

自動車や電子部品などの開発サイクルが短くなる中、製品開発における課題の一つとなっているのが試作品や試作用金型の製作だ。加工プログラムやジグを作る高度なノウハウが必要で、それにかかる時間も手間も負担が大きい。しかし切削加工機「Labonos」は製品の3Dデータと簡単な操作で、それらの課題を解消できるという。その加工技術や性能、特性について解説する。

試作レス化の課題

現在、ものづくりにおける製品の開発サイクルはどんどん短くなっており、より一層の開発スピード向上が求められる。そんな中で試作・開発部門の担当者にとって歯がゆい状況になっているのが、試作品・評価サンプルの小ロット製作である。これらの製作をするにあたって、社内外どちらにおいても他部門や他社とのやり取りが生じ、進捗管理が難しい。

また、自部門で製作しようとしても加工プログラムの作成、ジグの設計・製作、加工機械のオペレートとクリアしなければならない課題が多い。中でも金型を使用した試作製
作に注目し、課題解決方法を紹介する。

新たな3D造形ソリューション

図① Labonosで製作した樹脂型と成形品

「3Dモデル形状データさえあれば、誰でも簡単に実物を手にすることができる」を具現化した、いわゆる「3Dプリンター」が世の中に広まり、その特徴を生かし、試作・小ロット用樹脂型の製作に用いられ始めている。しかしながら、樹脂型を実体化する工程で樹脂を何層にも積み重ねていくため、型の形状精度、面品位、材料強度が課題となり、成形品の精度不良や積層間に樹脂が入り込むことによる離型性の悪さ、型寿命といったところで、今一つとなっている。

一方で、3Dプリンターの造形方法とは真逆の「除去加工」を行う機械として切削加工機がある。ご存知の通り除去加工とは、工具や砥石などを使い、余分な金属(樹脂)を取り除く加工方法で、無垢材料から削っていく。形状精度、面品位、材料強度は、申し分なく、試作、小ロット用樹脂型のみならず金型の製作方法として従来から使用されている。

しかし前段でも説明した通り、切削加工機を扱うには多くの手間やノウハウ、人手が必要になるため、開発部門で完結させるのは少々ハードルが高い。

そこで紹介するのが『Labonos(ラボノス)』を用いた製作方法である。Labonosは、3Dプリンターの手軽さと切削加工機の具現化精度を兼ね備える新たな3D造形ソリューションで、これを使用することで開発部門の担当者でも容易に樹脂型が製作できる。(機械詳細は、専用ホームページより)

Labonos製樹脂型の実力

図② 形状精度の測定結果

このLabonosを用いて手軽に出力した樹脂型の実力を紹介する(図①)。図②は、Labonosで切削出力した樹脂型を3次元測定器で計測し、オリジナルデータ(3Dモデルデータ)と比較した際の誤差をカラーレンジにて可視化した図である。ほぼ全域(計測点の99.8%)で±5µmを下回っており、高い形状精度を実現していることがわかる。

また、樹脂型の表面をレーザ顕微鏡で観察したところ、面粗さの数値は、Sa:1.740µm(1.0mm2)であった。樹脂型に用いている材料は、PPSと呼ばれるスーパーエンプラで、耐熱温度:220℃、線膨張係数:5.0×10-5/℃となっており、材料強度としても十分である。この樹脂型を用いて成形を行ってみたところ、ABSを用いた成形では、200ショットに耐えており、まだまだ使える様子であった。

現状のまとめと今後の展開

開発部門の担当者がLabonosを用いて樹脂型を製作し、簡易成形機で成形をすることで、小ロットの試作品を短納期かつ手軽に手にすることができるようになる。この樹脂型で成形した試作品で、様々な検証を行ったあと、量産成形用の金型を設計・製作することで、開発から生産へのバトンタッチも容易になる。

一方で、樹脂型を用いた射出成形については、まだまだ普及してない分野であり、金型に対して、樹脂型を使用するメリット、デメリットを見出していく必要がある。今後、それらの検証を行い、ご紹介したいと思っている。

 ※続きは11月10日号に掲載

安田工業

  • 技術本部開発部新規事業開発課主任 佐藤圭太氏
  • 岡山県浅口郡里庄町浜中1160
  • TEL:0865-64-2366

記者の目

人手不足や生産現場の省人化で次代に高度な技術を教えることができない。その一方自動車などの開発サイクルは早くなり、短期間で高品質の製品を作らないといけない。経験が浅くても高度な加工ができる工作機械は、この相反する課題を解消する方法の一つ。これからますます注目されるのではないか(中)。

金型新聞 2021年9月10日

関連記事

OKK 金型の心出しを自動化

機械座標、カメラ、タッチセンサで OKK(兵庫県伊丹市、072-782-5121)は、マシニングセンタ(MC)の機械座標とTOFカメラ、タッチセンサを用い、金型などワークの心出し(基準点の測定)を自動化できるシステム「3…

倉敷機械 初心者でも簡単に操作可能なCADソフト

初心者でも簡単に操作可能  倉敷機械(新潟県長岡市、0258-35-3040)はこのほど、次世代操作系CADソフトウェア「Predeus(プレデウス)」を発売した。初心者でも簡単に操作できる機能を多数搭載。営業や購買など…

精密、高精度 ニーズに応える型材・部品特集

 超精密、高精度、短納期、長寿命化—。こうした高度化する金型へのニーズに対応するには、あらゆる加工技術や素材技術が必要だ。中でも、鏡面性が得られるのか、離型性が高いのか、長寿命化が図れるのかなど、金型の本質的な機能に直結…

サイズラインアップ拡張<br>ダイジェット工業

サイズラインアップ拡張
ダイジェット工業

TAタイラーモジュラー  ダイジェット工業(大阪市平野区、06-6791-6781)は、多機能刃先交換式座ぐり加工用ドリル「TAタイラーモジュラーヘッド」の工具径のサイズラインアップを拡張した。  従来の5サイズに14サ…

牧野フライス製作所 立形5軸と形彫の新型

大物金型向けを強化  牧野フライス製作所は中・大物金型向けの製品の品ぞろえを拡充する。2月24日、大型の5軸制御立形マシニングセンタ(MC)と、大型NC放電加工機を同時に発売した。インパネやバックパネルなど自動車の意匠性…

関連サイト