金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

27

新聞購読のお申込み

【金型の底力】キヤノンモールド世界に誇れる「見通せる工場」

世界一の金型メーカーへ 新本社工場が本格稼働

斎藤  憲久社長

キヤノンモールドは移転を進めていた「本社・友部事業所」を7月から本格稼働させた。市内に分散していた工場を1か所に集約。自動化や人・モノの移動を減らすなどして、従来比で1.5倍の生産能力を図る。さらに、強みとする人によるこだわりの金型づくりを強化し、金型の高付加価値化を進めることで「世界一のプラスチック金型メーカーを目指す」(斎藤憲久社長)。

荒加工工程を自動化したシステム
型内組立できるキューブシステムモック

同社は2007年、キヤノンの金型部門、キヤノン化成の金型部門、イガリモールドが統合して発足。以降、「友部事業所」(茨城県笠間市)と、「阿見事業所」(同県阿見町)」に分かれて運営してきた。阿見事業所は主にキヤノン向けの金型を、友部事業所は自動車や医療機器など幅広い精密プラスチック金型を手掛ける。

今回集約したのは友部事業所。笠間市内の6か所に分散していた工場を、敷地面積10万㎡、延べ床面積約1万8000㎡の新工場にまとめた。狙いは自動化に加え、人やモノの移動などを最小限に抑える物流効率の改善だ。「生産量含め、すべての指標で1.5倍を目指す」(斎藤社長)という。

そのために、こだわった一つが「見通せる工場」。工場内は60m×40mの4つのゾーンに分かれるが、ゾーン内に全く柱がない。「柔軟なレイアウトが可能。また、全体を見渡せることで金型づくりの見える化につなげる」。

新本社・友部事業所

さらに、その4つのゾーンをダイセット、駒加工・組立、成形、測定・検査など加工順に並べ、一気通貫で戻りのない機能的なレイアウトにした。「これまで1工場で完結しない金型が多かった。入口から出口まで戻りのない流れを作り、人とモノの移動を最小化する」。

さらに集約効果を出すために、荒加工の自動化ラインを導入した。2台の横型マシニングセンタに20パレットと搬送ロボットを持つ自動化システムを2ライン構築し、24時間フル稼働を可能にした。「各工場に分散していた荒加工を集めることで、自動化できる加工量を確保できた」。

新工場では生産性向上だけでなく、金型づくりのこだわりも継承する。新工場のコンセプトを「創業の理念と文化を残しつつ、時代を先取りした世界に誇れる工場」としたのがその表れだ。

斎藤社長は「現在の当社があるのは、イガリモールド時代の金型を作り込む匠の技術があったから。その部分はなくしてはいけない」と話す。そのために、新工場内に現代の名工に認定された「匠」らが人の育成を担う「名匠塾」を設けた。

人を重視するのは「金型は単なる道具ではなく、価値を生む高付加価値商品」(斎藤社長)だからだ。これまでも、型内で組立から接合までできるダイスライドインジェクション(DSI)金型などを多く手掛けてきた。最近では、独自の「型内組立」を開発し、様々なニーズに応えている。さらに「型内組立」に使用される小型射出成形装置の開発も進めている。

これだけの大規模な投資や、開発を強化するのは「国内外を含め、金型の市場は成長する」(斎藤社長)とみるからだ。そして、「今回の工場を契機にして日本一、ひいては世界一のプラスチック金型メーカーを目指す」。

会社概要

  • 本社   : 茨城県笠間市柏井812番2
  • 電話   : 0296-77-8171
  • 代表者  : 斎藤憲久社長
  • 創業   : 1972年
  • 従業員  : 520人
  • 事業内容 : 精密プラスチック金型の設計、製作。

会社の自己評価シート

加工の無人化・自動化を実現する設備力、型内組立などの設計技術が強みである。また、技能を伝承する教育機関を有するなど人材育成にも力を入れている。

金型新聞 2021年9月10日

関連記事

J-MAX 新工場建設や船活用でCO2削減【特集:カーボンニュートラルに向けたはじめの一歩】

自動車の大型プレス用金型及び部品を製造するJ‐MAX。特に、ハイテン材・超ハイテン材用の金型で高い技術を有し強みを発揮している。「2030年度までに、CO2排出量を2013年度比半減、50年度にはカーボンニュートラル実現…

「現場で活躍できる人材育て、学生の未来を後押しする」 大分県立工科短期大学校校長・䑓博治氏[鳥瞰蟻瞰]

入社したその日から金型づくりや保全の現場で活躍できる。当校の機械システム系金型エンジニアコースはそんな人材を育てています。アカデミックな指導はしません。指導するのはあくまで金型をつくり、使う実践の現場で必要な技術や知識で…

南海モルディ 金型補修を自動化【金型応援隊】

特殊鋼材料の販売や金型のメンテナンスを手掛ける商社の南海モルディ(22年9月に南海鋼材から社名変更)は、オリジナル製品「余熱くん」や「肉盛りくん」を開発、販売し好評を得ている。 「余熱くん」は、製造前の金型予熱、焼き嵌め…

己が戦力知り戦略
日本金型工業会学術顧問 /日本工業大学客員教授
横田 悦二郎氏に聞く

〜世界の需要どう取り込む〜  世界の金型需要を取り込むには何が必要か—。世界各地の金型工業会の設立に関わり、世界中の金型業界をよく知る日本金型工業会学術顧問の横田悦二郎氏は「コロナで世界の金型需要は高まるが、需要を確保す…

【鳥瞰蟻瞰】福井精機工業社長・清水一蔵氏「これからの金型の価値は、生産技術支えるプロデュース力」

金型の価値が変わる これからの価値とは、生産技術支えるプロデュース力  高度な技能や経験、専門知識がなくても金型が作れる環境になってきました。なぜなら、これまで職人技と言われた金型加工は工作機械や切削工具などの発達によっ…

関連サイト