金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

12

新聞購読のお申込み

金型はワクワクする仕事 山中雅仁氏(日本金型工業会会長)【この人に聞く】

今年6月の日本金型工業会の総会で、3期6年会長を務めた小出悟氏(小出製作所社長)に代わり、新たに会長に就任した山中雅仁氏(ヤマナカゴーキン社長)。「金型づくりはもっとワクワクできる魅力的な仕事のはず。ワクワクするために儲けられる業界にしなければならない」と話す。「取引環境の改善」や「データを共有するなどの協調領域の拡大」、「広報活動の強化」、「営業力の強化のための支援」に取り組みたいという。同氏に今後抱負や取り組みなどを聞いた。

山中雅仁(やまなか・まさひと)
1994年オハイオ州立大学機械工学科修士課程修了。89年ヤマナカゴーキン入社。96年常務取締役、2010年代表取締役社長。1965年生まれ、58歳。

儲けられる業界に

就任のあいさつで「儲かる業界にしたい」と強調しました。

私の持論として、仕事はワクワクしないとダメだと思っています。そして、本来金型業界はワクワクできる魅力ある業種のはずです。なぜなら、社会課題を解決できるツールを提供できる存在だからです。例えば環境問題で注目を集める生分解性プラスチック。これを採用した製品を生み出すには高度な金型技術は欠かせません。社会課題を解決できる業界ってワクワクしませんか。

もっとワクワクするには、キチンと儲けなければいけません。面白いことをするには、人材も設備も重要ですし、そのために投資できるだけの資本を稼ぐ必要があります。

ただ、我々自身も長年の考え方を改める必要があります。かつてのように、金型メーカーは金型を作って終わりの時代ではありません。ユーザーのベストパートナーとなって社会の課題解決策を提示できる存在だと自覚すべきです。ユーザー業界にも、そうした認識を持ってもらうために、もっと情報や存在感を発信していく必要があります。

具体的な取り組みは。

一つは現在追い風となっている「取引環境の改善の徹底」です。歴代の会長が訴えてきてくれたこともあり、改善は進んでいます。この流れを加速させるためにも継続して訴えていきます。

もう一つが「協調領域の拡大」です。具体的にはこれからですが、業界のさまざまなデータを共有できないかと考えています。この数年で人工知能(AI)が飛躍的に進化し、金型づくりを大きく変える可能性を秘めています。しかし、個社でAI活用といってもデータ量も少なく難しい。

各社提供できる範囲でさまざまな金型づくりのデータを共有し、AIを活用して、金型づくりを効率化できないかと思っています。会員企業はそれを自由に活用できるようにしたいと思います。

他には。

「広報活動の強化」も進めます。役員改選で理事は若返りましたし、女性理事も誕生しました。こうした若い力を借りながら、ユーザー業界に社会課題を解決すベストパートーであることを訴えていきたいと思います。

営業の強化も重要だと訴えています。

金型の7割は自動車向けだと言われており、自動車づくりの変化は大きく影響します。当社が手掛ける冷間鍛造型も同じく、電動車の登場により、大きな変化の中にあり、儲けるのが難しくなっています。

それでも利益を出すには、当社の課題でもありますが、営業の強化は欠かせません。シンプルにみれば、金型メーカーの稼ぐ力=技術開発力×営業力です。金型業界は長年投資してきたこともあり、技術開発力が高い会社は多い。一方、取引先が固定化されている企業が多いため、総じて営業力は弱い。各社立場や手法は異なると思いますが、営業プロセスの見える化や営業体制の見直しが重要だと思います。営業強化の参考となるような講習会や勉強会を開きたいと思います。

金型メーカーに一言。

大きな変革期にある今、自社を磨き、競争することは当然ですが、個社では対応できないことも多くなっており、協調することも必要です。日本金型工業会は同業者の団体なので、協調できる領域はたくさんあるはずです。また、インターモールドに無料で出展できることも大きなメリットです。ワクワクする業界にするために、ぜひとも参加して欲しいと思います。

金型新聞 2024年8月10日

関連記事

この人に聞く
トヨタ自動車 大竹 知之部長

100年に一度の変革期 どうする金型づくり  エンジン、トランスミッション、カムシャフト、最近では電池やモータなど、自動車を動かすほぼ全ての内蔵部品の金型を手掛けるトヨタ自動車のパワートレーン工機部。豊田章男社長が「自動…

アクスモールディング 押出成形金型の設計簡易化【特集:金型づくりで広がる金属AM活用】

廃棄部分の再利用も可能に 高機能フィルムの製造に適した押出成形金型「Tダイ」などの設計を手掛けるアクスモールディング。同社は、今年の3月にソディックの金属3Dプリンター「LPM325S」を導入。押出成形金型の設計の簡易化…

金型産業の未来・トヨタ自動車<br>高見 達朗氏に聞く

金型産業の未来・トヨタ自動車
高見 達朗氏に聞く

粗形材改革の〝要〟 孫の代まで続く金型産業 「金型は、常に進化させながら孫の代まで延々と続く重要産業」――トヨタ自動車ユニット生技領域長、常務理事高見達朗氏はこのほど、日本の金型産業について熱く語った。日本産機新聞の自動…

「ガスの知見を武器に金属AMをトータルでサポート」大陽日酸・中田竜課長[この人に聞く]

産業用ガスメーカーの大陽日酸はガスの高い知見を武器に金属AMによる金型づくりを提案している。海外製の金属AM装置販売のほか、粉末の管理、シールドガスによる水分や酸素濃度の管理、造形ノウハウまでトータルでサポートするのが特…

三光化成 エアと水のハイブリッド冷却【特集:金型づくりで広がる金属AM活用】

ラティス構造を採用し、材料費と造形時間を削減 自動車関連を中心に6000品目を超える樹脂成形部品を生産する三光化成。ソディックの金属3Dプリンタ「OPM350L」を活用し、水とエアを冷却媒体として活用する「ハイブリッドコ…

トピックス

関連サイト