金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

27

新聞購読のお申込み

アクスモールディング 押出成形金型の設計簡易化【特集:金型づくりで広がる金属AM活用】

廃棄部分の再利用も可能に

高機能フィルムの製造に適した押出成形金型「Tダイ」などの設計を手掛けるアクスモールディング。同社は、今年の3月にソディックの金属3Dプリンター「LPM325S」を導入。押出成形金型の設計の簡易化や、従来法では不可能な金型作りに取り組む。

押出成形金型を設計する際、複数の金型部品の組み合わせなどを考慮する必要がある。また、多層フィルムの場合、層を重ねる時の金型設計は一苦労だ。横田新一郎社長は「時間がかかる上に、高度な設計技術を必要とするため、設計できる人間はごくわずかだ」と話す。

導入したソディックの金属3Dプリンター「LPM325S」

金属AMの活用によって、CADで設計図を描き、一体構造の金型作りが可能になった。複数の金型部品などを組み付ける必要がなくなり、設計が簡易化。作業工数を大幅に削減した。これに加え、金属AMによる付加価値の高い金型作りにも積極的に取り組んでいる。

「従来は押出成形で多層のフィルムを製造する際、両端の部分は捨てていた。金属3Dプリンターを使い、樹脂が通る流路を自由に変えることで、廃棄した部分を再利用できる金型が作れる」(横田社長)。

金属AMで製造した医療用チューブの金型

同社は、高い金型設計力を強みに受注を伸ばしており、今期の売上高は過去最高を記録している。その一方で、さらなる成長のためには押出成形業界の裾野を広げることが必要と考えていた。「食品包装用などで使われる多層構造の高機能フィルムは、今後も需要拡大が見込まれる。金属AMの活用で押出成形金型の設計を簡易化し、業界全体の供給力を増やしたいと思った」(横田社長)。

金属AM活用による成果はすでに出ており、新規で3~4件の受注につながっている。横田社長は「金属3Dプリンターを活用し押出成形金型を作っている人はいない。ブルーオーシャン(未開拓市場)なので、今後も事業拡大が期待できる」と話す。

課題は流路内面の磨きやφ0.5㎜以下の細かい穴の造形精度だ。「どうしても機械加工が必要な部分は残る。他社との協業も検討し、改善していく」(横田社長)。

今後は、ニッケルを主成分とした合金「ハステロイ」を活用した造形にも取り組む考えだ。横田社長は「現在使っている材料はマルエージング鋼だが、硬いため磨きにくい欠点がある。材料費が高く、難しい側面もあるが、新しいジャンルとして挑戦したい」と話した。

金型新聞 2023年11月10日

関連記事

難しい金型<br>日本へUターン

難しい金型
日本へUターン

日本工業大学大学院教授 横田 悦二郎氏に聞く 「ユニット」や「軽量化」がカギ  日本金型工業会で学術顧問を務める、日本工業大学大学院の横田悦二郎教授は「国内に戻る金型は出て行った時と内容は異なり、高度化して回帰している」…

かいわ 自社で商品生み出す道に

培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…

【ひと】ベントム工業社長・本田大介さん システム会社を立ち上げた金型経営者

システム会社立ち上げた金型経営者  クラシック音楽事務所の営業から父親が創業した鋳造・ダイカスト金型メーカーに転職。会社を受け継いだ後、工程管理を手掛けるシステム開発会社を設立した。異色の金型経営者だ。  入社した当初は…

田岡秀樹氏

【プレス型特集】
本田技研工業 田岡 秀樹氏に聞く
プレス型メーカーの目指すべき方向性

自分の強み生かす道を 本田技研工業 完成車新機種推進部 主任技師 田岡 秀樹氏に聞く 高級車か、低価格車か、2極化も 金型なくして新車開発ならず 自動運転、ライドシェア、電気自動車(EV)の進化―。自動車業界では急激な変…

国内事業を再整備 森久保哲司氏(パンチ工業 社長)【この人に聞く】

パンチ工業(東京都品川区、03・6893・8007)は今年、2025年3月期までの中期経営計画を発表し、最重点施策として「国内事業の再整備」を掲げた。販売拠点の統廃合や、連結子会社の解散などによる経営合理化を図り、特注品…

関連サイト