金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

04

新聞購読のお申込み

【金型の底力】サムテック 結果や成果を出し切ることが重要

熱間鍛造の一貫生産 社員と共に成長へ

真中が阪口専務
金型加工技術の強化

「挑戦は常に行っているが、挑戦すると失敗もある。それを皆で共有し、次へ進むことが重要だ」と話すのはサムテックの阪口直樹専務。熱間鍛造事業を主力に、型設計・製作、鍛造ライン(羽曳野工場など国内14ライン・海外5ライン)を持ち、月間420万ピースの鍛造品を生産。主に、ホイールハブユニットベアリングや四輪駆動用カップリング、クラッチハブやプーリーなどトランスミッションから伝導装置、足回り部品の丸物に特化した鍛造品を手掛け、年間生産量は8万トン(国内)、売上高は230億円(海外含む)を超え、自動車産業を支える企業の1つだ。

同社の特長は自社開発した閉塞熱間鍛造などの精密鍛造技術で、ホイールハブユニットベアリング外輪の鍛造では外バリを出さず、材料歩留まりを向上させ(10~15%)、大幅にコストダウンするなど技術の開発に注力。直近はプロペラシャフトやハブユニットベアリングの仕上げ切削を行い、型製作から鍛造、仕上げまで一貫生産体制を構築。これまで見えなかった鍛造の課題解決に取り組み、自動車メーカーなどから受注も増加。プレス機の増設や金型設備の強化など成長に結びつけている。

「自動車業界は休むと誰かが抜いていく。常に新製品や改善に取り組まないと続けられない」と阪口専務は業界の厳しさ、向上心の重要性を語る。熱間鍛造の大きな課題は金型費と型寿命。寿命を延ばすには鍛造時の荷重軽減が1つの方法で、熟練技能者の絶妙な荷重加減や金型の工夫が大きい。「荷重が20tに変われば型寿命も変わる」と、解析技術の活用や金型加工の技術強化を図る。

マシニングセンタ加工ライン

そこで、ジェイテクト製マシニングセンタを計13台導入。最適な工具選定や切込み量を増やすなど加工パスの見直し、多数個を同時加工できる治具開発を行ったほか、機上の工具計測も取り入れ、工具の折損検知・摩耗状況を把握し、加工の安定化を実現。休日の無人稼働やダウンタイム削減など生産性向上や稼働率30%向上を目指す。さらに、複雑な金型原価管理のシステム構築や5軸加工機導入も視野に入れる。

「結果や成果を出し切ることが重要。その力がまだ弱い」と阪口専務はKPIをベースに、人材育成プロジェクトを始動。部門別損益や製造原価低減、型寿命向上など製造、営業、業務担当の各自に目標を持たせ、面談しながら成果が出せるようにフォローする。例えば、4S活動で改善を行うも、時間が経つと元の状態に戻ることはよくあるが、目印による場所の指定など考えなくてもできる仕組みが重要だ。「大事なことは問題の本質を見極めること。人ではなく解決するシステムがカギだ」と細かい所まで目を配り、仕組みで改善方法を探す。「現状を否定し、課題を見つけ、解決する好循環を作れば、モチベーションも高まる」と全社員のチームワークを結集することが次の成功へ導く原動力となる。「製造業は人が主役。少し前にあった納期問題も全社員が情報を共有することで段取りも良くなり改善してきた。社員の総合力を出すことができれば、出来ないことはない」と中期経営計画では売上高250億円を掲げ、活気ある会社を目指す。

金型新聞 2021年10月10日

関連記事

三菱重工工作機械 佐郷昭博氏に聞く<br>高精度金型向けマシン<br>段差ゼロ、誤差ゼロへ

三菱重工工作機械 佐郷昭博氏に聞く
高精度金型向けマシン
段差ゼロ、誤差ゼロへ

三菱重工工作機械が金型加工向け販売を強化している。小型機から5面加工機までラインアップを揃え、より高精度を求められている金型をターゲットに、最適ソリューションを提案する。その背景、今後の展開を佐郷昭博取締役トータルソリュ…

新たな金型産業ビジョンを
日本金型工業会 小出悟会長

ウェブを最大限活用  令和2年の総会がウェブ会議システムになるとは想像もしていませんでしたが、コロナ禍(新型コロナウイルス感染拡大が招いた危機的、災厄的な状況)の総会であることを正会員並び賛助会員の皆様にはご理解を頂き、…

【鳥瞰蟻瞰】三条市立大学学長・アハメド シャハリアル氏 「創造性豊かなテクノロジスト」の育成を

技術とその価値を理解し市場を創る人を育成企業と共に未来考える場に 三条市立大学は、4月に開学した、技術とマネジメントに特化した一学部一学科で「創造性豊かなテクノロジスト」の育成を目的としています。その定義は、技術が生み出…

己が戦力知り戦略
日本金型工業会学術顧問 /日本工業大学客員教授
横田 悦二郎氏に聞く

〜世界の需要どう取り込む〜  世界の金型需要を取り込むには何が必要か—。世界各地の金型工業会の設立に関わり、世界中の金型業界をよく知る日本金型工業会学術顧問の横田悦二郎氏は「コロナで世界の金型需要は高まるが、需要を確保す…

ハマダ工商 AMで新たなものづくり【金型の底力】

樹脂やプレス金型の製作から少量の成形まで手掛けるハマダ工商は今年2月、事業再構築補助金を活用し、金属3Dプリンタを導入した。水管を自由に設計した冷却効果の高い金型で、反りを抑えた防犯レンズカバーの成形品を提供するのが狙い…

関連サイト