課題多き働き方改革 働き方改革関連法案の施行から4年。金型業界でも労働時間短縮や生産性の向上など、働き方改革は進んでいるのか。現状を調べるため、本紙ではアンケートを実施した。調査からは、改革には前向きに取り組んでいるもの…
アイジーエヴァース 5軸+APCで稼働率向上
デジタル技術の進化で、相次いで登場する新技術。次世代の匠はそれらの技術を金型づくりにどのように活かしているのか。また、それら能力を習得するには、どのようなスキルや育成が必要なのか。本特集では、様々ある新技術の中でも、次世代の金型づくりで注目されている「自動化」、「金属3Dプリンタ」、「5軸加工」で、匠の技を持つ金型メーカーにその活用術やノウハウを聞いた。
「5軸+APCで稼働率向上」
「1台における年間の稼働時間が約2700時間向上した」と稲垣徹也社長。同社は冷間鍛造、プレス、樹脂など多様な金型や高難度なモータ関連部品を手掛け、「削りをモットー」をテーマに、同時5軸加工など高精度・高難度加工にも挑戦。2021年にはDMG森精機主催ドリームコンテストで同時5軸加工を駆使した『鷹視眈々』で技能賞を獲得、加工技術の強化を進めている。
IoTと独自システムでDX強化
近年、取り組んでいることの1つが自動化だ。深堀形状で高精度を要する歯形の冷間鍛造金型の仕上げ加工は従来、放電加工と磨き(ラップ加工)を行うが、稲垣社長は「人が作業することに違和感を覚え、将来の金型メーカーとしてあるべき姿を考えた」と理由を語る。工作機械が進化した今、複雑かつ高精度な加工が要求される金型加工の自動化を推進し、稼働率向上を目指した。
まずは前述の歯型の冷間鍛造金型の加工を同時5軸加工(磨きレス)に集約し、測定も含め6工程から2工程に短縮。原価・リードタイム共に、従来に比べ約30%低減したほか、型寿命や品質の安定を実現。さらに、6パレットのパレットチェンジャー式同時5軸加工機(DMG森精機製)を導入、夜間や休日をフル活用する自動化を進め、±5μ精度の金型加工や試作開発部品、モータ関連部品など多品種少量かつマルチなワークに対応する自動化システムの確立を目指した。
「自動化を進めるには数多くの課題を乗り越える必要がある」と稲垣社長。サイズ・材質・形状が異なるワークに対応した自動化システムを構築するため、初期は加工準備に技能者がワークの芯出し、軸のキャリブレーション、パレット中心位置合わせなどデータベース化も含め段取り時間を短縮し、パレットと工具のID登録、多様なワークに対応する治具製作、機上測定による自動測定、加工後のワーク清掃の自動化、さらに工具準備時間削減のため、焼き嵌めチャックからハイドロチャックへ変更など自動化に対する課題を解決した。「細かな点まで気を配らないと自動化は実現しない」と5軸加工機の担当者である岡本GMは語る。結果、平日の稼働率は単体機に比べ78%増加し、休日はさらに200%も向上。現在、自動化システムは3台稼働。単体機に比べ、3台で年間8000時間長く稼働し、受注・売上の拡大に貢献。
「自動化は予期せぬトラブルが付き物。夜間や休日はIoTと監視カメラで正常に稼働しているかを確認しており、担当者も気を抜けない」。今後は他の機械のIoTによる可視化の横展開と、独自生産管理システムとの融合でDX強化を図る。
会社概要
- 本 社:愛知県刈谷市小垣江町本郷下55-1
- 電 話:0566・21・3287
- 代 表 者:稲垣徹也社長
- 設 立:1960年
- 従業員数:88人
- 事業内容:冷間鍛造など多様な金型の設計製作
金型新聞 2022年2月10日
関連記事
デジタルマーケティングで見込客を獲得 近年は国内の金型市場が縮小しており、いかに新規開拓を行うかが大きな課題となっており、効率良く営業活動を展開するための仕組みやシステムの構築も求められる。年間の新規引き合い件数500件…
経営者が語る 視野広げ新規開拓 1月10日号のつづき 樫山 どんな方法で新規開拓しているんですか? 鈴木 インターネットで調べたり、展示会等に行き情報を集めたりします。ただ、プレス金型の納入先ですと顧客の幅が狭くなるので…
自社商品の生産性アップ 大阪銘板は自動車などのプラスチック内外装製品などを中心に金型から成形、二次加工までを手掛ける。グループ全体で4つの生産拠点を持ち、型締め力100~2000tクラスのプラスチック製品を生産している。…
人手不足が叫ばれる昨今において、現場における新人教育を効率化し、技能伝承を推進させるデジタルサービスが数多く登場している。技能伝承のみならず教育プロセスの省人化・DX化に貢献し、現場全体の生産性も向上させる各社の製品を紹…