金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

04

新聞購読のお申込み

フジイ金型が「6稼4勤」制度を導入したワケ

6稼4勤のシフト制勤務

勤務日数は月19日

「正規の労働時間を減らしたことで多能工化が進み、効率性が高まったことでコストの削減にもつながっている」と話すのはフジイ金型の藤井寛達社長。同社は月~金という従来の働き方をやめ、6稼4勤のシフト制を導入し、時間あたりの生産性を高める現場作りを行っている。

現場の多能工化を促進

導入したきっかけは「順調だった金型受注も新型コロナウイルスで受注が減り、一時帰休する状況になったが、すぐに回復すると思っていた。通常時の生産性を維持するために、新しい働き方が必要だと考えた」。

そこで取り入れたのが稼働日を週6日に設定し、勤務日数を4~5勤とする6稼4勤のシフト制だ。従来の月曜日から金曜日までの稼働を、月曜日~土曜日までの稼働に変更。給料は従来のまま、1日勤務日数が少ない月19日とし、年間休日も137日に増やした。

やらざるを得ない環境作った

建設中の新工場

シフト制導入により、現場では機械オペーレータなど担当者が不在となる場合があるため、全員が多能工化を求められる。「やらざるを得ない環境を作った」ことで、多能工化を図る仕組みを構築。「能力のある人材をさらに伸ばすきっかけにもなった」とし、働く時間が減ったことで、時間あたりの効率性を意識した働き方になり、自然と報告書やレポートの簡素化といった工夫が生まれた。

もちろん、働き方が大きく変化したことで戸惑う社員もいる。「今までのリズムを崩したくないと、最初は抵抗感もあったが、休みが増えた分、時間あたりの給与は増えている。導入から1年以上が経ち、今では不満もほとんどなくなり、労働時間が減った分、固定費も下がった。生産性を高めれば、さらにコスト削減になる」。

併せて導入したのが新人事考課制度「ハッピースパイラル みんなで幸福のらせん階段を上っていきましょう」だ。多くの企業は直属の上司(工場長など)による評価だが、人によって評価基準も異なる。それを平等な評価基準に設定し、チャレンジ目標を作り達成率を評価する形に変えた。「みんなが成長するためには公平公正な評価基準が必要」とし、社員たちに自ら考え行動する人材に育ってほしいと願う。「次は有給休暇の取得推奨など社員が長く、幸せに働ける会社にしたい」。

納期で勝負したい 〜藤井寛達社長に聞く〜

当社はダイカスト金型専業メーカーで最大800tまでの鋳造機に対応しています。ダイカスト金型市場は1100億円、うち外販金型は800億円ほどと想定しています。今後、HVやEV車など軽量化ニーズが続けば、ダイカスト金型にはチャンスが溢れており、シェアを伸ばすためにやれることはたくさんあります。

モノづくりで追求することは「品質・価格・納期」の3つで、この中のどこを伸ばし、特化していくかです。当社では「納期で勝負する」、超短納期金型を目指します。短納期化を進めれば、自然と金型製作に関わるコスト低減にもつながると思います。短納期化を図るには時間を意識した働き方が必要で、そのために働き方改革があり、無駄で不効率な作業の削減、作業の標準化や部品の規格化(設計の簡素化)などを進めています。進捗状況を見える化する生産管理システムも導入し、DX化を強化しました。

年内に新工場が立ち上がる予定です。金型の生産能力を高め、さらに多くの金型を受注できるように努めていきます。

会社概要

  • 本 社:愛知県丹羽郡扶桑町大字南山名字名護根106
  • 電 話:0587-93-1101
  • 代 表 者:藤井寛達社長
  • 創 業:1976年
  • 従業員数:85人
  • 事業内容:ダイカスト用金型の設計製造

金型新聞 2022年4月10日

関連記事

電極工程の自動化で9割のコスト削減に成功 キャノンモールド【特集:利益を生むDX】

DXの本質は利益を生み出すことにある。以降では、DXによって「売上げを上げて利益を生み出す」方法と「コストを下げて利益を生み出す」企業のそれぞれの取り組みを取材した。 電極の測定プログラム自動作成 精密プラスチック金型を…

【特集】ユニークな社内制度

従業員が満足して働ける、働きやすい魅力的な職場を作ることで、多様な人材が企業に集まってくる。そうして集まった人材は、長く会社にいて力になってくれる。そんな考え方から独自の社内制度を設け、活用する企業は多い。では、金型メー…

スコープ3の対応進む【特集:カーボンニュートラルに向けたはじめの一歩】

2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(CN)」の実現を目指す動きが加速している。欧州の規制強化などに伴い、サプライチェーン(供給網)全体でのCO2排出量を示す「スコープ3」への対応を進める…

米谷製作所 メガキャスト向け超大物金型に挑む【特集:自動車金型の未来】

企業連携で金型技術確立へ EVシフトによって、需要減少が見込まれる内燃機関(ICE)部品の金型。シリンダヘッドやシリンダブロックなどのダイカスト金型を手掛ける米谷製作所はその影響を受ける1社だ。米谷強社長は「今後、内燃機…

価格の引き上げ急務 業界を挙げた取引環境是正へ【特集:どうする値上げ】

金型の製造コストが上昇している。金型の母材として多く使われる工具鋼や、各種金型部品などが相次いで値上げされたためだ。加えて、工場稼働に必要な電気料金も依然、上昇傾向にある。金型メーカー各社は、取引先への価格の引き上げ交渉…

関連サイト