岐阜県金型工業組合は第52回通常総会を開き、役員改選を行った結果、加藤丈詞氏(カトーメテック社長)が新理事長に選ばれた。また、副理事長には大垣精工の小森二郎氏、朝日興業の森良二氏に加え、丸順の川瀬典男氏が新たに選出された…
業界関連団体トップが年頭所感
PART1:日本金型工業会 会長 小出 悟氏「変化を先取りした活動」
PART2:経済産業省 製造産業局素形材産業室 室長 沼舘 建氏「適正な取引環境整備」
PART3:日本金型工業会東部支部 支部長 鈴木 教義氏「新しい考え取り入れる」
PART4:日本金型工業会中部支部 支部長 山田 徹志氏「誇りと夢を描ける業界に」
PART5:日本金型工業会西部支部 支部長 山中 雅仁氏「顧客提供価値の拡大」
PART6:素形材センター 会長 小脇 一朗氏「センター機能の活用を」
PART7:岐阜県金型工業組合 理事長 加藤 丈詞氏「企業は人なり」
PART8:日本金属プレス工業協会 会長 髙木 龍一氏「復活から成長の年へ」
PART9:日本ダイカスト協会 会長 浦上 彰氏「ダイカスト業界の更なる発展」
PART1
日本金型工業会 会長 小出 悟氏「変化を先取りした活動」
今年度は、続・令和の金型産業ビジョンとしての「日本の金型産業を持続可能な産業にする事業~生き残り産業ではなく、成長・発展産業になるには~」が加わり、必要とされるあらゆる領域での精度の良い情報を入手することで、持続可能な我が国の金型業界の将来を見据え模索し、個社としての取るべき対応も予知できればと考え、今期中には第一段階のご報告が出来るよう現在指針になるべきものを編み出そうと活動しております。
令和5年は戦争、インフレ、物価高騰、コロナそれぞれ継続することでしょうし、新たに中国を発信元とする出来事も無視できないところになりそうであり、その他でもカーボンニュートラル、デジタル化の進む中でのサイバーセキュリティーに対するOEM企業のサプライネットワークに対しての要求の高まり等は益々高まるものと考えられます。それらに対し効率の良い対応をすることは言うまでもなく、お互いが確度の高い同様の情報のもと対応することが出来れば業界としてのワンボイスにもつながり、一糸乱れぬ対応こそが名実ともに対等な関係に近いパートナーシップ関係をも構築できるのではと期待するところです。経済産業省が積極的に推進するパートナーシップ構築宣言に対しても会員の皆様には今一度検証して頂き、ご賛同頂ければ決してマイナスではないと確信致します。
また、変化の激しい時代にいつも思い考えさせられることは「人」の重要性です。人が集まり、人が成長してこそ持続可能な環境が築けるのであって、解決しなければならない大きなテーマです。工業会では様々な教育システムの運用と改善を通し、より参加しやすい各種の教育プログラムを推進して行きます。金型マスター認定制度を包含した学校制度、eラーニングによる教育プログラムの充実など、やらなければならないことが山積みですので対応力と対応スピードが肝心です。
これまで以上の会員企業の皆様のお力添えはもとより、関連官公庁、関連団体の皆様のご協力も得ながら、変化を先取りした活動を着実に進めていく所存です。
PART2
経済産業省 製造産業局素形材産業室 室長 沼舘 建氏「適正な取引環境整備」
素形材産業は、エネルギー・原材料価格の高騰やカーボンニュートラルなどの課題に直面しています。こうした状況の中、事業継続をしつつ、発展していくために以下の取組を進めてまいります。
エネルギー価格・原材料価格の転嫁や手形の支払い条件の改善など、望ましい取引事例を「素形材産業取引ガイドライン」で紹介・解説し、適正な取引環境の整備を進めてまいります。
次に、省エネルギー設備への更新を促進するための補助金(省エネ補助金)を補正予算で措置し、新たに複数年度の投資計画も補助対象とするなど、省エネ対策も進めてまいります。また、一昨年から素形材産業の人材確保や魅力向上の一助として、工業高校と素形材産業の交流を進めています。引き続き、素形材産業を肌身で感じることができる機会の創出に取り組んでまいります。
PART3
日本金型工業会東部支部 支部長 鈴木 教義氏「新しい考え取り入れる」
昨年は、日本が18個のメダルを獲得した北京オリンピックは遥か昔のように思えてしまう一方、オリンピック閉幕を待っていたかのように始まったロシアによるウクライナ侵攻は収束が見通せず、世界情勢に大変な影響を及ぼしています。また新型コロナウイルスに関しては、共生のための新たな生活様式の浸透は見られるものの、まだまだ対応に翻弄された1年だったと感じています。私たち金型業界を取り巻く環境も、原材料や部材の不足、各所で頻繁に発生する生産調整などのサプライチェーンの乱れから混沌を極めており、安定しない大きなうねりの中で難しい舵取りが継続している状況です。
昨年、小出会長より「日本の金型産業を持続可能な産業にする条件」として7つの課題が提言されましたが、日本の金型産業が世界の産業の基盤として存在感を示していくには、提言として挙げられたインフラ・人・考え方・技術、そして体制、どれも常にレベルアップし続けなければいけないと思いました。自動車業界を例にすると、EV化が加速する中で金型に要求されるものが変化してきています。これまでの継続では生き残っていくことはできないでしょう。東部支部では「天青会」の若い経営者の新しい考え、意見も取り入れ、様々な視点から将来へ繋がることを考えていきたいと思っています。また、業界、各社の成長・発展へ繋がる研修会や工場見学会の開催など、できるだけ直接顔を合わせた活動ができるよう計画してまいります。
PART4
日本金型工業会中部支部 支部長 山田 徹志氏「誇りと夢を描ける業界に」
未だ変わることなく続く新型コロナ、加え、ロシアによるウクライナ進撃、危ういバランスの上に立つ世界情勢と先の見えない経済状況、そして、足元を見ればエネルギー、原材料、購入品等の値上げとマイナス要素を上げれば切りがない状況であり、各社にはご苦労されていることと思います。しかしながら私たちは立ち止まる訳にはまいりません。会員各社が元気に継続しなければなりません。過去を振り返れば幾多の困難がありました。その度毎に知恵を出し、決断し、行動を起こし乗り越えてまいりました。確かに、昨今は過去の延長線上ではなく時代が大きく変わろうとしています。常識、感覚、基準が変わってきていると感じます。時代の大きな曲がり角に来ているのではないでしょうか。新たな気持ちで見回して考え、検証し、決断・実行する機会が訪れていると考えます。何が正解なのかは正直わかりません。各々の環境、諸事情によって導き出される答えが違います。取り巻く環境が多様化しているのだと感じます。日本金型工業会は、支部は支部として、本部は本部としての役割をもって会員の皆様がこの大きな時代の曲がり角を少しでもスムーズに駆け抜けることが出来る一助になる事業を行ってまいります。そして、今までの金型業界を長きに渡りけん引してきた人々にとっても、これからの金型業界をけん引していく人々にとっても、この金型を創り出す仕事に誇りと夢を描ける業界であることが大切なことです。
PART5
日本金型工業会西部支部 支部長 山中 雅仁氏「顧客提供価値の拡大」
朝ドラの「舞い上がれ」が好調です。主人公の福原遥の声が愛らしくすっかりファンです。主人公の父親は我が街、東大阪市でネジの製造会社を経営しており、経営危機で、新たなプロジェクトに臨む。金型を短納期で作らなければならない!知人に頼みこみ、なんとか短納期で、難しい金型をつくりあげ、危機を乗り越える場面があります。父役の高橋克典は「カ・ナ・ガ・タ」と、なんともぎこちない発音でした。想像するに金型はあまり認知されていないのでしょう。しかし、多くの視聴者が「産業のコメ」である金型を知ってもらえたことはとても嬉しいですね。一方、ものづくりにとってなくてはならない金型の認知アップはとても大事だと感じました。先日、大学の教授と一献傾ける機会があり、学生の就活について話を伺いました。先生曰く、今の学生は企業の事を良く知らない。超大手の企業名すら知らない学生が多い。一方、企業規模に関係なく過去に就業体験したことがある企業に就職する学生も少なからずいる。つまり、「金型」のプレゼンスを世の中に示していくことで、優秀な学生が金型業界に就職し、そして持続可能な業界になると思います。
日本の金型供給先の70%強である自動車産業を取り巻く環境は大変厳しい。ロシアのウクライナ侵攻、米中の覇権争いなど企業経営の業績の底抜け要因は多々あります。そのような中、当支部では、見学会やオンライン形式のセミナー(勉強会)を今年も実施し、顧客提供価値の拡大の一助になる企画を仕立てたいと思います。
PART6
素形材センター 会長 小脇 一朗氏「センター機能の活用を」
政府は、昨年10月、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」をとりまとめ、新しい資本主義の旗印の下、物価高・円安への対応、構造的な賃上げ、成長のための投資と改革、これらを重点分野とし、足元の物価高や世界経済の下振れリスクを乗り越え、社会課題の解決と持続的な成長の実現により日本経済を再生することとしております。
素形材産業においては、受注の大幅な減少に加えて、国内外のサプライチェーンの再構築など事業を取り巻く環境が大きく変化しています。更に、デジタルトランスフォーメーション(DX)、自動車のEV化をはじめとするカーボンニュートラルに向けた対応など、社会構造・産業構造を大きく変容する動きが一段と加速しております。
素形材産業は製造業の中でもエネルギー原単位が相対的に高く、また、我が国においては中小企業が多いことから、このような急激かつ甚大な影響が生じる環境変化に対応するための経営資源や情報が必ずしも十分ではありません。
当センターとしては、素形材産業の皆様が現下の厳しい経済状況を一刻も早く克服され、更に中長期の課題に取り組めますよう、素形材技術セミナーや技術研修講座、経営セミナーや研究会等を継続的に実施するなど、今後とも素形材産業の人材育成、普及啓発、交流促進などの各種事業を一層充実して、皆様を積極的にご支援して参る所存でありますので、是非とも当センターの機能を最大限に活用して頂きたいと願っております。
PART7
岐阜県金型工業組合 理事長 加藤 丈詞氏「企業は人なり」
コロナにも少し慣れ、穏やかに新しい年をお迎えになられたことと思います。
昨年当初に勃発した予想できない事案は、終息の見込みはみえずにその余波は、世界経済を揺るがす事態となっております。
円安の続伸、コロナ、働き方改革に人件費の値上げ、加えての人手不足と中小零細の多い金型企業には、解決しきれない問題が山積しております。
ものづくりには不可欠な「金型」ですが、自動車EV化により仕事を失われる所、矛先を自動車業界から他業界へ向ける所、付加価値を高めより高精度・高難度の金型づくりに向かう所、自社製品作りに向かう所等、大きな分岐点に立たされているような気がします。その渦中では世界中を飛び交う多くの情報をより精度高く有効に集め、冷静に判断できる「人づくり」も重要な要素だろうと思います。
企業は人なりと古より言われます。いかにAI技術が進化してもこれは変わらないのではないかと思うこの頃です。
PART8
日本金属プレス工業協会 会長 髙木 龍一氏「復活から成長の年へ」
2023年の干支は、「癸卯(みずのとう)」「癸(みずのと)」。これまでの努力が実を結び、勢いよく成長し、飛躍する年だとあります。これはまさに我が意を得たりと強く思いました。本年を境に流れが変わり、世界が明るい方向に成長できればと願っています。
当協会も昨年は、型管理に代表される下請け取引適正化の課題についても、経済産業省素形材産業室、そして素形材センターの力をお借りしながら進めて参り、下請け取引適正化ガイドラインの普及、会員企業のパートナーシップ宣言表明などの成果がありました。
本年は、資材の値上げや人件費の高騰などによるコスト増が表面化し、会員企業様の経営環境を改善する活動にも力を入れていかなければと考えています。他の素形材団体との連携し、取引先にもサプライチェーンにおける価格上昇分を負担頂けるよう理解活動強化が必要と考えています。
また、会員増加が大きなテーマであり、各地の工業会・協同組合との連携や未加入の企業・団体への参加要請活動など、積極的に取り組んで参りたいと考えています。
幸い今年も、4月 東京ビックサイトで、6月 ポートメッセなごやにおいて、金属プレス加工技術展2023が開催される予定です。出展企業の会員の皆様には「出展して良かった」という意見が多く寄せられています。この技術展に未加入の多くの同業会社に来て頂き、協会の活動などをPRできればと考えています。
PART9
日本ダイカスト協会 会長 浦上 彰氏「ダイカスト業界の更なる発展」
昨年は、4年ぶり22回目となる「2022日本ダイカスト会議・展示会」を開催することができました。3日間の来場者は1万9404人。展示会では、156社・団体様に出展頂くことができました。環境やサステナビリティを意識した展示が多く見られました。会議では、2件の特別講演が行われ、研究発表は27件、現場改善事例は7件が発表されました。今後のダイカスト業界の更なる発展の一助になることを期待しております。
さて昨年の世界経済は、先進国を中心に景況感が鈍化しました。日本でも、資源高の影響を受けましたが、新型コロナウイルス感染症の抑制と経済活動の両立が進んだことによって、緩やかな回復が続きました。
ダイカスト業界に目を向けると、22年1月~10月のダイカスト生産量は、前年同期間比3・0%減の74万2000トン。コロナ前の19年同期間との比較では、13.7%減となります。現時点では当初見込んでいた年間生産量100万トンには届かない見通しです。
また、22年9月に「素形材産業取引ガイドライン」が改定されました。日本ダイカスト協会におきましても、お取引先との共存共栄に向けた取組の浸透を推進すべく、サプライチェーン全体の適正な取引の実現に向け取り組んでまいります。
将来を見据えたCO2削減への取組については業界全体においても継続的な検討が必要な課題です。エネルギー政策や各産業のカーボンニュートラルへの取組を注視しながら、社会や産業の新たなニーズにお応えすべく邁進してまいります。
ダイカスト産業は、ものづくりの基盤を支える重要な産業です。時代やお客様のニーズに対応し、「ユーザーにとってかけがえのないビジネスパートナー」として安定した製品供給を果たしていく必要があります。
今後も様々な課題に取り組まれている企業活動をサポートするための情報収集と情報発信を協会活動の柱とし、日本のダイカスト産業の発展に引き続き貢献したいと考えております。
金型新聞 2023年1月10日
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