培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…
電極工程の自動化で9割のコスト削減に成功 キャノンモールド【特集:利益を生むDX】
DXの本質は利益を生み出すことにある。以降では、DXによって「売上げを上げて利益を生み出す」方法と「コストを下げて利益を生み出す」企業のそれぞれの取り組みを取材した。
電極の測定プログラム自動作成

精密プラスチック金型を手掛けるキヤノンモールドはデジタルを活用した自動化を進めている。昨年には、電極の測定プログラムを自動作成する仕組みを構築し、電極測定の関連コストを9割削減することに成功した。合わせて、電極の加工後から洗浄、測定までのプロセスを自動化した。
同社がデジタル強化に着手したのは2002年。当時、3Dを活用して携帯電話の金型で短納期を実現したインクス(現ソライズ)の影響を受け、3Dで設計から製造まで一気通貫で流す取り組みを開始。その後も加工プログラム作成を自動化するなど、デジタルを活かした効率化を進めてきた。

昨年注力した一つが、電極工程の自動化だ。キヤノン製品の金型を中心に手掛ける阿見事業所の電極本数は「平均して月3000~4000本くらい」(生産技術部坂井雄一部長)。このため、電極の測定プログラム作成や測定作業には相当な時間がかかっていた。
そこで、市販のCAD/CAMのカスタマイズ機能や独自開発のソフトを活用し、電極設計時に面を指定するだけで、測定プログラムを自動作成できる仕組みを構築した。坂井部長は「自動化と標準化はセット。ある形状では、どのポイントを測定すべきなのかなど標準化を細かく詰めた」と話す。結果的に「測定プログラム作成の大半は自動化でき、9割のコスト削減に成功した」という。
合わせて、加工した電極を洗浄し、計測するまでの一連のプロセスも自動化した。肝となったのは洗浄工程。加工後の電極を洗浄し、ロボットで3次元測定機に取り付け、自動測定する仕組みはできていたが「洗浄がうまくいかず、測定結果のバラツキが課題だった」。
そこで、装置メーカーと共同で超音波洗浄機を開発。測定のばらつきを、従来の約10分の1程度の数ミクロンに抑えることに成功した。こうして、しきい値内に収まったバラつきは、データで管理し、放電加工機で補正をかけ、放電工程全体で効率化につなげている。
坂井部長は「電極工程の自動化はある程度完成したと思う。今後は電極を放電加工機に取り付ける搬送の自動化や、これまで収集したデータを活かし、異常診断など更なる効率化を進めたい」。
会社概要
- 本社: 茨城県笠間市柏井812-2
- 代表者:斎藤憲久社長
- 設立: 1972年
- 従業員: 517人
- 事業内容:精密プラスチック金型の設計・製作。
金型新聞 2023年2月10日
関連記事
製造業の競争力向上を支援 自動車骨格部品のアルミ押出金型などを手掛けるエフアンドエムが3年前から始めたのが「5軸機導入コンサルティングサービス」だ。長年培った経験やノウハウを生かし、導入を検討する金型や部品メーカーに5軸…
Youtubeなど情報発信 トグロンハードドリルなど高硬度材穴加工用工具で有名なイワタツール(名古屋市守山区、052−739-1090)は新型コロナウイルスの影響でユーザーへの技術支援が難しくなったことに対し、タブレッ…
勘や経験など属人化を解消 モータコア用スロットパンチや研削加工などを手掛けるフォーバンド(福岡県直方市)は見積作成や図面管理業務の効率化を図るため、テクノアが展開する『AI類似図面検索』を導入。簡単に類似図面の検索や図面…
自動車業界の脱炭素化や、安全性向上に欠かせない高強度鋼板による軽量化。近年では980Mpa超のウルトラハイテン(超高張力鋼板)や、2・0GPa級のホットスタンプ材など高強度化が加速している。こうした鋼板の進化で、金型づく…