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オオイテック 拡大する需要に対応し、ハイテン材向け金型に特化【Innovation〜革新に挑む〜vol.5】
自動車の骨格部品のプレス金型を手掛けるオオイテック。特に高張力鋼板(ハイテン材)向け金型を得意とし、豊富な実績を持つ。軽量化ニーズによってハイテン材の需要が増加する中、生産性のさらなる向上を図り、ビジネスの拡大を狙う。MOLDINO(モルディノ)の工具を用いて、高硬度鋼加工の効率化や金型加工の自動化に取り組む同社を取材した。
シミュレーション技術に強み
オオイテックは1963年に大井鉄工所として設立し、91年に現在の社名に変更した。加圧能力1600tのメカプレス機を保有し、主にサイドメンバーやサイドシル、レールアウターなどといった自動車の骨格部品向けプレス金型を手掛けている。現在は月に平均約25型を生産する。
同社が得意とするのはハイテン材向け金型。最大1.5Gpa級の超ハイテン材向け金型を手掛け、自動車メーカー各社の多くの車種に採用されている。ハイテン材はその強度の高さから成形加工が難しく、金型にも高度な技術力が要求される。特にしわ・割れ・スプリングバックなどといった加工トラブルの予測が難しく、金型製作には多くの時間を要していた。
しかし同社では、成形解析などのシミュレーション技術をいち早く取り入れることで対応。多くの時間をかけていた金型の修正回数を削減し、ハイテン材向け金型でも短納期を推進している。
高硬度鋼を高能率加工
また、ハイテン材は金型自体にも高い強度が求められるため、金型材の高硬度化が欠かせない。同社でも「SKD11」など硬度の高い焼き入れ鋼を多用している。一方で、こうした高硬度鋼は加工難度も高く、加工現場での課題は少なくなかった。特に問題となっていたのが工具摩耗だ。
「ある加工では、工具摩耗が激しいため、5〜6回も加工パスを走らせていた。この回数をなんとか減らしたいと考え、試行錯誤していた」(機械課課長の竹内進一氏)。そこで導入したのが、MOLDINOの刃先交換式工具「アルファボールプレシジョンF(ABPF)」だ。中でも刃先強度の高い刃形を採用した「SHタイプ」を使用する。
この工具の導入によって、従来に比べて工具寿命が1.5倍以上に向上し、加工回数は2〜3回まで削減することができたという。「加工時間を大幅に短縮することができ、生産性の向上につながっている」(竹内氏)。
荒加工の無人化を実現
同社ではその他の工程でもMOLDINOの工具を使用する。「刃先交換式工具の半分以上がMOLDINOだ」(機械課主任の井田敦氏)。その中にはカタログ品だけでなく、特注のオリジナル工具も含まれる。
荒加工で使用する工具径50㎜の刃先交換式工具がその一つ。インサートのエッジ部にR形状を施し、強度を上げたことで、耐欠損性を高めた。「エッジ部がシャープだと、欠けが発生しやすく、工具交換のために加工時に人が張り付いていた。この工具によって無人化が可能になった」(製造部部長の深掘元広氏)。
自動化で鋼材加工を内製化
同社が近年注力しているのが自動化だ。2021年に約2億円をかけて、横形マシニングセンタ(MC)や多関節ロボットなどを組み合わせた全自動加工システムを導入。ワークストッカや洗浄機、段取り装置なども組み込み、素材投入から取り出しまでの完全自動化を実現した。どんなサイズ・形状にも対応し、70×70×45㎜から320×320×200㎜まで加工可能。ストッカには最大60個のワークを搭載することができる。
この自動化システムの導入によって、これまで外注していた鋼材加工を内製化。外注費を抑えることができたという。今後は同時5軸制御MCを導入し、形状加工の同時加工を可能としたシステムへと増強する考え。これによって、鋼材加工から鋳物加工へと直列で流れている工程を同時並行で進めることが可能になる。「工期を半減させることができ、大幅な納期短縮につながる」(深掘氏)。
MOLDINOの工具は、この自動化システムでも重宝されている。「ねじ切り工具ではMOLDNOの『エポックスレッドミル』が抜群の性能を発揮している。チッピングが起きにくく、安定的に加工することができる」(NC技術課主任の庭野健二氏)。
次代を見据え、技術向上
「今後、次世代自動車の動きに対応するために、情報のアンテナを高く張り続けていかないといけない」(深掘氏)。同社では社内情報の見える化を始めとしたデジタル変革(DX)や、金型設計の自動化を推進する他、金属AM(付加製造)技術の活用などに取り組み、技術領域や生産能力の拡大を目指している。
金型加工でも同時5軸加工や新たな被削材への加工などに取り組む考え。MOLDINOとは工具だけでなく、工法改善を含めた技術交流も行っているという。特に同社が提唱する加工コンセプト「Hi‐Pre²(ハイプレツー)」の導入を進め、荒加工から高精度を追求し、磨き・調整まで含めたトータル工程での最適化を目指している。「今後もより関係を深め、さらなる技術力の向上につなげたい」(深掘氏)。
- 本社: 群馬県太田市西矢島町84-1
- 電話:0276・38・2200
- 代表者:早川みちる氏
- 創業:1963年
- 従業員: 75人
- 事業内容:プレス用金型
金型新聞 2023年9月10日
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