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ハマダ工商 AMで新たなものづくり【金型の底力】
樹脂やプレス金型の製作から少量の成形まで手掛けるハマダ工商は今年2月、事業再構築補助金を活用し、金属3Dプリンタを導入した。水管を自由に設計した冷却効果の高い金型で、反りを抑えた防犯レンズカバーの成形品を提供するのが狙いだ。「今後は金属3Dプリンタでしかできないものを作りたい」と話す、浜崎幸男社長に同社の取り組みを取材した。

同社は1982年、金型設計の受託メーカーとして浜崎社長が創業した。浜崎社長は元々、部品メーカーで設備や金型の設計業務を担当。「当時の設計はドラフターによる手書きで、図面の不具合を加工でカバーしていた時代。設計が早く、図面の修正や成形まで手配できたことから、色んなユーザーから指名されていた」(浜崎社長)。
さらに、勤務先の社長から「加工を学べ」と言われ、CAM(当時は自動プロ)を習得。「NCが一般的ではない時代。職人にCAMの加工を見せた際『もう我々の時代じゃないなあ』とつぶやいたのが忘れられない」という。それ以上に感じたのが「誰もしていないことは儲かる」ということ。

こうした経験から、創業後は、設計の受託にとどまらず、ZAS型、ゴム、樹脂、プレスと相次いで金型製作に着手。だが「金型も事業の一つに過ぎない。儲けるには他社がしないことをする必要がある」との考えから、自社ブランド製品に参入。雨や風などに反応して自動で窓が開閉する「オートクローザー」や、ヘリカルギア・ウォームギア分割製法(特許取得済)を開発した。
そんな浜崎社長が金属3Dプリンタの有用性を検討し始めたのは7年ほど前。CAMを学んだ際に「他社にできないものづくりは儲かる」という原体験があったのだろう。また、「必要な材料しか使わないので省エネのものづくりができる。SDGs(持続可能な成長目標)という時代の流れにも合致する」(浜崎社長)。

そして今年2月、4度目となる事業再構築補助金を活用し、ソディックの金属3Dプリンタ「OPM250L」を導入した。狙いは樹脂金型に自由水管を造形し、ヒケや反りを抑えた防犯レンズカーの成形品を作ること。「防犯レンズの性能は上がっていても、それを最大限生かすために、カバーの透過度を高める必要がある。ヒケや反りを抑えるには自由水管が造形できる3Dプリンタによる金型が必要」(樹脂部・金属部の安江高志部長)とし、すでに試作品を製作した(写真)。
ただ、金属3Dプリンタの活用は、防犯レンズカバーだけにとどめるつもりはなく、多様な領域に展開していく考えだ。浜崎社長はすでにいくつかの用途を描いている。まずは肉厚の偏った成形品向けの金型。「自由な冷却が造形できるのでこれまで造形しづらかった部品を作ることができる」。あとはアンダーカットのある部品。「『どうやって作ったのか』と思わせる、3Dプリンタでしかできない部品を作りたい」という。
CAMの時のように、誰もできない加工は他社にない武器になるだけでなく、「価値を作る手段にもなり得る」と話す浜崎社長。70歳を迎え「もう引退したい」と笑うが、挑戦する意欲はまだまだ衰えていない。

会社の自己評価シート

会社概要
- 本社: 愛知県岡崎市天白町清水2-1
- 電話: 0564・54・0552
- 代表者: 浜崎幸男.社長
- 創立: 1982年
- 従業員: 30人
- 事業内容: 樹脂、プレス金型、試作金型の設計製造。少量の樹脂成形、機械加工による試作品成形、自社製品の製作など。
金型新聞 2023年8月10日
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