金型は量産の道具 理解するマスターが必要人材発掘が経営者の仕事 「金型は量産のための道具である」と長年言い続けています。金型というものの本質がそこにあると思うからです。お客様は金型が欲しいわけじゃない。金型を使って効率…
金型はワクワクする仕事 山中雅仁氏(日本金型工業会会長)【この人に聞く】
今年6月の日本金型工業会の総会で、3期6年会長を務めた小出悟氏(小出製作所社長)に代わり、新たに会長に就任した山中雅仁氏(ヤマナカゴーキン社長)。「金型づくりはもっとワクワクできる魅力的な仕事のはず。ワクワクするために儲けられる業界にしなければならない」と話す。「取引環境の改善」や「データを共有するなどの協調領域の拡大」、「広報活動の強化」、「営業力の強化のための支援」に取り組みたいという。同氏に今後抱負や取り組みなどを聞いた。

1994年オハイオ州立大学機械工学科修士課程修了。89年ヤマナカゴーキン入社。96年常務取締役、2010年代表取締役社長。1965年生まれ、58歳。
儲けられる業界に
就任のあいさつで「儲かる業界にしたい」と強調しました。
私の持論として、仕事はワクワクしないとダメだと思っています。そして、本来金型業界はワクワクできる魅力ある業種のはずです。なぜなら、社会課題を解決できるツールを提供できる存在だからです。例えば環境問題で注目を集める生分解性プラスチック。これを採用した製品を生み出すには高度な金型技術は欠かせません。社会課題を解決できる業界ってワクワクしませんか。
もっとワクワクするには、キチンと儲けなければいけません。面白いことをするには、人材も設備も重要ですし、そのために投資できるだけの資本を稼ぐ必要があります。
ただ、我々自身も長年の考え方を改める必要があります。かつてのように、金型メーカーは金型を作って終わりの時代ではありません。ユーザーのベストパートナーとなって社会の課題解決策を提示できる存在だと自覚すべきです。ユーザー業界にも、そうした認識を持ってもらうために、もっと情報や存在感を発信していく必要があります。
具体的な取り組みは。
一つは現在追い風となっている「取引環境の改善の徹底」です。歴代の会長が訴えてきてくれたこともあり、改善は進んでいます。この流れを加速させるためにも継続して訴えていきます。
もう一つが「協調領域の拡大」です。具体的にはこれからですが、業界のさまざまなデータを共有できないかと考えています。この数年で人工知能(AI)が飛躍的に進化し、金型づくりを大きく変える可能性を秘めています。しかし、個社でAI活用といってもデータ量も少なく難しい。
各社提供できる範囲でさまざまな金型づくりのデータを共有し、AIを活用して、金型づくりを効率化できないかと思っています。会員企業はそれを自由に活用できるようにしたいと思います。
他には。
「広報活動の強化」も進めます。役員改選で理事は若返りましたし、女性理事も誕生しました。こうした若い力を借りながら、ユーザー業界に社会課題を解決すベストパートーであることを訴えていきたいと思います。
営業の強化も重要だと訴えています。
金型の7割は自動車向けだと言われており、自動車づくりの変化は大きく影響します。当社が手掛ける冷間鍛造型も同じく、電動車の登場により、大きな変化の中にあり、儲けるのが難しくなっています。
それでも利益を出すには、当社の課題でもありますが、営業の強化は欠かせません。シンプルにみれば、金型メーカーの稼ぐ力=技術開発力×営業力です。金型業界は長年投資してきたこともあり、技術開発力が高い会社は多い。一方、取引先が固定化されている企業が多いため、総じて営業力は弱い。各社立場や手法は異なると思いますが、営業プロセスの見える化や営業体制の見直しが重要だと思います。営業強化の参考となるような講習会や勉強会を開きたいと思います。
金型メーカーに一言。
大きな変革期にある今、自社を磨き、競争することは当然ですが、個社では対応できないことも多くなっており、協調することも必要です。日本金型工業会は同業者の団体なので、協調できる領域はたくさんあるはずです。また、インターモールドに無料で出展できることも大きなメリットです。ワクワクする業界にするために、ぜひとも参加して欲しいと思います。
金型新聞 2024年8月10日
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