「金型メーカーが情報管理をするのは、自社の知的財産を守るためと顧客情報を守るための2つの意味で重要だ」と話すのは、飲料や化粧品などのプラスチック金型を手掛ける打田製作所の打田尚道社長。同社は15年ほど前に社内で情報シス…
タムロン X線CTで製品データ補正、金型設計を効率化【金型テクノラボ】
射出成形金型の製作は、試作トライ→測定→補正指示→部品加工→試作トライを繰り返す。要求精度は様々だが、量産で寸法変化が少ない高品質かつ短納期での金型製作が求められる。これらの要求事項を満たすためX線CTを活用した金型補正技術を確立したので紹介する。
作業者による差異が出にくいX線CT
計測用X線CTシステム:MCT225(ニコン)導入後、CT撮影データを用いた実測値測定の検討を開始した。従来の測定方法では、作業者による差異、測定箇所によって変わる測定方法(三次元、真円度、ゲージなど)、測定治具を都度製作する必要があるなど効率化を進めるうえでの課題はいくつかあった。

一方でCT撮影は、非接触測定のため基本的に治具は不要で、置いて撮影し、撮影データをモデルと自動フィッティングするだけなので作業者による差異も出にくい。他の非接触測定方法として3Dスキャナーがあるが、複雑な形状や裏側の形状などを一度に測定できない。CTではそのような制約はない。
補正の度に撮影データを入れ替えるだけで全測定・エクセル出力
このような利点を最大限生かすため2021年頃から3D計測ソフトウェアのPolyWorks(PolyWorks Japan)を導入した。CADモデルと撮影データの比較・測定に特化し、予め測定箇所をCAD上で指定しておくことで補正の度に撮影データを入れ替えるだけで全測定・エクセル出力が完了する。
常にカラーマップ表示され、指定測定箇所以外にもCADモデルとの差異を可視化できるので、イレギュラーな不具合の早期発見が可能である。モデルをクリックすることにより、その箇所の差異が数値表示されるため、測定者でなくとも容易に計測が可能である。設計者に撮影データを渡すことで指定測定箇所以外の差異を確認でき、後の評価に役立てることができる。
設計値に近い完成度、補正作業を効率化
2022年からはVGSTUDIO MAXのジオメトリ補正機能を使い金型補正を開始した。従来CAD上で一つ一つの点を計算した補正量分を移動させて繋ぎ合わせ、結合面を作成しモデルに反映していたが、精度向上を理由に制御点数を増やすことはモデリング工数の増加となるため単純に増やすわけにもいかない。
しかし、ジオメトリ補正ではその要求に全て応えられる。CT撮影データとCADモデルとの比較を行い指定箇所が内部計算され補正用のサーフェスデータを作成しモデルに反映される。面全体を数百点で評価できるため、複雑な形状や面積が広い面でも精度よく容易に補正が可能で補正回数と工数を削減できる。
最大の特徴は従来手法では測定・補正において測定基準の面・径・角度を使用することが一般的で、その基準に対して他の寸法を補正するため成形品全体の変形に対する補正は困難であり、追加測定や複雑な計算を必要としていた。
これに対しCTでは撮影データとCADモデル全体をベストフィットし、基準面を含むすべての補正部を同時に補正することが可能になる。これにより初回成形時に全体や基準箇所が大きく変形した場合であっても、次回補正のためにまずその箇所だけを補正するといった工程が無くなり、より設計値に近い完成度、補正作業の効率化を実現した。
補正作業の5割以上の工数を削減
現在はCT撮影からモデル出力までの操作をマクロにて自動化し、夜間・休日の自動撮影を可能としている。また、ジオメトリ補正だけでは対応が困難な径・穴・ボスの直径や中心位置などの補正はCATIAやExcel、PolyWorksのマクロ作成によって補完することでほぼ全ての形状に対する補正手法を確立した。これにより初回品での測定者による寸法測定は不要となり、金型設計のモデリング工数など合わせると補正作業全体の5割以上の大幅な工数削減を実現した。今後は、より一層の受注金型増加のため多台数撮影などに取り組んでいく。
タムロン
- 執筆者:モールドテクノセンター 設計管理部 設計管理課 係長 萩原 翔氏
- 住所:埼玉県さいたま市見沼区蓮沼1385
- 電話番号:048・684・9253
金型新聞 2024年12月10日
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