エンジンやステアリング部品など鋳造800~1250tクラス(最大2500tまで)を得意とするダイカスト金型メーカーの寿原テクノスはダイカストの課題を解決する新たな金型技術を次々に発表し、ダイカスト製品の高品質化やサイクル…
【特集:新春金型座談会2026】日本の金型メーカーが勝ち残るカギは何か(Part1)
自動車の新車開発の延期で需要回復の先行きが見通せない。人手不足が深刻化し技能伝承がままならない。こんな不安な時代に金型メーカーが勝ち残るカギは何か。「設計力と企画力」、「マーケティングとプロダクトをフィットさせる」、「市場拡大」。逆境でも事業を伸ばす金型経営者3氏が挙げたカギを考察し、勝ち残る戦略を探ってもらった。

フィルムやシートの押出成形金型「Tダイ」と押出機やロール成形機を手掛け一気通貫で顧客に提案する。2017年に会社設立し従業員20人。同業が国内に少なく価格を自由に決められるのが強み。誰もやらないことをやるのが成長のカギと考え、世界初の製品を毎年1つ生み出す。自身は工作機械メーカー池貝の出身。Tダイや機械設計、機械加工など、さまざまな技術を習得した後に独立。会社で手掛ける全ての技術が頭に入っており、現在も技術を磨くことに情熱を注ぐ。

自動車のエンジンやミッション、足回り部品の設計や鍛造金型、量産を手掛ける。中国やタイの工場では日本で造った金型で部品を量産し海外の取引先に納める。社内用に営業支援ソフトを開発、昨年外販も始めた。創業1961年。従業員数451人(海外含む)。自身は89年に入社、2010年社長就任。24年から日本金型工業会の会長を務める。25年には日本の金型を持続可能な産業にするため「価格決定力」、「市場拡大」、「魅力度」、「商品企画」の向上を目指すワーキンググループを立ち上げた。

カメラや自動車、分析器などに使用する超精密非球面ガラスレンズ及びその金型開発、レンズ金型用CVD-SiC材料を手掛ける。2001年に創業し従業員28人の新興企業だが、ニッチな超精密光学レンズや金型開発では世界屈指の技術を持つ。自身はコンビニチェーンセキュリティ会社の営業、IT企業の管理職を経て、現会長の坂井徹氏に誘われ入社、2024年社長に。「プロダクトマーケットフィット」に基づく市場開拓や人材採用で、競争力を最大化し事業成長を目指す。
横田社長が考える勝ち残るカギ 「設計力と企画力」
司会 金型メーカーが勝ち残るカギに横田社長(アクスモールディング)は「設計力と企画力」を挙げました。理由は何ですか。
横田 ビジネスチャンスを最大限に広げるために必要なことは何か。それは誰も手掛けたことのない金型や新たなニーズに応える金型を開発することです。オンリーワンの製品や技術を開発することが競争力を高めると思っています。
当社はTダイと呼ばれる押出成形金型と、その金型による押出成形機械の設計開発を手掛けています。「設計力と企画力」を勝ち残るカギに選んだのはそれが新しい金型や機械の開発で極めて重要なファクターだからです。
司会 寡聞ですいません…。Tダイとはどのような金型ですか。
横田 フィルムやシートの押出成形金型です。溶けた樹脂を様々な幅(50~5000㎜)に押し出し、ロールで延伸しカットします。フィルムやシートは食品や薬品、燃料電池、半導体など様々な分野で使われます。
当社はTダイと押出成形機やロール成形機、膜厚計、検査機、巻取機などをトータルで開発します。大きなものはそれら全てで価格が3~4億円します。
高度な技術と希少性
司会 創業は2017年。日本の金型生産はピーク(経済センサス旧工業統計:1991年1兆9575億円)と比べ大きく減っていました(2017年:1兆5257億円で22%減)。Tダイで事業成長することに確信があったのですか。
横田 Tダイを手掛ける会社は少なく、設計開発できる技術者は国内でおそらく数人しかいません。希少性が高いTダイの設計技術があれば事業を伸ばせると思っていました。商談を序盤から設計図をもとに進めていくこともあり、同業との相見積もりはほぼ無いし、適正な利益を確保できています。
私は小学生の頃から40歳で起業したいと考えてきました。そのための知識と経験、技術を身につけるために入社した池貝では様々な工作機械や産業機械の設計、開発、製造を経験しました。そのなかで出会ったのがTダイと成形機でした。習得した技術と希少性にビジネスチャンスを感じました。
司会 今後どれくらい事業を伸ばせると考えていますか。
横田 とはいえTダイはニッチなので、国内市場は10億円程度しかない。2024年度の売上高6億円の大半が国内向けですので、これからの成長の伸び代が少ない。一方、海外市場は国内の10倍の100億円あります。さらに事業を伸ばすために海外市場開拓が必要と感じています。
司会 例えば。
横田 特に中国市場に大きく注目しています。中国の同業他社は当社の何倍もの業績をあげている。「設計力と企画力」で負けているとは思えない。AI(人工知能)の電線や光ファイバーなど新たな仕事が次々と出てくる。本格的に市場開拓すれば年間売上高を30億円くらいまで伸ばせると思います。
Part2に続く
金型しんぶん2026年1月10日号
関連記事
PART1:電動化というチャンス、新たな需要が生まれるPART2:この10年を振り返るPART3:新潮流に挑むチャレンジャーたちPART4:記者の目 PART1 電動化というチャンス、新たな需要が生まれる 電子部品、モ…
成形技術の進化で変わる金型 構造部品など増える 電気自動車(EV)が金型づくりにも大きな影響を及ぼすことは間違いない。とりわけ、エンジンがなくなることでダイカスト型の減少を懸念する声も多い。元リョービで、日本ダイカスト…
2020年の金型業界はコロナ禍に翻弄された年になった。自動車産業を始めとしたユーザーの生産減や開発遅延などにより、金型需要は減少し、景況は悪化した。一方で、これまでと同じような活動ができないことで、ビデオ会議システムや…
求められるスコープ3への対応 2050年の温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(CN)」の実現を目指す動きが活発化している。これまで直接的あるいは間接的なCO2排出量を示す「スコープ1・2』への対応に加…


