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【特集:新春金型座談会2026】日本の金型メーカーが勝ち残るカギは何か(Part3)

井口社長が考える勝ち残るカギ 「マーケットとプロダクトをフィット」

金型の価値にマッチする市場探す

司会 では井口社長が挙げたカギ、「マーケットとプロダクトをフィットさせる」はどういう意味でしょうか?

井口 マーケティング理論のひとつ「プロダクトマーケットフィット」(PMF)で、「商品(金型)が顧客の課題を解決し適切な市場で広く受け入れられている状態にする」ということです。

当社はニッチ分野の超精密なレンズの金型を手掛けています。自動車の自動運転やドローンの飛行制御のカメラやセンサに使われる高精度レンズの金型で、寸法精度0・1μm以下、表面荒さはナノレベルの分野を得意としています。なかには当社を含め世界で数社しかつくれない金型もあります。

ところが、ときに価値に合わない価格を求められることがある。プロダクトとマーケットが一致していない。そこで狙うマーケットを方向転換して探す。それによりマーケットとプロダクトの乖離を減らすようにしています。

司会 具体的には。

井口 技術や営業の責任者が取引先から得た市場のニーズをもとに開拓する市場を選択します。その市場に最も効果的な当社の技術をウェブなどの情報媒体や展示会で発信していく。すると多くの場合、問い合わせがあります。

例えば、超精密な光学部品には海外から調達しているものがあり、国内調達したいというニーズがあります。そのようなニーズを見つけてアプローチすれば新たな仕事を獲得できます。

司会 しかし最先端の開発技術を求められることもありますよね?背伸びしないといけないことはないですか。

井口 その通りです。当社は創業してまだ25年で歴史が浅く、年間売上高数億円、社員28人の小さな会社です。例えば金型開発に1億円もする加工機を購入しないといけないこともあります。

さらに専門外の技術を要する場合やその事業に協力してくれる会社を探す必要がある場合もあります。狙うマーケットと当社の戦力とのギャップが大きいことがあります。

技術駆使したサンプルで新規開拓

過去に例が無い直径40㎜超のカルコゲナイドガラスレンズ(下)とその金型(上)(東海エンジニアリングサービス)

そこで当社が取り組むのが、今ある技術や設備でそれに近しいレンズや金型のサンプルをつくり、プレゼンテーションをする。そうすることで当社の実力の一端を理解してもらうことができる。求められる金型の実現をイメージしてもらうことで受注につなげています。

司会 事業の進め方が極めてロジカルですね。

井口 これは役員や社員と情報を交換、分析して決めた成長戦略に基づき進めていることです。2年前社長に就任する際将来の目標を決めました。

山中 え!まだ就任2年目ですか。それまでは金型の開発や営業を?

井口 いえ。実は金型の設計や加工、組み立てなどの経験は無いんです。入社したのは4年前で、それまではコンビニの社員、セキュリティ会社の営業、IT企業の管理職をしていました。ですからレンズの金型の専門的な技術はわからない。

優秀な人を採用する→いまの技術者が次世代に技術を継承する→切磋琢磨し高め会える技術のチームを作る→PMFでその金型技術を最も発揮できる市場で取引を増やす。当社はこのサイクルを念頭に事業成長に挑戦しており、私の役割はそのための必要なパーツを集めることと捉えています。

金型がライフワークの技術者

そのうえで私が注力していることのひとつが優秀な技術者の採用です。当社が欲しいのは、例えば「研究開発や関連する日常業務を苦ともせずライフワークとして仕事に向き合う」ような人です。

当社の競争力の源は超精密で未開拓分野の技術の金型開発にあります。研究領域に制限がある縦割りの組織に不満がある。研究に関する全てに携わり、成功させたい。企業規模や場所にこだわらない。そういう人が欲しい。ただ、そういう人を探すのはなかなか難しい。

そこで人材採用でもPMFの論理で活動しています。そうした人が閲覧する求人媒体で、彼らに響くような募集をかける。ユニークな事業、目指す未来、技術者が集まり切磋琢磨できる環境など当社の魅力をしっかりと伝えます。

そうすると100人に2~3人の割合でそういう条件を求める人が応募してくれる。「当社が欲しい人材」と「働きたい環境」のミスマッチがほぼ無く、採用活動を展開できます。

社長は社員・会社の成長導くサポーター

司会 とはいえ専門的でニッチ分野の金型。経験や知識がないと経営で困ることはないですか?

井口 それはありません。私の仕事はこの会社が成長するのを強くサポートすることです。取り組むべき課題を社員と日々話し、市場分析しながら目標に挑戦する。その主役である社員が最大限に活躍できるように方針決定と日々の運用の両面からサポートする。

当社はまだまだ事業を成長できると思っています。そう遠くない将来に年間売上高を今の約1・4倍に伸ばしたいです。

座談会参加者。(右から)東海エンジニアリングサービス・井口祐介社長、ヤマナカゴーキン・山中雅仁社長、アクスモールディング・横田新一郎社長

金型しんぶん2026年1月10日号

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