金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JUNE

23

新聞購読のお申込み

「5軸加工の匠」 エフアンドエム

デジタル技術の進化で、相次いで登場する新技術。次世代の匠はそれらの技術を金型づくりにどのように活かしているのか。また、それら能力を習得するには、どのようなスキルや育成が必要なのか。本特集では、様々ある新技術の中でも、次世代の金型づくりで注目されている「自動化」、「金属3Dプリンタ」、「5軸加工」で、匠の技を持つ金型メーカーにその活用術やノウハウを聞いた。

エフアンドエム 「機械の個性見極め、補正技術駆使」

自動車骨格部品のアルミ押出金型を手掛けるエフアンドエムは、加工設備の主力が5軸機だ。8台の5軸機が生産効率改善やコストダウンのエンジンとして活躍。軸を傾けて加工する特性を活かし性能の高い金型づくりにも取り組む。いかにして使いこなしているのか、それに必要なスキルや心掛けは。導入初期から運用に携わり技術開発を推進する「5軸の匠」、古市和人生技開発部長に聞いた。

設計に広がり、金型の性能向上 〜旋削や積層造形できる5軸も〜

当社では現在、新旧8台の5軸機が金型加工の主力として活躍しています。初めに導入したのは今から18年前。当時、国内では5軸のメリットが広く知られておらず、運用する金型メーカーは極めて少数でした。

そんな中なぜ導入したのか。それは当社の代表(市井宏行社長)が「未来を拓く可能性のある技術」と感じたからです。もともとチャレンジを生きがいにし固定概念にとらわれない。「先駆けて使いこなせば競争力になる」と感じたようです。

5軸機を運用するうえで大切なことの一つは「機械のクセ(個性)を理解すること」。これはほかの工作機械も同様ですが、同じ機種でも熱膨張などによる各軸のズレが異なる。このクセが原因で、同じプログラムなのに加工品質に違いが出る。

5軸機は軸が5つあるので、その違いの要因が複雑になる。そのため5軸は難しい、狙った加工精度を出しにくいと感じてしまうのです。それを解消するためにまずクセをしっかりと理解することです。

それからそのクセによるズレを補正すること。予めズレを考慮し各軸の動きを補正する。加工したワークは極力機上で測定して再加工し、加工のズレを補正する。機械を止めて段取り替えした後は十分に暖機運転して熱変位を補正する。クセの熟知+補正で5軸機はイメージ通りに動かせます。

そして5つの軸を使わなければならないと思わないこと。傾斜・回転軸で位置決めして加工してもいいし、3軸で加工してもいい。もちろん同時5軸でも。「軸が5つある機械」と捉え、ワークに合わせて最適な方法を選択するのが良いと思います。

当社では「5軸を使わないとできない加工」は全ての加工の約20~30%。同時5軸にこだわった時期もありましたが早々にその考えを捨てました。3軸としても5軸としても使える。そう考えることで加工の幅が広がり、生産性が高まりました。

5軸機を導入して良かったのは、「5軸を使いこなせているのなら」と仕事が増えたこと。仕事が増えるから課題解決の方法を考え、加工技術も向上する。その善循環ができ、そこから派生して新しい技術が生まれました。

5軸でしかできない構造の金型を作れるようにもなりました。例えば冷却水路。3軸では制限される形状でも5軸なら加工できる。それによって金型の寿命が長くなり、取引先に喜ばれました。

5軸機は使い方を理解すれば金型の品質も生産性も性能も良くすることができる。これからも5軸の加工技術開発にはまだまだ挑戦していきます。

いま注目しているのは旋削や金属積層が同時にできる5軸。これらを使いこなすことができれば、展開の幅がさらに広がるかもしれません。

金型新聞 2022年2月10日

関連記事

記者の目 ‐Reporter`s eye‐

記者の目 ‐Reporter`s eye‐

今回の“コロナ禍”で見えてきたのは、変化の必要性だ。受注や生産活動が制限される中、デデジタル化やITツールの活用など以前から指摘されていた課題が改めて浮き彫りになった。都内のある金型メーカーは、「変革の契機となるのは間違…

既存設備で増産に成功した南信精機製作所のAM活用術

金型や部品の造形で金属AMを活用する際、必ず指摘されるのがコスト。装置の価格はもとより、粉末材料が高価なことに加え、設計や解析などに多くの工数が発生するため、どうしても製造コストは高くなる。一方で、高い冷却効果による生産…

自動車金型、2024年秋に需要回復か【特集:自動車金型の未来】

自動車の金型が試練の時を迎えている。半導体不足に端を発する新車開発の相次ぐ延期で受注が減少している。一方、電気自動車(EV)シフトが技術と産業構造に変革を迫る。生き残るカギは変化のうねりを見極め培ったノウハウや強みを生か…

KOEI TOOL SKD61相当材の冷却水管【特集:金型づくりで広がる金属AM活用】

ダイカスト市場に参入 「始まりはプラスチック成形向けの3D冷却水管だった」と話すのはKOEI TOOL(旧ケイプラスモールドジャパン、今年4月に社名変更)のAM課の石井陽部長。同社は日本、シンガポール、マレーシア、ベトナ…

EV化が進む中、金型メーカーはどう動くか?【特集:自動車の電動化とダイカスト】

自動車の電動化はダイカスト業界に大きな変化をもたらし始めている。バッテリーEVが増えるとエンジン関連の金型の減少は必至だ。一方で、バッテリーケースのアルミ化や、シャシーなどを一体造形する「メガキャスト」などで金型の大型化…

関連サイト