日本金型工業厚生年金基金(上田勝弘理事長、以下金型基金)が今秋に制度移行を進める狙いは、現制度で抱える課題を解決するとともに、退職金の年金化など福利厚生の持続可能な制度の構築にある。以降2号にわたり、今の大きな3つの課…
金型メーカーが考える次世代の匠とは?
金型メーカーアンケート
次世代の匠に必要な技は?
熟練の金型職人が持つ「匠の技」を機械に行わせたり数値化したりする取り組みは広がり続けている。新技術が登場する中、「匠」に求められる能力に変化はあるのか。それを探るべく金型メーカーに「次世代に匠の必要な技」についてアンケートを実施した。構想力など普遍的な能力が必要とされる一方、IoTや解析などデジタル技術を駆使し、工場全体を取りまとめる能力も求められていることが分かった。
デジタル駆使する人材
Q1 匠に求められる技に変化はあるか。
約85%の企業が「変化がある」と回答した。「変化がない」とした理由の中に「匠が駆使する技術に変化があったとしても匠に求められる考え方など本質は変わらない」とする回答もあり多くの企業が「匠の技」そのものの変化を感じている。
Q2 これまでの匠に求められていた技は何か(複数回答可)。
「変化あり」という回答した人に、「これまでの匠」で必要だった能力について聞いた。最も多かったのは「金型の構想を考える力」。工程全体をマネジメントする能力が必要と感じている。次いで「金型組み付け技術」、「磨き」、「設計」。アナログな技で機械の精度をフォローする技能者を匠とする回答が多かった。
Q3 次世代の匠に求められる技は何か(複数回答可)。
トップは「これまでの匠」の質問と同じく「金型の構想を考える力」。時代やツールがどれだけ変化しても、構想力は金型づくりで普遍的に求められる能力なのが分かる。ただ「最新の技術との組み合わせが重要」、「仮想技術を使いこなす」という声もあり、今後は新技術を駆使する構想力が必要とされている。
次は「IoTなどのネットワーク技術」と「ロボットなど自動化技術」。これらはセットで挙げる回答が多く見られ、「労働力不足の改善と低コスト実現をするため」、「金型製作の省人化、24時間稼働のシステムアップできるプロ」などがその理由。最新技術を使いこなし工場全体を管理し省人化や自動化、生産性向上に寄与できる人材を匠とする傾向が強い。
「シミュレーション技術」という回答も。「精度の高い製品を求められており金型パーツもシビアに測定する必要がある」などが理由で、総じてデジタル技術を駆使できる人材を「これからの匠」とする声が多い。
Q4 「次世代の匠」育成で取り組んでいることはあるか。
「ある」との回答が約7割。「ない」とした回答でも「(マンパワー不足などから)取りかかれない」という企業が多く、多くの金型メーカーが育成の必要性を感じている。
取り組みの内容として最も多かったのは「OJT」で、勉強会や外部教育機関と併用し、多能工化を図るという回答が多かった。また、OJTを専門に行う組織を設けている企業や、「プレス金型設計者育成塾」や「社内加工塾」など、学びの場を設けている企業も多い。
中には「各個人に技術志向なのか、管理者志向なのか考えてもらい、それぞれに合った教育を進めている」と、個々人の意思を尊重する回答もあった。そのほか「金属3D導入に向けて学習中」、「自動化設備の開発」など、新技術にいち早く対応する準備を行う企業も多数あった。
Q5 これからの匠のあり方
「データを道具のように扱える匠」、「テクノロジーの知識もあり、省人化を考えられる人」、「デジタルとアナログ技術を持ち合わせた人」など、新しい技術を使いこなせる人材を求める声が多い。
一方、「匠は技術力(個々の技術、加工精度、品質)から組織力(管理、運営、体制)の時代になっている」、「企業自体の匠への変化が必要だと思われる」など企業が「匠の技」を持つべきという意見も多かった。
※1月下旬から2月上旬までの間に日本全国の金型メーカー500社に Googleフォームでアンケートを行い53社から回答を得た。
金型新聞 2022年2月10日
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