金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

04

新聞購読のお申込み

電動系、車体系部品へ事業拡大【特集:自動車の電動化とダイカスト】

自動車の電動化が金型に及ぼす影響は大きい。エンジンなどの減少が懸念される一方、軽量化ニーズでアルミの採用が期待されるなどダイカスト金型は変化を迫られている。では電動化でダイカストはどう変わっていくのか。昨秋のダイカスト展での出展製品などから変化のトレンドを探るとともに、変革期に挑むダイカスター、ダイカスト金型メーカーを取材した。

ハイサイクル、大型化に対応

アーレスティ執行役員(アーレスティダイモールド浜松社長)浅井宏一(あさい・こういち)氏
1958年生まれ、山梨県出身。81年東北大学卒業。2015年アーレスティ入社。19年アーレスティメヒカーナ社長、21年執行役員、同年アーレスティダイモールド浜松社長に就任し、現在に至る。

電動化による影響は。

ハイブリッド車(HV)であれば、既存の自動車部品にモータやバッテリー、インバータなどの電動化部品が加わるため、部品点数は増える方向にあった。それが電動車(EV)になると、部品点数が極端に減る。すでに日本の自動車メーカーも新しいエンジンの開発はほぼストップしている状況で、出てくる仕事はEV関連部品が多い。

注力していることは。

電動車向け部品の受注。また、電動系部品と車体系部品への拡大だ。電動系部品はバッテリーケースやモータハウジングなどといった部品。電動化で必要となるアルミダイカスト製品の開拓を進めている。一方、車体系部品はこれまで板金加工で製造されていたショックタワーなどの構造部品。軽量化ニーズが高まる中、ダイカストへの置き換えを提案している。

既存部品との違いは。

電動系部品はハイサイクルが求められる。1つの部品が複数の車種で使用されるため、生産数が多くなり、いかにサイクルタイムを短くするかが課題となる。これまで1個当たり60秒程度だったのが、40秒切るほどまで短くすることが要求される。そうなると、金型には短時間で冷却するための機能や真空鋳造などより生産性の高い鋳造法への対応などが求められる。

車体系部品では。

大型化だ。例えばドアだと1・5m×1mほどの大きさで、鋳造機だとシリンダブロックなどを生産していた2500~3500tクラスが必要になる。ただ、金型は熱処理や冷却で少し課題はあるものの、もともと板金加工で製造していた部品なので、難度はそこまで高くなく、現状の技術で十分対応できる。

金型製造ではどんなことに取り組んでいるか。

直彫りと5軸加工を取り入れている。リードタイムの短縮が求められる中、いかに早く加工できるかが鍵となる。直彫りは以前から取り組んでいるが、L/Dの大きい加工など技術開発を進めている。また、5軸加工では立形と横形5軸マシニングセンタを保有し、効率化を進めている。

それほどリードタイムの短縮が求められるのか。

例えば、成長著しい中国のEVメーカーからは従来の半分以下の納期を要求される。いかに早く作るかが、競争力の源泉になると考えている。

今後の戦略は。

海外市場を開拓したい。特に中国や欧米は今後、EV市場の中心になる。浜松工場と同程度の製造能力を持つ中国工場を中心に、市場の需要を上手く取り込むための取り組みを進めていく。

金型新聞 2023年3月10日

関連記事

金型磨きロボット開発<br>近畿大学・理工学部 原田 孝教授

金型磨きロボット開発
近畿大学・理工学部 原田 孝教授

パラレルで力制御、高速・高精度  金型を自動で磨くロボットはかねてから望まれ、機械メーカーや研究機関が開発に挑んできた。近畿大学理工学部の原田孝教授もそのひとり。昨年、パラレルリンクやDDモータにより微妙な力加減を緻密に…

【特集】感動ワーク

魅了するワークの加工プロセスをひもとく 品質の優れたワークはそれを加工した機械や工具などの性能や、技術者の技能の高さを物語る。人を魅了する「感動ワーク」はどのような機械や工具、ソフトを使い完成したのか。多彩な感動ワークと…

【ひと】ケーワールドism社長・澤井健司さん(55) 金型技術生かし自社商品をヒットさせた

金型技術活かし自社商品をヒットさせた  『日本一の金型職人になりたい』と、金型製作に没頭した若き日の澤井健司社長。町工場が集積する大阪・八尾で金型作りに励む日々だったが、ひょんなことから独立し、ケーワールドismを設立。…

情報収集や課題解決の場に 砥粒加工学会 会長インタビュー

今年3月、研削や研磨など砥粒加工技術の振興、発展を目的とした活動を行う砥粒加工学会の会長に就任した清水大介氏(牧野フライス精機社長)。金型メーカーに対して、「生産現場に直結した技術の発信を行う砥粒加工学会を情報収集や、加…

金型メーカー座談会<どうなる2014年 どうする今後の展開>

金型メーカー座談会<どうなる2014年 どうする今後の展開>

経営者が語る 視野広げ新規開拓 1月10日号のつづき 樫山 どんな方法で新規開拓しているんですか? 鈴木 インターネットで調べたり、展示会等に行き情報を集めたりします。ただ、プレス金型の納入先ですと顧客の幅が狭くなるので…

トピックス

関連サイト