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金型業界の経営トップアンケート 事業戦略に関する調査

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」へと移行し、社会・経済活動が活発化しつつある中、資源高、電気料金の値上げなどによって、製造業は依然として厳しい状況下にある。中でも金型業界は、取引条件の課題や価格競争など独特な課題を多く抱えている。このような時代において、金型メーカーの経営者は経営課題をどう捉え、どんな施策を考えているのか。アンケート調査を実施した。

最も懸念する環境変化は、「電力料金の値上げ」

自社の経営資源の強みは、「優良な顧客・取引基盤」

最大の経営課題は、現在も将来も「人材強化」

調査のポイント

  • 金型関連企業の経営状態は厳しい(「かなり悪い」6.3%、「悪い」35.9%(合計42.2%))状況にある。その要因として「原材料、物価高騰」(76.7%)を挙げる企業が圧倒的に多いが、プレス型や鋳造型では「金型需要の減少」を指摘する声も根強い。
  • これから懸念すべき環境変化としては、「電力料金の値上げ」(81.7%)と「原材料費高騰」(80.3%)が突出して多かった。次いで「働き方改革対応」(36.6%)、「少子高齢化」(29.6%)となっており、人材面での課題が目立った。
  • 一方で、比較的良好もしくは安定した経営状況にある企業は、地域別では「関東」「近畿」で多く、型種別では「プレス型」「プラスチック型」で多かった。また、自社の経営資源の強みとして、多くの回答企業が「優良な顧客・取引基盤」(71.1%)を挙げた。
  • 経営課題としては、現在および将来ともに「人材の強化」が最大の経営課題となっているが、将来については「顧客満足度の向上」、「財務体質・資本の強化」、「脱炭素化への対応」への懸念も増加している。特に「後継者育成・事業承継」が50歳代(39.3%)、「事業再編」が30歳代(25.0%)で際立って多い。
  • 将来に向けて注力している取り組みでは、「高難度の金型への挑戦」(37.3%)、「金型生産力の向上」(33.8%)と、金型事業をさらに伸ばそうとする回答が多かった。一方で、企業規模が小さくなるほど、「量産事業への展開」や「企業間連携」という回答が目立った。

調査概要

調査時期:2023年2月~3月

調査方法:全国の金型関連企業に郵送

調査対象企業:全国の金型関連企業から1,851社を抽出

有効回答企業数:142社(回答率7.6%)

回答状況:下記の通り

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1.現在の経営状況

  • 現在の経営状況について、「普通」と回答した企業が38.0%となり、4割近くが安定した経営状況にあるものの、「大変良い」が2.1%、「良い」が17.6%(合計19.7%)と良好な経営状況にあるのは、全体の2割弱にとどまった。一方、「かなり悪い」が6.3%、「悪い」が35.9%(合計42.2%)となり、4割強の企業は厳しい経営状況となっている。
  • 地域別では、「関東」「近畿」が比較的良好もしくは安定した経営状況にある企業が多く、その他の地域では厳しい経営状況にある企業が多かった。
  • 型種別では、「プレス型」「プラスチック型」は良好もしくは安定した経営状況にある企業が比較的多かった一方で、「ダイカスト型」「鋳造型」「鍛造型」は厳しい経営状況にある企業が目立った。
  • 企業規模では、11~100人規模の企業が比較的好調だった。創業年数では、創業年数が若いほど良好もしくは安定した経営状況の企業が多かったが、「大変良い」「良い」と回答した企業は「40~50年未満」が28.6%、「50年以上」が23.6%を占めた。
  • 経営者年代では、良好もしくは安定した経営状況の企業が40歳代で6割強、60歳代で7割強となった。
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2.経営状況が「大変良い」「良い」理由

  • 前問の経営状況が「大変良い」「良い」理由を聞くと、全体では「新規顧客の拡大」(35.7%)が多く、次いで「金型以外の事業の需要増加」(28.6%)、「改善、設備投資による利益率向上」(28.6%)、「競合企業の減少」(21.4%)となっている。
  • 金型、量産、部品加工など手掛ける事業の需要が増加したこと、設備投資や改善、新規顧客の拡大など積極的な取り組みが奏功していることが好調な経営状況の背景にある。
  • 型種別では、プレス型で「新規顧客の拡大」(54.5%)が多く、プラスチック型では「新規顧客の拡大」(33.3%)、「改善、設備投資による利益率の向上」(33.3%)が多かった。
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3.経営状況が「悪い」「かなり悪い」理由

  • 前問の経営状況が「悪い」「かなり悪い」理由を聞くと、全体では「原材料、物価高騰」(76.7%)が圧倒的に多く、次いで「金型の需要減」(43.3%)、「経済低迷」(33.3%)、「量産事業の需要減」(28.3%)、「人手不足」(28.3%)となっている。
  • 「コロナ融資返済」(6.7%)、「自社製品の需要減」(8.3%)は1割を下回った。
  • 型種別では、プレス型の半分以上が「金型の需要減」と回答した一方、プラスチック型は3割弱にとどまった。
  • 鋳造型では、「顧客の海外進出・国内縮小」と「値下げによる利益率低下」を6割以上が指摘している。ダイカスト型では、「原材料、物価高騰」、鍛造型では「金型の需要減」が多くを占めた。
  • 企業規模では、10人以下と51~100人以下の企業で「人手不足」「金型の需要減」の回答が目立った。101~300人以下の企業では、「競争激化」「設備投資による原価率上昇」という回答が多かった。
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4.今後、企業経営に影響をもたらす問題

  • 今後、企業経営に大きな影響をもたらす問題としては、「電力料金の値上げ」(81.7%)と「原材料費高騰」(80.3%)が突出していた。次いで、「働き方改革対応」(36.6%)、「少子高齢化」(29.6%)、「法人税の引き上げ」(26.8%)と、人材面での課題が目立った。
  • 型種別では、プレス型で「脱炭素化・環境対応」(24.2%)を指摘する声も2割強を占めた。
  • プラスチック型は、「グローバル化の進展」(15.9%)、「価格競争の激化」(34.1%)、「値下げ要請」(27.3%)が、プレス型に比べて多かった。
  • 地域別では、主要3地域(関東、東海、近畿)のうち、東海地域は「協力先倒産・廃業」(7.5%)が少なかった。一方、近畿地域は「原材料費の高騰」(69.0%)、「電力料金値上げ」(65.5%)が少なかった。
  • 「コロナ融資返済」は30人以下の企業が選択する割合が高かった。また、経営者年代が上がるほど、選択する割合が高くなっている。
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5.経営資源の「強み」と「不足」しているもの

〈強み〉

  • 経営資源の「強み」は、「優良な顧客・取引基盤」(71.1%)と最も多く、次いで「技術・開発力」(57.7%)、「設備力」(28.2%)、「幅広い事業領域」(26.8%)、「サービス力」(23.9%)となっている。
  • ダイカスト型、鋳造型では、「優良な顧客・取引基盤」が他の型種に比べて少なかった。一方で、「技術・開発力」は多かった。
  • 従業員数が10人以下の企業は、「優良な顧客・取引基盤」(50.0%)の割合が低くなっているが、「サービス力」(50.0%)、「資金力」(28.6%)は高くなっている。創業年数が50年以上、従業員数が多い企業ほど「優良な顧客・取引基盤」が「強み」になっている。
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〈不足〉

  • 一方、「不足」している経営資源は、「営業力」(45.1%)が最も多く、次いで「資金力」(26.8%)となり、「幅広い事業領域」「設備力」「技術・開発力」(21.8%)と続いた。
  • 「営業力」の不足は、企業規模が小さい企業ほど強く感じている。また、「資金力」の不足は、経営者年代が低く、企業規模が小さいほど回答が多くなっているほか、創業年数が10~20年未満の企業でも突出している。
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6.現在と将来(5年後)の経営課題

〈現在の経営課題〉

  • 現在直面している経営課題としては、「人材の強化」(78.2%)が圧倒的に多い。次いで、「利益率の改善」(49.3%)、「従業員満足度の向上」(38.7%)が多かった。
  • 型種別では、プレス型で「新技術への対応」「自社商品の開発」「脱炭素化への対応」、プラスチック型で「価格交渉力の強化」「研究・開発の強化」「財務体質・資本の強化」が目立つ。
  • 企業規模が大きいほど、「人材の強化」「特定取引先への傾倒」「設備投資」が多く、企業規模が小さいほど、「事業再編」「自社製品の開発」が多かった。
  • 経営者年代では、若いほど「協力企業の廃業・倒産」「特定取引先への傾倒」が多かった。
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〈将来(5年後)の経営課題〉

  • 将来(5年後)の経営課題でも、「人材の強化」(76.8%)が圧倒的に多く、「利益率の改善」(43.7%)、「従業員満足度の向上」(38.0%)が続いた。
  • 「人材の強化」「利益率の改善」「従業員満足度の向上」は、「現在」「将来」ともに共通の経営課題となっている。「顧客満足度の向上」、「財務体質・資本の強化」、「脱炭素化への対応」は、将来の経営課題として増えている。
  • 経営者年代では、「後継者育成・事業承継」が50歳代(39.3%)、「事業再編」が30歳代(25.0%)で際立っている。
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7.将来に向けて注力している取り組み

  • 将来に向けて注力している取り組みでは、「高難度の金型への挑戦」(37.3%)が最も多く、次いで「金型生産力の向上」(33.8%)、「金型以外の事業への展開」(28.9%)、「自社製品の開発」(17.6%)となっている。
  • 型種別では、プレス型で「金型生産力の向上」(40.3%)、「高難度の金型への挑戦」(46.8%)、プラスチック型で「自社製品の開発」(18.2%)が目立った。
  • 創業年数が短い企業で「高難度の金型への挑戦」が目立った。
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