豊実精工が開発した完全クロムフリーの「ERIN被膜」が注目を集めている。防錆・耐摩耗セラミックコーティングで、空隙のない緻密な薄膜(2μm±1μm)だ。 被膜硬度はHv1000~1200で、耐摩耗性はDLCの2倍、硬質ク…
山岡製作所 精密プレス加工を柱に、ミクロンレベルの要求に対応
プレス・プラスチック用金型、量産、生産設備などを手掛ける山岡製作所。1938年に創業して以来、精密プレス加工を柱にさまざまな技術を培い、競争力を高めてきた。自動車や半導体・電子部品、医療関連などミクロンレベルの加工要求に応えるために、最先端設備の導入や、人材の育成などに注力する。金型を製造する本社工場を訪問した。
EV関連部品の受注が増加
同社はプレス加工メーカーとして創業後、54年に法人化。金型やプレス機なども手掛けるようになり、現在は金型、量産、生産設備の3本柱で事業を展開する。20年ほど前からはプラスチック用金型も手掛け始め、インサート成形なども社内で一貫生産できる体制を構築した。「プレス製品の生産においてオールインワンでの提案が可能だ」(山岡靖尚社長)。
もともと電子部品向けが多く、ピーク時は売上の8割を超えていた。しかし、ITバブルの崩壊を経て、近年は自動車向けが増加。10年前と比較すると、自動車向けの売上が3倍ほどに増えているという。「特に電池やモータなど電気自動車(EV)に関する部品が多い」(山岡社長)。
人材育成強化、多能工化を推進
同社の金型は加工要求が非常に高く、「±2μmレベルが全体の3分の2ほど。中には±1μmのものもある」(金型製造課の藤田洋祐統括課長)。こうした精密な金型づくりを実現するために注力するのが、人材育成と設備投資だ。「設備の性能を引き出すのは人の感性。設備投資と人材育成は両輪だ」(山岡社長)。
人材育成は2000年頃から取り組みを強化。「山岡技能経営」という独自の取り組みを通じ、高度な技能を有する技術者の育成に注力する。多くの従業員が技能検定を取得し、金型部門では現在、特級技能士が8人、1級技能士が16人在籍する。14年には超精密金型の組立技能を有する従業員が「現代の名工」に選出された。
また、ここ数年は多能工化を推進する。「限られた人員の中で生産効率を最大化するには、複数工程をこなせる人材が必要になる。今後さらに増やしていく」(藤田統括課長)。採用も継続的に行い、毎年8~10人程度は採用しているという。
機械を越えた加工精度に挑む
「設備投資は年によるが、積極的に設備を購入し続けている」(山岡社長)。こうした継続的な投資によって、同社の金型工場には放電加工機やマシニングセンタなどを始め、さまざまな最新鋭機が並ぶ。特に近年は測定にも注力する。
測定室には三次元測定機や画像測定機などさまざまな測定設備が置かれている。中にはE0, MPE=0・5+L/500μmという高い測定精度を実現する三次元測定機を設備し、社内原器として活用する。「全ての加工がこの機械で測定した数値を基準にしている。当社が出す数値は絶対という自信を持って出荷している」(金型製造課の井上秀夫主幹)。
また、3~4年ほど前から「機械を超えた精度を出す」という取り組みを始め、現場専用の三次元測定機を導入。現場の作業者がその場で加工物を測定し、精度、品質の向上につなげている。
三菱電機の放電加工機を導入
同社では近年、EV関連部品など自動車向けの受注を増やす中、従来よりも金型が大型化し、既存設備での対応が難しくなっていた。そこで17年に導入したのが、三菱電機のワイヤ放電加工機「MP2400」。既設機の加工高さは100㎜程度だったが、同機は高精度仕様で最大210㎜まで加工可能となり、より大きな金型加工にも対応できるようになった。また、水仕様のため、加工速度も1・5倍ほど向上したという。
同機の良さについて、金型製造課製作課の柿元修一課長は「シンプルな操作で簡単に加工プログラムを作成できる。また、AIによる加工条件の最適化も図れ、経験の浅い作業者でも高精度な加工ができる」と評価する。「大型化対応に加え、多能工化を進める中で導入しやすいというのも購入の決め手になった」(井上主幹)。21年には小型モデルの「MP1200」も導入した。
さらなる自動化に取り組む
さらに今年2月には形彫放電加工機「SV12P」も導入。まだ導入後間もないが、「ピンホール(クレータ)が少なく、面質が均一。大面積の加工で効果を発揮すると考えている」(柿元課長)。今後さらに加工テストを行いながら、用途を見極めていく考え。
また、放電加工ではさらなる自動化に挑む。すでにワイヤ放電加工機ではワークチェンジャーを導入し、夜間休日稼働を実現している。今後は電極加工の高精度化、自動化などにも取り組む考え。「三菱電機の機械は自動結線が正確で、芯出し精度も高く、自動化に適している」(柿元課長)。
こうした自動化や最新鋭機の導入などの将来に向けた取り組みは今後も継続する。「当社の強みは金型、装置、量産の3本柱がそれぞれでレベルアップし、高度な次元で交わっているところだと思う。今後はもっと付加価値を高め、企業競争力と従業員の幸福度を向上させていきたい」(山岡社長)。
会社概要
- 住所:京都府城陽市平川横道93
- 電話:0774・55・8500
- 代表者:山岡靖尚社長
- 創業:1954年
- 従業員:220人
- 事業内容:精密プレス・射出成形金型設計・製作、設備設計・製作、プレス品・射出成形品量産など
関連記事
成形の一貫生産で活路新工場で車部品やマグネット製品 三嶋彫刻は今から55年前、金型刻印のメーカーとして創業した。彫刻の精密加工技術を生かし、金型部品や金型、成形も手掛け、事業を伸ばした。しかし近年、日本の金型には強い向…
金型部品の生産強化 ナカヤマ精密(大阪市淀川区、06-4807-1500)は、熊本県菊陽町のテクニカルセンターに工場を増設する。精密金型部品や半導体製造装置部品の生産力を強化し、拡大する市場のニーズに応える。 新工場は敷…
自動車部品などのプレス金型を手掛けるササヤマ(鳥取県鳥取市、0858・85・3380)は、本社工場に増築した機械加工棟を稼働した。3次元レーザー加工機など新たに設備を導入したほか古海工場を集約。生産体制を改善し、金型の製…
自動車の電動化によって、手掛ける金型が変化している金型メーカーは少なくない。ダイカスト金型メーカーの小出製作所(静岡県磐田市、0538・37・1147)もその1社。これまで主力だったエンジン関連の需要が減り、モータやバッ…