2021年3月5日(金)

―成形をゆく―
三扇化学(愛知県小牧市)

ユーザーと金型メーカーの間に立つ指揮者

この会社がないと困る

 プラスチックやプレス成形加工メーカーにとって金型メーカーは、どんな存在なのか。今更ながら素朴な疑問に突き当たり、この4月号からプラスチック、プレス、ダイカスト、ゴム、ガラス、粉末冶金など成形加工メーカーの生産現場を訪ねることにした。成形品を元に、その開発・加工方法、金型メーカーへの要望をお聞きし、金型メーカーの存在を浮き彫りできたら相互の交流が出来るのではないか。第1回「成形をゆく」は、プラスチック成形加工と組立を事業の柱にする愛知県小牧市の三扇化学(児玉康彦社長)。「この会社がいないと困る」と、世界のトップ企業が声を揃えて折り紙をつける技術に迫った。

写真1.射出成形機は32台。_R 写真3.BZEX。_R
▲左:①射出成形機 右:②EBZEX

写真2.三次元測定機。_R 写真4.釣り針型ゲート口。_R 児玉康彦社長。_R
▲左:③三次元測定機 真ん中:④釣り針型ゲートロ 右:児玉社長

不良率0.1PPM

 射出成形機を40tから220tまで32台(写真①)を有する。油圧、電動、ハイブリッドの全てを取り揃え、全ての機種に熱風乾燥機・横走行式自動取出ロボットとコンベア・粒断機・金型温度調節器を装備し、省力化を徹底させている。
 また、水を一切使わない成形機冷却システム(ウォーターレスクーラー)を採用し、成形機とTOPPS配管システムでつなぎ、金型、成形機の水管の錆、スケール、藻の発生を排除している。理由は、二百万ショットを保証する金型と成形機を常に安定させるためである。他にスクリーン印刷機・パッド印刷機を要した印刷部門があり、超音波溶着機を1台、熱溶着機を5台有した各種の組立て部署、三次元測定機(写真②)も1台設備し、お客様の信頼を高めている。
 現在、成形する数量は、1500アイテム、金型は工場内の金型ラックに1000組置いている。
 
神業の領域
 ユーザーに「無いと困る」と、言わしめるのは、2色成形品、白物の鏡面外観品・多色、多材質、三次元形状などの高寸法精度成形品を納期内に届けることだけだと思ったら、それだけでなかった。同社は、お客様にデザインを提案し、金型メーカーに成形品を無理なく取り出せる金型製作を発注するなど、ユーザーと金型メーカーの真ん中に立って、最高の成形品を収める、あたかもオーケストラの指揮者のように観客をも魅了するところに立っている。
 「新しい成形品の生産も順調に伸び、16年4月期売上高は11億円」の見通し。取引先には、自動車、事務機、電気機器、家電製品、OA機器など世界のトップ企業が名を連ねる。
 月産個数は、「半端じゃない」。2色成形・精密成形による複写機のカートリッジ成形品の場合は、1品目月産100万個を超す。しかも「200万ショットの金型保証が求められている」。ランナーレス金型成形も多く採用してコスト削減を行い、競争力を提言する。
 カラー複合機の成形品の精度は、部品が100分の数㎜ずれたら嵌らない。2つの穴のセンター間のピッチ誤差は公差で100分の3㎜。そこにボスが5、6本立ち、ギヤーが嵌る組合せ部品。それを4個取り、6個取りする。しかも、全部同じ寸法で成形し、不良率は0.1ppmという。1000万個成形し、その中の1個が不良品という神業の領域。検査工程を持つが「全数検査はせず、全て現場で成形品の質を押さえ、不良品を出さない条件に成形機を設定している」。

金型は一発勝負
 クルマの内装品の一つ、ハンドルに付くベゼル(EBZEX)(写真③)は、エンドユーザに月産10万個を納入する。1社のベゼルは、皮シボが入った3次元形状の2色成形品で、金型のメンテナンスは、同社の方法により最良に保つ事ができる。「やりがいのある成形です。反りがでる、変形する。ハンドルに±0.1㎜以内にピタッと嵌らなければならない。少しでも突起物があるとダメになる、触感に敏感な成形品。子供や女性の手にも優しく、滑らかに金型をつくり上げる」のがコツとか。
 金型は全て外注。現在、5社のメーカーと取引している。何れも、児玉社長と長男の児玉真弥取締役統括部長の眼鏡に叶ったところばかり。試作金型は作らない。一発勝負する。「費用も掛かるし時間もない」が理由とか。
 「デザインは、最終ユーザーが描き、1次メーカーが設計図面を作成する。その後、ユーザー、発注メーカーとわが社の3社で打ち合わせする。金型構造・成形方法はその時に提案をする」。ダメ出し、デザインの変更、変更のできない場合は、金型を変えるなど、常に最高の成形品を作るための丁々発止の情報交換を行う。「即決」を大前提にしている。
 最終図面(生産図面)が出ると同時に金型メーカーと細部の打ち合わせに入り、金型ができると同時に成形加工に入る。「今では多彩なノウハウを備えているため心強い。納期内に必ず立ち上げをするのが当たり前。これができなければ仕事はもらえない」。

新しいゲート
 「釣り針方式」(写真④、釣り針型のゲート口)と、言うゲートを見せてもらった。児玉取締役統括部長が改良をした、ゲートが極端に細いのが特長。
 「こんな形のゲートは現在のところない。上手く樹脂が入り、尚且つゲートの切れが良い。同じ釣り針型でもいろんな角度、Rの大きさを製品の大きさによって変えることもできる。2次加工が不要なところが現場で気に入られている」と、児玉社長。

IT管理
 手作業ではできない生産量になりIT管理をしている。「これだけアイテムがあると、金型は、段取り表を作り、何処の部署からも見えるようにしてある。明日、明後日どういう段取りにするのか、判るようにしてあり、現場はその指示に従って成形機の段取り替えをする。また、材料の発注・入出庫もITで管理している。全社内の端末機を含み生産・在庫のIT管理をしてコストまで全員に見える化をしている」。児玉社長の指揮棒が今日も最高のハーモニーを産み出している。


住 所:愛知県小牧市西之島字北屋敷901-1
創 業:1952年
設 立:1972年5月1日
資本金:2,100万円
従業員:95人
代表者:児玉康彦氏
事業内容;プラスチック製品の成形加工、組立販売、企画設計
主要製品:自動車、輸送機械、電気・電子・通信機器、家電製品・部品、文具・OA機器、遊技機・おもちゃ・楽器、スポーツ・レジャー用品、住宅設備・建築資材、医療・福祉、各種機械部品、工具、家具など。


金型新聞 平成27年(2015年)4月14日号

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