IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの新技術が製造業に大きな変化をもたらそうとしている。工作機械や工具などの生産財も、これまでは難しかった精度や加工が実現できるようになるなど、金型づくりも大きく変わり始め…
がんばれ!日本の金型産業特集
チバダイス 千葉 英樹 社長
プラスチック歯車の金型製作、試作、成形や金属歯車加工を手掛けるチバダイスは今年4月、マシニングセンタや放電加工機など合計8台もの大規模な設備投資に踏み切った。もともと小型を得意とする同社だが、千葉英樹社長は「もっと精度の高い仕事をするために、1㍈の精度で加工できる機械が必要だった」と他では真似できない超精密な金型づくりに取り組む考えだ。
高精度な機械が必要だったのは、研究開発分野の需要が増えてきたことが最大の要因。歯車は自動車やあらゆる装置の性能を左右する重要な部品なため、高い燃費や安全性、軽量化の実現には、高精度な歯車が不可欠になる。
同社では、2004年に世界でも数カ所しか存在しないプラスチック歯車の性能を研究・試験するPGS(プラスチック・ギヤ・システム)研究所を設立。ここ最近、世界の素材や自動車メーカーから新素材や新構造の歯車の開発や試験の依頼が急増した。とくに欧米では、設備で技術力を量る傾向が強く、「良い機械を入れてないと、信頼してもらえない」と千葉社長は話す。
保証の側面だけでなく、技術的にも新しい加工法に取り組む。従来からの放電加工に加えて、超高精度なマシニングセンタで直彫りすることで、加工時間の短縮やより細かな形状を再現できる。「あとほんの数㍈を追い込んだり、補正するなど今まで難しかったことができる」と今までにない付加価値の高い金型づくりを目指す。
「汎用機を知らないと技術の発展性がない」と最新の機械を設備し、最先端技術に挑戦する一方で、汎用機を使った人材教育に力を入れ、確固たる技術力の基盤を作る。旋盤、研削盤、フライス盤など様々な汎用機を約45台も設備し、新入社員には入社後1年間で、すべての機械の使い方を覚えさせている。
どういう手順で加工するのが最も効率が良いか、どういう条件で加工すると工具が破損するのかなど、「自分の手を動かして、体感しないと気づかないことがたくさんある」と重要性を話す。こうして得た経験が、加工ノウハウとして個人に蓄積し、加工パスの走らせ方や加工条件の選定などNCプログラムを組む時にも活かすことができる。
もとは歯車加工屋から創業した同社は、金型に限らず、歯車加工のあらゆる生産技術を持つ。何百とある加工技術は、どの機械でどの加工ができるのかをすべてリスト化し、その工程ごと各従業員に細かく分担している。それぞれの工程で、ベテランと若手を配置し、技能を伝承しやすい環境を整え、多能工化を図っている。
千葉社長は人を育てる上で、「あいさつ」を大切にする。「社内でも社外でも、人と人の繋がりが重要」と話す。同社の企業理念のなかには、先代から受け継がれた「歯車を育む、人を育む」という言葉がある。高い技術力で最先端に挑戦するプロフェッショナル集団を目指しつつ、それにふさわしい人間性をも身に付けて成長していく。
代表者=代表取締役社長 千葉 英樹氏
設立=1966年9月
所在地=営業技術センター・八潮工場:〒340-0834埼玉県八潮市大曽根414
資本金=4,800万円
TEL=048・997・6621
FAX=048・997・6625
URL=http://www.chibadies.co.jp
従業員数=30人
事業内容=プラスチック・金属歯車や特殊歯車の金型・試作・量産・試験・開発などを手掛ける。
主な設備=高精度微細加工機「YMC430」(安田工業)1台、立形マシニングセンタ「V33i」(牧野フライス製作所)など7台、横型マシニングセンタ「NH4000DCG」(DMG森精機)1台、ワイヤーカット放電加工機「SL400P」(ソディック)など4台、形彫り放電加工機「AG40L」(ソディック)など7台、各種汎用機約45台、画像測定機「IM‐6225」(キーエンス)など2台ほか多数。
企業理念=①パイオニア精神②歯車を育む、人を育む③顧客価値の共創④社会的責任の遂行
金型新聞 平成27年(2015年)7月2日号
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