昨今、顧客の課題解決につながるソリューションやサービスなどを提供する金型メーカーが増えている。なぜ、従来の金型づくりだけでなく、自社が保有する技術を生かしたソリューションや、AI・IoTを活用したサービスなどを提供するの…
がんばれ!日本の金型産業特集
ドリームメイキングカンパニー 平子 頼道 社長

部品点数や工程数の多さを考えると、金型は擦りあわせ作業の極みだ。徹底したPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルで、この擦りあわせを円滑に行い、最高の型づくりに挑戦しているのが、ドリームメイキングカンパニーだ。ダイセットで300㎜角の精密プラスチック金型を得意とし、車載部品や電子部品などが主力。「寸法精度は5μm以下」(平子社長)と精度に強みを持つ。
そんな同社の型づくりの根幹にあるのが、徹底したマネジメントから生み出される「プロセスシート」だ。そこには様々な情報が記されており、誰が何をいつすべきかが一目瞭然になっている。その情報量は「現場では図面を出す必要がない」ほど。また特長的なのが、加工ノウハウを分析し、かなり精度の高い加工推定時間が記されていること。しかも推論で終わらせず、加工後は実績値も記入する。その差が大きければ、徹底して理由を追究し、その改善が次回の加工に活かされる。そしてこのシートはノウハウとして蓄積されていく。
PDCAを重視する理由の一つは「スピードが不可欠」だからだ。平子社長は「高品質は当然。差別化要素はスピードしかない」という。そうした思想はあらゆる部分にも表れている。例えば治工具。ATC24本付いているマシニングセンタでも、24本丸々必要な加工などそうはない。このため、効率的な治具の外段取り化で、テーブルに複数の異なるワークを乗せて、24本をフル回転させている。プロセスシートを基に、こうした徹底した効率化を進めている。

平子社長は「最高の機械と工具があれば大半の加工ができる」と話す。一方で、それを実現させるために人が不可欠とも。「機械を使いこなし、最高の加工やパフォーマンスを引き出すには人の判断が必要だから」だ。このため、人材の育成には、人一倍力を注いでいる。
その一つが「考え方の共有」だ。「やり方だけをいくら教えても根が間違っていれば同じ間違いや失敗をおこす」。同社の場合、根底にあるのはお客様の満足度を上げること。全ての行動や方法はそこに行き着くように指導している。
そうしたベクトル合わせや信頼関係があって、教育の仕組みも活きる。その一つが毎月ある課題だ。例えば、設計グループの9月の課題は「ワイヤCAMのマニュアル作成」。いつまでに誰が何を行うかが明確になっており、ここでもPDCAサイクルを回し、技術レベルの引き上げを図っている。
また前述のプロセスシートは人材育成にも活用されている。推定加工時間の裏付けとなるデータなど加工ノウハウが詰まっており、誰でもそれを使い、学ぶことができる。だから「短時間で熟練工のレベルに引き上げることができる」という。
24年前、平子社長は「自分なりのものづくりを求めたい」という夢があって会社を興した。その際に「誰にでも夢がある。みんなの夢を実現できる会社にしたかった」との願いを込めて、社名をドリームメイキングカンパニーとした。今後もその想いは不変で、徹底したPDCAサイクルを武器に、夢のあるものづくりを続けていく。

代表者=平子頼道社長
資本金=3800万円
売上高=約1億5,000万円
創業=1992 年
従業員数=20人
本社=福島県いわき市常磐西郷町銭田109-8
電話0246・38・7671
Fax 0246・38・7672
E-mail dmc@bz03.plala.or.jp
主な業務内容=精密プラスチック金型設計製作、各種治具製作など。
設備機械=マシニングセンタ「HS430L」(ソディック)など2台。型彫放電加工機「AP3L」(ソディック)など4台。ワイヤ放電加工機「AG400L」など3台。研削盤「TECHSTAR」(アマダマシンツール)、「PSG-63DX」(岡本工作機械製作所)など6台、CAD/CAM「SolidWorks」(ソリッドワークス社)、「DiproSOLID-Wire」(ソディック)など10台。
経営方針「成長の差は内部固め、企業の差は経営者格差、人物の差は苦労の差、実績の差は責任感、実力の差は努力」
金型新聞 平成27年(2015年)10月20日号
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